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134話◆わたしだって、ヒールナー伯爵家の一員よ!
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おめでた。
めでたい事を指す単語であり、主に結婚、妊娠、出産に対して言われる。
結婚…もう既にしてるんだし…となると、妊娠と出産!?
わたしが妊娠?サイモンの子を妊娠……
「うっ……うわぁあ!!やったぁ!うっ、嬉しい!
サイモンとわたしの赤ちゃん嬉しい!
嬉しいけど怖い!産むのが怖ぁぁい!!」
嬉しいやら出産が怖いやらでパニクったわたしが半笑いでプルプル震えるのを見たグレイスお義母様が、テーブルを叩きながらお腹を押さえて笑い出した。
「あっはっはっは!!
メグミンの顔が面白いわぁ!!」
怯える嫁の顔が面白いって、鬼姑みたいな事言わないで下さいよ。
いや、お義母様がわたしを可愛がってくれてるのは良く良く知ってるんだけど!
「サイモンのお嫁さんのメグミンが、僕たちの初孫を身ごもってくれたのならば嬉しいけどね。
…でも早計かも知れないし。」
ゔぁあぁ!お義父様までわたしをメグミン呼びするぅ!
何でわたし、異世界に嫁入りして義両親に地球にいた頃のペンネームで呼ばれてんの!
「そうね、ちゃんと正確な診断を受けてからでないと。
……何にせよ、メグミンはうちの大事な宝よ。
もし本当におめでたなら、ご実家に身を寄せて貰った方が…」
お義母様の表情が一瞬だけ曇ったのを、わたしは偶然見てしまった。
もう里帰り出産の話をするの?早すぎない?って言うか…
もしかして、わたしのおめでたは歓迎されてない?
いや、喜ばれてないと言うより……
何だか、時期がなぁ的な雰囲気なんですけど??
「めぐみ、温室とは言え此処は冷える。
寝室に戻ろうか。」
「え?まだ来たばかりなのに…。」
サイモンがわたしを掬い上げる様に横抱きし、温室の出口に向かって歩き出した。
サイモンに抱き上げられたまま首を伸ばしてお義母様の方を見ると、優しい笑顔で手を振ってくれていた。
何だろう、このアウェイ感。
凄く大事にされているのは分かっている。
でもなぜか、わたしだけ蚊帳の外で何か重要な事を隠されている。
それは…心配を掛けたくないからって分かってるから、大切にされてるんだって嬉しいけど…。
この邸の一員から外されているような気がして何だか寂しい。
わたしはグレイスお義母様みたいに、邸の女主人でありながら剣士としても戦えるなんて出来ないし、有事の際に何の役にも立てないかも知れないけれど…。
「ねえサイモン、何があったの?何を隠してるの?
隠さないで教えて。仲間はずれにしないで。
わたしもヒールナー伯爵邸の1人として、何か起こったのであれば皆と一緒に立ち向かいたいの。」
寝室のベッドの上にフワリと寝かす様に乗せられたわたしは、すぐにムクリと起き上がって身を屈めているサイモンの両頬を両手で挟むように持ち、正面から間近にサイモンの顔をジイイっと見た。
「めぐみが心配するほどの事では無いよ。」
「ほら隠すのが下手!何もないワケじゃないのね!
サイモンたら、わたしに嘘がつけないんだから。
邸のみんなが教えてくれないなら、別邸のスチュワートさんの所に押しかけて聞いて来るんだから!」
わたしの口からスチュワートさんの名前を聞いたサイモンが、ピクッと眉を寄せて怒った様な険しい顔をした。
わたしがワガママを言ったから不快感をあらわにしたのかと思ったけれど、それは違った様で。
サイモンは自分の頬に当てられた、わたしの両手に自分の手を重ねて下に下ろし、自分もベッドの上に腰を下ろした。
「スチュワートに今、君を会わせる事は出来ない。
……そうだな、めぐみももうヒールナー伯爵家の女主人だ。
邸に起こった事は知っておくべきだろう。
だが、もし君が身ごもっているのなら……
そんな大事なめぐみの心身に負担を掛けたくないんだ。」
「大丈夫よ、サイモン。
わたし、神聖国までの旅でかなり根性を鍛えられたと思うの!
ちょっとやそっとじゃ、肉体的にも精神的にも押し潰されたりしないから。」
そうよ、ハブられてる方が精神的に良くない。
わたしが妊娠してるにしても、心を穏やかに保つには何も知らない不安の方が絶対に良くない。
「だって何があっても、サイモンがわたしを守ってくれるんでしょ?」
「当然だ…俺の大事なめぐみが傷付く様な事は、俺が許さない。
必ず守るとも。」
わたしの手をキュッと握り締め、サイモンが優しく微笑み掛けてくれる。
ゲームでは氷の貴公子だとか言われていたサイモンの、ゲーム画面では無くリアルなこの微笑みは、わたしだけに向けられるもの。
「わたしが休んでる間に何があったか、話して。」
サイモンに、メイとスファイが行方不明になってからの事を聞いた。
二人を誘拐したのが今やこの世に存在していた痕跡すら無い、エリーゼ嬢が関わっていた者達で、掻い摘んで話せば……
わたしがメイとスファイに邸から連れ出されて、見知らぬ男達に襲われ掛けた事件の報酬だとか取り分だとかで揉めたらしいとの事。
わたしにとっては辛い事故であり、思い出したくはないだろうと、その辺に付いてもヒールナー家の皆はわたしに話したくはなかったらしい。
ありがたいくらいの優しい気遣いだわ。
確かに怖かったけど未遂だし、あの男達はカチュアが首をチョンしたと聞いて、そちらのインパクトのが強い。
思い出すのもツラいって程の過去ではない。
「で、アセレーナさんが暴れてメイを救い……悪の組織はほぼ壊滅。
そこで、さらなる悪の組織が出て来たワケですね。
………スチュワートさんに深手を負わせる程の剣士が居る。
スファイが拐われ、重要参考人としてマンバドナという人の名前が挙がっていると。」
コレは…わたしのゲーム知識の中には入ってない知らない名前だ。
何か役に立てないかと思ったけど、わたしって強いとか、知識豊富だとか、そんなチート的な要素あまり無いのよね………。
いや、危険な目に遭ったら女神ディアーナを降臨させられるから充分にチートかしら。
女神と言うより喧嘩上等のレディースの総長を召喚している感じだけど。
「スチュワートの事もあるし、優しい君はもっと怯えたり取り乱すかと思った。
冷静に話を聞いてくれて良かったよ。」
「怯えてはいませんけど冷静ってワケでも無いですよ?
スチュワートさんが殺され掛けたと聞いて、怖いって気持ちより怒りで腸が煮えくり返る思いです。
しかもスファイを誘拐?
あのスファイが囚われの身に………」
いや、今はソレどころじゃないって。
何で一瞬、緊縛状態のスファイの絵面が脳裏に浮かんだの。
ショタだったし。
今はあんな、カワイイ半ズボン少年ではないじゃないか。
「スチュワートを刺し貫いたのがマンバドナであるとすれば、スファイを誘拐したのはグイザール公爵の縁者の者である可能性が高い。
カチュアは今ウィットワース伯爵家におり、オースティンと共にマンバドナの情報を集めていくそうだ。
俺の方も伝手を使い、下町の情報を集めていたのだが…
グイザール公爵の庶子が何人か行方不明となっている。
後ろ盾を失い下町に居た者だけではない。
母親が下級貴族の者で、裕福ではなかろうが貴族の者であった子らもだ。」
改めて、あちこちに愛人が居たという、グイザールというお爺ちゃんの性に対する奔放ぶりを知る。
だが、若い女性が好きで遊びまくっていただけではないと聞いた。
グイザール卿さんとやらは、子を産んだ女性らの生活を保証して子どもらに貴族の子として育つ教育を与えた。
それが優しさからだけでは無く、自分の使える駒を増やす為だった事が明るみになり、国をも脅かしたと処刑となったらしいのだが…。
「もう、お亡くなりになってるじゃないですか。
悪いお仲間さんも処刑になった方や、牢に入れられた方も居ると聞きましたわ。
今さらなんぞ?」
「それが分からない。
目的が分からない以上、君にも危険が及ぶ可能性があるんだ。
刑を受けずに目こぼしされた小悪党達が、今さらグイザールの庶子を集めて、お前の父親のせいだと落ちぶれた自分達の憂さ晴らしをしたいだけなのかも知れないが…。」
「イヤですねー!尻の穴も金のタマもちっちゃい輩は!」
「………………。」
ナニを口走っちゃったんだ、わたしは。
サイモンの口をつぐませてしまったじゃないか。
わたしったら貴族の奥様にあるまじき暴言を口にした!
「え…えっと……スファイが居なくなって、メイはさぞ心配をしている事でしょう…。」
視線をスィーっと横に流して、無理矢理話題を変えた。
無理矢理過ぎて、何にも考えずに口にしたもんだからサイモンが不思議そうな表情を見せる。
「さっき寝室の前でマメに会った時に、そんな様子は全く無かったがな。
めぐみに抱きつく事の方が重要だったみたいだぞ。」
「そ、そうね…サイモンがわたしに抱きつかないようにとメイを牽制していたわね。」
あんなにも惚れてくれてる男を、少し位は心配してやれよ!メイ!
死にかけたと言うスチュワートさんの詳しい容態を聞いた。
スチュワートさんの怪我は胸の辺りから入った剣が身体を貫通して背中から出る、いわゆる串刺し状態にされたものらしい。
心臓一突きを狙われたらしいけれど、そういう趣向の剣士の存在を思い出したスチュワートさんが間一髪避けたとの事。さすがだ。
それでも剣自体は避けられず体内を貫通したのだから大怪我には違いない。
邸に辿り着いたスチュワートさんは出血も吐血も激しく、皆は肺が傷付いた重傷だと思っていたらしいけれど…
剣は偶然にも大事な臓器を全て避けて身体を貫いていたらしく早くも快方に向かっているとの事。
って、そんな偶然ありえんだろ。
マジックじゃあるまいし。
コレはジャンセンさんの仕業っしょ?
あの人、人間社会のいざこざには手を貸したりしませんってスタンス取ってるけど、意外と身内には甘いし。
スチュワートさんだってサイモンの伯父なんだもん。
しかも古くからの知り合いだとか言うし、ほぼ身内だよね。
でも事件解決のヒントはくれないし、スファイを助けたりもしてくれない。
スファイに関しては身内扱いされてないし、殺されそうになっても助けてくれなさそう。
「解決したいなら自分達で頑張れ、人間どもって感じの人だしなー……
うーん…悩み過ぎると胎教に良くないわぁ…」
まだ妊娠したと決まったワケでも無いのに、思わずさり気に呟いてしまった。
その瞬間、頭の中をゲーム画面のオフィーリアさんが横切った。
今となっては違和感しか無い位の、いかにも乙女ゲームのヒロイン!って感じのゲームでのオフィーリアさんのシーンが………脳裏に再現。
この映像、何か微妙に記憶にある……
でもこれ前世での、もう20年も昔の記憶じゃん!?
何で今、思い出した?このタイミングでこのシーン!
ヒント!?まさか神様、ヒントくれてる!?
「ジャンセンさんっっ遠回し過ぎるわ!
ハッキリと言ってくれたっていいじゃん!!」
うろ覚え過ぎて、オフィーリアさん(て言うか、わたしがプレイした時のヒロイン名はメグミンだったけど)のセリフが思い出せない。
あああ、何だっけ、このシーン!
やり込みまくったサイモンルートでないのだけは分かる。
「…………めぐみ?どうしたんだ、急に。」
「……いえ、ちょっと思い出した事が。
でも、この記憶って何の役に立つやら分からなくて。」
うん、オフィーリアさんのセリフも思い出したけど。
これ、今回の誘拐に関係あるぅ?
めでたい事を指す単語であり、主に結婚、妊娠、出産に対して言われる。
結婚…もう既にしてるんだし…となると、妊娠と出産!?
わたしが妊娠?サイモンの子を妊娠……
「うっ……うわぁあ!!やったぁ!うっ、嬉しい!
サイモンとわたしの赤ちゃん嬉しい!
嬉しいけど怖い!産むのが怖ぁぁい!!」
嬉しいやら出産が怖いやらでパニクったわたしが半笑いでプルプル震えるのを見たグレイスお義母様が、テーブルを叩きながらお腹を押さえて笑い出した。
「あっはっはっは!!
メグミンの顔が面白いわぁ!!」
怯える嫁の顔が面白いって、鬼姑みたいな事言わないで下さいよ。
いや、お義母様がわたしを可愛がってくれてるのは良く良く知ってるんだけど!
「サイモンのお嫁さんのメグミンが、僕たちの初孫を身ごもってくれたのならば嬉しいけどね。
…でも早計かも知れないし。」
ゔぁあぁ!お義父様までわたしをメグミン呼びするぅ!
何でわたし、異世界に嫁入りして義両親に地球にいた頃のペンネームで呼ばれてんの!
「そうね、ちゃんと正確な診断を受けてからでないと。
……何にせよ、メグミンはうちの大事な宝よ。
もし本当におめでたなら、ご実家に身を寄せて貰った方が…」
お義母様の表情が一瞬だけ曇ったのを、わたしは偶然見てしまった。
もう里帰り出産の話をするの?早すぎない?って言うか…
もしかして、わたしのおめでたは歓迎されてない?
いや、喜ばれてないと言うより……
何だか、時期がなぁ的な雰囲気なんですけど??
「めぐみ、温室とは言え此処は冷える。
寝室に戻ろうか。」
「え?まだ来たばかりなのに…。」
サイモンがわたしを掬い上げる様に横抱きし、温室の出口に向かって歩き出した。
サイモンに抱き上げられたまま首を伸ばしてお義母様の方を見ると、優しい笑顔で手を振ってくれていた。
何だろう、このアウェイ感。
凄く大事にされているのは分かっている。
でもなぜか、わたしだけ蚊帳の外で何か重要な事を隠されている。
それは…心配を掛けたくないからって分かってるから、大切にされてるんだって嬉しいけど…。
この邸の一員から外されているような気がして何だか寂しい。
わたしはグレイスお義母様みたいに、邸の女主人でありながら剣士としても戦えるなんて出来ないし、有事の際に何の役にも立てないかも知れないけれど…。
「ねえサイモン、何があったの?何を隠してるの?
隠さないで教えて。仲間はずれにしないで。
わたしもヒールナー伯爵邸の1人として、何か起こったのであれば皆と一緒に立ち向かいたいの。」
寝室のベッドの上にフワリと寝かす様に乗せられたわたしは、すぐにムクリと起き上がって身を屈めているサイモンの両頬を両手で挟むように持ち、正面から間近にサイモンの顔をジイイっと見た。
「めぐみが心配するほどの事では無いよ。」
「ほら隠すのが下手!何もないワケじゃないのね!
サイモンたら、わたしに嘘がつけないんだから。
邸のみんなが教えてくれないなら、別邸のスチュワートさんの所に押しかけて聞いて来るんだから!」
わたしの口からスチュワートさんの名前を聞いたサイモンが、ピクッと眉を寄せて怒った様な険しい顔をした。
わたしがワガママを言ったから不快感をあらわにしたのかと思ったけれど、それは違った様で。
サイモンは自分の頬に当てられた、わたしの両手に自分の手を重ねて下に下ろし、自分もベッドの上に腰を下ろした。
「スチュワートに今、君を会わせる事は出来ない。
……そうだな、めぐみももうヒールナー伯爵家の女主人だ。
邸に起こった事は知っておくべきだろう。
だが、もし君が身ごもっているのなら……
そんな大事なめぐみの心身に負担を掛けたくないんだ。」
「大丈夫よ、サイモン。
わたし、神聖国までの旅でかなり根性を鍛えられたと思うの!
ちょっとやそっとじゃ、肉体的にも精神的にも押し潰されたりしないから。」
そうよ、ハブられてる方が精神的に良くない。
わたしが妊娠してるにしても、心を穏やかに保つには何も知らない不安の方が絶対に良くない。
「だって何があっても、サイモンがわたしを守ってくれるんでしょ?」
「当然だ…俺の大事なめぐみが傷付く様な事は、俺が許さない。
必ず守るとも。」
わたしの手をキュッと握り締め、サイモンが優しく微笑み掛けてくれる。
ゲームでは氷の貴公子だとか言われていたサイモンの、ゲーム画面では無くリアルなこの微笑みは、わたしだけに向けられるもの。
「わたしが休んでる間に何があったか、話して。」
サイモンに、メイとスファイが行方不明になってからの事を聞いた。
二人を誘拐したのが今やこの世に存在していた痕跡すら無い、エリーゼ嬢が関わっていた者達で、掻い摘んで話せば……
わたしがメイとスファイに邸から連れ出されて、見知らぬ男達に襲われ掛けた事件の報酬だとか取り分だとかで揉めたらしいとの事。
わたしにとっては辛い事故であり、思い出したくはないだろうと、その辺に付いてもヒールナー家の皆はわたしに話したくはなかったらしい。
ありがたいくらいの優しい気遣いだわ。
確かに怖かったけど未遂だし、あの男達はカチュアが首をチョンしたと聞いて、そちらのインパクトのが強い。
思い出すのもツラいって程の過去ではない。
「で、アセレーナさんが暴れてメイを救い……悪の組織はほぼ壊滅。
そこで、さらなる悪の組織が出て来たワケですね。
………スチュワートさんに深手を負わせる程の剣士が居る。
スファイが拐われ、重要参考人としてマンバドナという人の名前が挙がっていると。」
コレは…わたしのゲーム知識の中には入ってない知らない名前だ。
何か役に立てないかと思ったけど、わたしって強いとか、知識豊富だとか、そんなチート的な要素あまり無いのよね………。
いや、危険な目に遭ったら女神ディアーナを降臨させられるから充分にチートかしら。
女神と言うより喧嘩上等のレディースの総長を召喚している感じだけど。
「スチュワートの事もあるし、優しい君はもっと怯えたり取り乱すかと思った。
冷静に話を聞いてくれて良かったよ。」
「怯えてはいませんけど冷静ってワケでも無いですよ?
スチュワートさんが殺され掛けたと聞いて、怖いって気持ちより怒りで腸が煮えくり返る思いです。
しかもスファイを誘拐?
あのスファイが囚われの身に………」
いや、今はソレどころじゃないって。
何で一瞬、緊縛状態のスファイの絵面が脳裏に浮かんだの。
ショタだったし。
今はあんな、カワイイ半ズボン少年ではないじゃないか。
「スチュワートを刺し貫いたのがマンバドナであるとすれば、スファイを誘拐したのはグイザール公爵の縁者の者である可能性が高い。
カチュアは今ウィットワース伯爵家におり、オースティンと共にマンバドナの情報を集めていくそうだ。
俺の方も伝手を使い、下町の情報を集めていたのだが…
グイザール公爵の庶子が何人か行方不明となっている。
後ろ盾を失い下町に居た者だけではない。
母親が下級貴族の者で、裕福ではなかろうが貴族の者であった子らもだ。」
改めて、あちこちに愛人が居たという、グイザールというお爺ちゃんの性に対する奔放ぶりを知る。
だが、若い女性が好きで遊びまくっていただけではないと聞いた。
グイザール卿さんとやらは、子を産んだ女性らの生活を保証して子どもらに貴族の子として育つ教育を与えた。
それが優しさからだけでは無く、自分の使える駒を増やす為だった事が明るみになり、国をも脅かしたと処刑となったらしいのだが…。
「もう、お亡くなりになってるじゃないですか。
悪いお仲間さんも処刑になった方や、牢に入れられた方も居ると聞きましたわ。
今さらなんぞ?」
「それが分からない。
目的が分からない以上、君にも危険が及ぶ可能性があるんだ。
刑を受けずに目こぼしされた小悪党達が、今さらグイザールの庶子を集めて、お前の父親のせいだと落ちぶれた自分達の憂さ晴らしをしたいだけなのかも知れないが…。」
「イヤですねー!尻の穴も金のタマもちっちゃい輩は!」
「………………。」
ナニを口走っちゃったんだ、わたしは。
サイモンの口をつぐませてしまったじゃないか。
わたしったら貴族の奥様にあるまじき暴言を口にした!
「え…えっと……スファイが居なくなって、メイはさぞ心配をしている事でしょう…。」
視線をスィーっと横に流して、無理矢理話題を変えた。
無理矢理過ぎて、何にも考えずに口にしたもんだからサイモンが不思議そうな表情を見せる。
「さっき寝室の前でマメに会った時に、そんな様子は全く無かったがな。
めぐみに抱きつく事の方が重要だったみたいだぞ。」
「そ、そうね…サイモンがわたしに抱きつかないようにとメイを牽制していたわね。」
あんなにも惚れてくれてる男を、少し位は心配してやれよ!メイ!
死にかけたと言うスチュワートさんの詳しい容態を聞いた。
スチュワートさんの怪我は胸の辺りから入った剣が身体を貫通して背中から出る、いわゆる串刺し状態にされたものらしい。
心臓一突きを狙われたらしいけれど、そういう趣向の剣士の存在を思い出したスチュワートさんが間一髪避けたとの事。さすがだ。
それでも剣自体は避けられず体内を貫通したのだから大怪我には違いない。
邸に辿り着いたスチュワートさんは出血も吐血も激しく、皆は肺が傷付いた重傷だと思っていたらしいけれど…
剣は偶然にも大事な臓器を全て避けて身体を貫いていたらしく早くも快方に向かっているとの事。
って、そんな偶然ありえんだろ。
マジックじゃあるまいし。
コレはジャンセンさんの仕業っしょ?
あの人、人間社会のいざこざには手を貸したりしませんってスタンス取ってるけど、意外と身内には甘いし。
スチュワートさんだってサイモンの伯父なんだもん。
しかも古くからの知り合いだとか言うし、ほぼ身内だよね。
でも事件解決のヒントはくれないし、スファイを助けたりもしてくれない。
スファイに関しては身内扱いされてないし、殺されそうになっても助けてくれなさそう。
「解決したいなら自分達で頑張れ、人間どもって感じの人だしなー……
うーん…悩み過ぎると胎教に良くないわぁ…」
まだ妊娠したと決まったワケでも無いのに、思わずさり気に呟いてしまった。
その瞬間、頭の中をゲーム画面のオフィーリアさんが横切った。
今となっては違和感しか無い位の、いかにも乙女ゲームのヒロイン!って感じのゲームでのオフィーリアさんのシーンが………脳裏に再現。
この映像、何か微妙に記憶にある……
でもこれ前世での、もう20年も昔の記憶じゃん!?
何で今、思い出した?このタイミングでこのシーン!
ヒント!?まさか神様、ヒントくれてる!?
「ジャンセンさんっっ遠回し過ぎるわ!
ハッキリと言ってくれたっていいじゃん!!」
うろ覚え過ぎて、オフィーリアさん(て言うか、わたしがプレイした時のヒロイン名はメグミンだったけど)のセリフが思い出せない。
あああ、何だっけ、このシーン!
やり込みまくったサイモンルートでないのだけは分かる。
「…………めぐみ?どうしたんだ、急に。」
「……いえ、ちょっと思い出した事が。
でも、この記憶って何の役に立つやら分からなくて。」
うん、オフィーリアさんのセリフも思い出したけど。
これ、今回の誘拐に関係あるぅ?
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