それでもヒロインは私ですっ!

翡翠

文字の大きさ
1 / 5

プロローグ

「愛してるよ。リメッタ…」
「私もです。リオン殿下……」

シキンキョリで、長いまつ毛が震える。
ここまで、長かった。
辛いことも、大変なこともたくさんあった。
でも、もういいの。
私の努力は間違っていなかった。その証拠に、リオン殿下は皇后がいるにも関わらず、私を愛してくれている…
そっと、名前を呼ばれて。唇が重なる。

***
私、シャーリー・リメッタは、辺境の没落貴族の一人娘だ。本来なら、皇太子と言葉を交わすことさえ、許されない身分。
それが一変したのは、13歳の時だった。突然、聖女の力が覚醒したの。千年に一度の逸材と言われる、治癒の力を持った聖女。
その瞬間、劇的に周囲の目は変わった。戸惑いと、畏怖と、好奇心。あれよあれよという間に王宮に招かれて、リオン殿下に謁見して。私は、一目で恋に落ちた。
でも、本当に大変だったのはここから。宮中で過ごすことを許された聖女とはいえ、芋臭い田舎娘をよく思う人ばかりじゃない。いじめ、イビリは日常茶飯事だった。
でも私、めげなかった。
目的はただ一つ、リオン殿下の気を引くこと。じゃなかったらとっくに田舎に帰ってる。
怪我した兵士を治癒したり、お腹を空かせて倒れた子供を助けたり。要は「優しい聖女サマ」のパフォーマンス。
おかげで今じゃすっかり「聖女サマ」が板についた。

「聖女さま!お出かけですか?」

ほうらね。無骨で有名なイケメン衛兵、ルイーズが駆け寄ってきた。

「いいえ。今から帰るところなんです」
「ええっ!夜道は危険ですよ。お送りしましょう」
「まあ!ありがとう。でも、馬車を待たせていますの。あなたこそ、体を大事になさってね。この寒いのに風邪ひいちゃうわ」

はらはら、雪が舞っていた。くるりとマフラーを外して、ルイーズの首に巻く。ぼんっと、おもしろいように真っ赤になった。ふふっと、私史上、一番かわいい顔で笑う。

「でも、本当に風邪をひいたら、私のところに来てくださいね。治して差し上げますわ」
「めっ、めっそうもない!」

まあ、この辺かな。ルイーズの私への好感度を上げつつ、リオン殿下に嫉妬されない限界は。
王宮の貴族っ娘に対抗するなら、やっぱり男のバックアップは欠かせないわ。
パッと体を離して、踵を返す。後ろで敬礼する気配。
これも、私の努力の結晶。
この辺りの男は、みんなみんな私の虜…

「悪趣味なことですね」

…じゃ、ないやつもいた。
振り返ると、整った顔をあからさまに顰めた男性がいた。

「あんたに関係ないでしょ。てか、愛されるのは聖女の仕事ですから」

私の執事、シュバリエ・リュカ。見た目はどう見ても二十歳そこそこなんだけど、私が幼い頃からウチにいるから、本当の年齢は不詳。
私になびくどころか、憎まれ口のレベルが年々上がっている困りものだ。
ま、こんなやつ、なびいていらないけど。

完璧な動作で開けられたドアをくぐり、私は馬車に乗り込んだ。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

My Knight

チャーコ
恋愛
地味で控えめな公爵令嬢のエレオノーラ。彼女の婚約者は年若く美しいヴィルヘルム王太子である。それが不釣り合いに感じた隣国の王女はエレオノーラからヴィルヘルムを奪おうと思い立つが、エレオノーラの意外な正体が明らかになると──? ※他サイトにも掲載しています。 ※表紙絵はあっきコタロウさんに描いていただきました。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?