それでもヒロインは私ですっ!

翡翠

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崩壊の始まり

事件から数日、私は珍しくリュカの言うことを聞いて、自主謹慎を受けていた。
勝手に押しかけて、勝手にキレ散らかして怪我させるなんてやりすぎにもほどがある。
あーあ、レオン殿下、なんて思うかな…

「そろそろ部屋にカビが生えそうですね」

人の気も知らないで、テキパキと掃除するのはもちろんリュカ。

「でもさ、アレはグロリアさまも悪いと思わない⁉︎」

そもそも婚約破棄するなんて、失礼すぎるのよ!いったいどんな権限があって…

「悔しいのですか?」
「は?」
「皇后の地位ですよ。リムさまがいくら聖女事業に勤しんでも、手に入れられなかったものです。安穏とその地位にありながら、挙句、放り投げることのできるグロリアさまを、妬んでいる」

そういうことですか?藍色のひとみが、わずかに挑戦的な色を帯びる。
目の前が赤く染まる。

パンッ!

リュカの白いほおが、みるみる赤く染まっていく。手が痺れて、顔が歪んだ。

「出てって」
「御意」

パタン、と閉じられたドアが滲んでいく。クッションに顔を埋めて、どれくらいたっただろうか。窓にコツンと何かが当たる音がして、私は顔をあげた。
透かし彫りがあしらわれたメルヘンな窓を開ける。

「やばっ!逃げよーぜ」

え?人気のない裏通りを走り去っていくのは、幼い男子二人だった。今、あの子たち、何をしたの…?
石を、投げた…?聖女様のお屋敷の窓に…?こんなこと、バレたら死刑よ?そもそ私が民からこんなことされる理由なんてない…

「リムさま!!」

バンッと扉が開く音がして、リュカが飛び込んでくる。珍しく慌てたリュカの顔がおもしろくて、私は笑った。笑えた、はずだった。でも、なぜか痛みを堪えるような表情を浮かべ、リュカは一言。

「…申し訳ありません。私がついていながら、あのような狼藉を許すとは」

…そうよ、あなたがちゃんと見ていないから。そう責めたくなる言葉を、ギリギリで飲み込む。
だって、私は知っているから。リュカが私と目を合わさないとき、隠し事をしているってこと。そしてその隠しごとは、いつも私のことだってことを。

「リュカ、謹慎は終わりよ。殿下に会いにいくわ。ついてきなさい」
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