王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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○○な2人

影が薄いあの子とその兄と過ごした1日...黒羽目線

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☆「今日はどこかへ出掛けるか」
「いいの⁉お仕事は?」
☆「休みだ。行きたいところはあるか?」
「うーん...」
遥の携帯が鳴る。
☆「はい。...え?あ、はい、分かりました...」
電話を切ったあと、遥が申し訳なさそうにしていた。
☆「すまない、これから病院へ行かなければならなくなった。おまえもこい」
「⁉」
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☆「おい、大丈夫か?」
ベッドに横になっているのは、見覚えのある黒髪の少女。
★「いつものことだから」
「本当に平気なの?」
★「やっぱり、お姫様は優しいね」
少し弱々しく微笑む彼女を見て、ずきりと胸が痛んだ。
☆「おまえはいつも無理をしすぎだ。ただでさえ貧血気味なんだから気をつけろ」
★「ごめんなさい...」
彼女...禊ちゃんはしゅんとしている。
「禊ちゃん、お豆腐好きだったよね?実は湯豆腐を作ってきたんだ!食べられそう...?」
★「...ありがとう」
禊ちゃんはゆっくりと食べはじめる。
☆「ちょっといいか?」
「うん」
私は遥に呼ばれ、病室をあとにする...。
☆「すまない。あいつとどう接すればいいのか分からなくて...」
無理もない。
ご両親が遥をあまり大切に育てなかったことを、私は知っているから。
「遥らしく接してあげればいいと思う。遥が優しくしてあげないと、禊ちゃんは悲しむと思うから」
☆「俺らしく...」
遥がぽつりと呟いたあと、病室へと戻っていく。
★「あ、おかえり」
☆「熱はないのか?」
★「うん」
☆「だったら...それを食べたあとでいいから、中庭へ連れ出してやる」
★「お仕事は?」
☆「今日は休みだ」
★「お姫様も、一緒?」
☆「ああ」
★「なら、行きたい」
禊ちゃんは最後の豆腐を食べきり、車椅子にのる。
「私が押そうか?」
★「お姫様、足痛くないの...?」
「大丈夫だよ」
★「ありがとう」
ぱあっと表情が明るくなって、禊ちゃんは笑っていた。
遥も微笑ましそうにしている。
私もこの時間がなんだか幸せで、ゆっくりと車椅子を押した...。
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