王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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緑川 真人 続篇

第4話

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▲「黒羽、おはよう」
「おはよう」
黒羽たちはいつもどおりに過ごす。
▲「いらっしゃいませ」
「ありがとうございました!」
暫くひっきりなしにお客さんがきていたが、ぴたりとおさまった時間帯があった。
▲「そろそろお昼にしようか」
「うん!」
▲「じゃあ、今日は俺が何か作ってくるよ」
真人が奥へ行ったその時、カランと音がした。
「いらっしゃいませ」
?「黄色いお花がほしい」
「黄色いお花...?なんていう種類のお花ですか?」
?「分からない。でも、黄色いお花なの」
「えっと...寒菊ですか?」
?「そう、これ」
「ありがとうございました」
黒羽がお辞儀をすると、少女は言った。
?「敬語は要らない。またね、お姫様」
「お姫様...?」
▲「黒羽、お待たせ...って、禊ちゃん⁉」
★「あ、真人」
「知り合いなの?」
(私は外した方がいいかな)
▲「大丈夫、すぐに終わるから」
立ち去ろうとした黒羽を真人が引き止めた。
▲「遥が心配するよ?」
★「...お兄ちゃんは忙しいから」
▲「でも、」
「えっと...心配してくれる人がいるなら、心配をかけない方がいいよ?」
★「...ごめんなさい」
禊と呼ばれたその少女は頭をさげた。
「ううん、いいの。でもきっと、遥が心配してるから早く帰った方がいいよ」
★「連絡先。気が向いたら連絡して、お姫様」
またね、と禊は帰っていった。
黒羽は禊の言動について、頭のなかに大きな疑問をかかえていた。
(どうして私のことを『お姫様』って呼ぶんだろう?)
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▲「ごめんね、禊ちゃんが変なこと言ったりしなかった?」
「うん、全然。ただ、黄色いお花とだけ言われたからあれで合ってたかどうかは心配だけど...。遥って、妹さんがいたんだね」
▲「うん。あんまり仲がよくなくて...」
「そうなの?」
▲「うん。遥はあまり大事に育てられてないから...。しまった、スープが!」
真人ははっとしたように台所へと走っていった。
「禊ちゃん、か...」
黒羽は連絡してみようと決めた。
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★「お姫様、いい人だった」
?「だろうな」
★「でも、正体について知っている人は少ないみたい。多分真人は知ってるけど、他の人は...」
?「...だろうな」
★「もう少し、お姫様と話してから決める。お願い」
?「おまえのやりたいようにやれ」
そんな会話があったことなんて、誰も知らない。
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