王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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緑川 真人 続篇

第3話

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それから数ヵ月後。
何も分からないまま、時が過ぎてしまった。
この日は渚の最終検査の日。
これが無事に終われば、もう通院の必要はないらしい。
○「大丈夫でしょうか...」
「渚ならきっと大丈夫だよ!」
▲「うん、俺もそう思う」
○「...そうですね」
三人で待っていると、渚が病院から出てきた。
▼「...異常が、」
○「...っ」
雪が息をのむ。
▼「異常がなかった」
▲「そんなことだろうと思った。よかったね、ちゃんと治って」
「えっと、おめでとう」
ふわり。
○「渚、おまえ...」
▼「相変わらずおまえは力みすぎだ。というか、真面目すぎな」
渚がくっと喉を鳴らす。
○「まったく...」
雪が渚の肩に手をおく。
○「よかった」
▼「...。雪、仕事だろ」
○「ああ。いってくる」
▲「渚って意外と照れ屋さんだよね」
▼「うるせー。...で、本題だが...おまえらの所へ行ってもいいか?」
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黒羽たちは渚を連れ、家へ戻った。
▲「お茶どうぞ」
▼「...」
「教えて、渚。魔女が何を言っていたのか」
▼「俺はあの夜、あの女を説得しようと試みた。だが、あの女は憎しみに満ちていて聞く耳をもたなかった。なんとか張り合おうとしたが、俺は術なんて使えない。だから...」
渚が悔しそうにしている。
真人もこれほど渚が悔しそうにしている所をはじめて見たらしく、呆然としている。
▲「それであの大怪我?」
渚はいつもより弱々しく頷いた。
「魔女の魔法は、なかなかはじきかえせないの。私も、あまりはじけないの...」
▼「せめておまえを狙うのはやめてくれと言ったんだが...俺では届かなかったようだ」
「渚...」
▲「ねえ」
真人が開口一番、こんなことを言いはじめた。
▲「魔女さんって、お花好きかな?」
▼「は?」
「えっと、嫌いではないんじゃないかな」
▲「花で仲直りとか...できないか。渚にあれだけのことをしておいて、それは無理だよね」
真人は頭をかかえた。
「私を狙ってくるんだよね...?」
▼「ああ」
「私...魔女を止める。私にしかできないことだから、私が止めてみせる!」
(誰も傷つけさせたりしない)
▲「一人じゃ危ないよ。みんなで一緒に考えよう?」
「でも...」
▲「大丈夫。誰も傷つかない方法を、みんなで考えればいい」
「...うん」
▼「う、ううん!」
▲「...!」
「ごめんなさい!」
▼「取り敢えず今日は帰る。まあ、次は薬を作ってくる。じゃあな」
二人の甘い雰囲気に堪えられなくなった渚はそそくさと帰っていった。
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