王子と内緒の人魚姫

黒蝶

文字の大きさ
上 下
649 / 732
緑川 真人 続篇

第7話

しおりを挟む
▲「...塗るよ?」
「ごめんなさい」
黒羽は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
▲「あんなに長い時間立ったままなら、痛くなって当然だよ。なのに、俺は...」
真人は少し寂しそうな瞳で黒羽を見ていた。
そして、そのまま下を向いてしまった。
少し沈黙がながれたあと、先に口を動かしたのは黒羽だった。
「真人、いつもありがとう」
頭にそっと何かが当たるのを感じた真人は、すぐに顔をあげた。
頭を撫でながら、ふわりと笑っている黒羽が真人の目にはいった。
▲「黒羽...?」
「真人が側にいてくれれば、私はなんでもできる気がするの」
▲「...」
「だからお願い...そんな寂しそうな顔をしないで?」
▲「俺の方が、沢山支えてもらってるよ。ありがとう」
真人は黒羽の頬に手を伸ばした。
▲「愛してる」
「恥ずかしいよ...」
しばらくの間、二人は何かに酔いしれたように側を離れることはなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
▼「新しい薬を持ってきた」
「ありがとう」
翌日、渚が新薬を持ってきた。
渚は少し気まずそうに話しはじめた。
前回同様、効くかどうかは分からないこと。
逆に悪化する可能性があること。
肌が荒れるかもしれないこと...。
▼「危険だと思ったら、すぐに使うのを辞めること。いいな?」
「分かった」
▲「もしおかしいと思ったら、我慢しないですぐ教えてね」
「うん」
▼「真人、ちょっといいか?」
▲「でもこれから花屋を開けないと...」
「私、先にお店の準備をしてるね!」
黒羽は二人が話しやすいよう、そそくさと部屋をあとにした。
(なんの話をしているんだろう?...それよりも、今は準備をしないと)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
▲「どうしたの?」
▼「あれから襲われたりしてないか?」
▲「うん、全くと言っていいほど何もないよ」
▼「それだけ聞ければ充分だ」
話を済ませると、渚は足早に帰っていった。
真人は少しの間首を傾げていたが、真人だけに質問をした意味を理解した。
そして、真人もそのまま急いで花屋の準備に戻った。
しおりを挟む

処理中です...