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終幕
寝ている間に...★
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「...千夜」
話しかけてみたが、返事がない。
どうやら本当に寝てしまったらしい。
(吸血欲求を抑えてる...んだよな、多分)
抑えすぎでどれだけの疲労が蓄積しているのか、全く理解していなかった。
「...大丈夫だからな」
そのままおぶって家までの道を歩いていく。
どこかで休憩をいれようかと思っていたそのとき、一台の軽自動車が近くに停まった。
「御舟?」
「染谷...」
「え、佐藤ちゃん大丈夫なの?」
「頼む、あんまり大きな声出さないでくれ。...起こしたくない」
染谷は何も言わずに後部座席のドアを開けてくれた。
「近くまで乗せてく。...家どのあたりなんだ?」
「...道なりに進んで、突き当たりを左。悪い、助かった」
「気にするなよ、困ってるときに助けあえるのが友人だろ?」
染谷はただ笑ってそう言った。
...今回は頭があがらない。
「ここまででいい。...これ以上乗ってたら、千夜が起きそうだから。それに、きっとおまえに迷惑をかけたって気にし続ける...」
「そっか。何か必要なら連絡してくれ」
「ありがとう。それじゃあまた大学で」
千夜を背負って振り返ると、染谷が手をふってくれていた。
(...本当にいい奴だな)
「ん...」
「もうすぐだからな」
自分の家の鍵を開けて、そのままベッドに寝かせる。
なんとか起こさないようにできたものの、何をすればいいのか分からなかった。
...自分に何ができるのか分からなかった。
護りたいのに、ちゃんと護れていないような気がして...複雑な気分になった。
(夕飯、作っておくか)
一応試しにと買ってみた調味料を並べて少し考える。
「...冷製ポタージュにするか」
味がしないと哀しそうに言っていた千夜に、美味しいと言わせたい。
そう思って試行錯誤しているが、相変わらず千夜に美味いと言わせることはできていない。
「...よし」
冷やしている間に一度千夜の近くに戻る。
(余程疲れたのか、それとも...)
「真昼...?」
「起きたか?」
「...ん」
しばらく千夜を見つめていると、再びすやすやと寝息をたてて寝はじめた。
寝言でも名前を呼ばれたのが嬉しくて、そっと髪を梳く。
「...そのまま休んでろ」
そうして再び調理台の前に立つ。
千夜の腕の傷は、とても痛々しかった。
だが、やはり穢いなどとは微塵も思わなかった。
...千夜にとってはどうなのか分からないが、その傷はきっと必死に闘ってきた証なのだ。
(そろそろ起こした方がよさそうだな)
話しかけてみたが、返事がない。
どうやら本当に寝てしまったらしい。
(吸血欲求を抑えてる...んだよな、多分)
抑えすぎでどれだけの疲労が蓄積しているのか、全く理解していなかった。
「...大丈夫だからな」
そのままおぶって家までの道を歩いていく。
どこかで休憩をいれようかと思っていたそのとき、一台の軽自動車が近くに停まった。
「御舟?」
「染谷...」
「え、佐藤ちゃん大丈夫なの?」
「頼む、あんまり大きな声出さないでくれ。...起こしたくない」
染谷は何も言わずに後部座席のドアを開けてくれた。
「近くまで乗せてく。...家どのあたりなんだ?」
「...道なりに進んで、突き当たりを左。悪い、助かった」
「気にするなよ、困ってるときに助けあえるのが友人だろ?」
染谷はただ笑ってそう言った。
...今回は頭があがらない。
「ここまででいい。...これ以上乗ってたら、千夜が起きそうだから。それに、きっとおまえに迷惑をかけたって気にし続ける...」
「そっか。何か必要なら連絡してくれ」
「ありがとう。それじゃあまた大学で」
千夜を背負って振り返ると、染谷が手をふってくれていた。
(...本当にいい奴だな)
「ん...」
「もうすぐだからな」
自分の家の鍵を開けて、そのままベッドに寝かせる。
なんとか起こさないようにできたものの、何をすればいいのか分からなかった。
...自分に何ができるのか分からなかった。
護りたいのに、ちゃんと護れていないような気がして...複雑な気分になった。
(夕飯、作っておくか)
一応試しにと買ってみた調味料を並べて少し考える。
「...冷製ポタージュにするか」
味がしないと哀しそうに言っていた千夜に、美味しいと言わせたい。
そう思って試行錯誤しているが、相変わらず千夜に美味いと言わせることはできていない。
「...よし」
冷やしている間に一度千夜の近くに戻る。
(余程疲れたのか、それとも...)
「真昼...?」
「起きたか?」
「...ん」
しばらく千夜を見つめていると、再びすやすやと寝息をたてて寝はじめた。
寝言でも名前を呼ばれたのが嬉しくて、そっと髪を梳く。
「...そのまま休んでろ」
そうして再び調理台の前に立つ。
千夜の腕の傷は、とても痛々しかった。
だが、やはり穢いなどとは微塵も思わなかった。
...千夜にとってはどうなのか分からないが、その傷はきっと必死に闘ってきた証なのだ。
(そろそろ起こした方がよさそうだな)
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