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19枚目
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「お邪魔します」
「どうぞ」
学校はお昼までだったのか、なんて呑気に考えていた自分を殴りたい。
……すっかり忘れていたけど、蓮はいじめを受けているのだ。
落書きだらけのノートに、しょっちゅうなくなる文房具。
出会ってから3回も筆記用具を一式買い直している。
「何かあった?」
「すみません。もう疲れてしまって……」
こんなに苦しんでいるこの子に誰も気づかないなんて、世界はどうかしている。
「結さん、吹っ切れた顔してますね」
「分かる?」
細田隆道の特集記事のネット版。
それを見せながら笑顔を向けた。
「見て、何もなくなっちゃった!」
私が撮った写真が差し替えられることはなかったけど、撮影者の部分に先輩の名前。
天涯孤独、無才……今度は唯一のカメラさえ奪われた。
人を憎んでも仕方ないと思っていたのに、世界を憎まずにはいられない。
世界を、理不尽を恨まずにはいられない。
「あの」
「どうしたの?」
「もしよかったら、いい写真を撮りに行きませんか?貯金、全部持ってきました」
蓮が示したその場所がどういうものなのか、私はよく知っている。
飛び込みだと鉄道会社に、ビルやマンションだと管理会社に迷惑がかかってしまう。
だったら、私は──
「この場所へ行こうよ。大丈夫。宿泊代も交通費も私が出すよ。
どうせ死ぬなら、お金なんて持っていても意味ないしね」
積み重ねてきた信頼なんて、崩れ去るのは一瞬だ。
そんな世界で息もできないなか歩いていく自分が想像できない。
だからもう終わりにする。
意味を間違えていただろうかと顔を覗きこむと、満面の笑みで頷いた。
「早速近くの宿を調べます」
「どうぞ」
学校はお昼までだったのか、なんて呑気に考えていた自分を殴りたい。
……すっかり忘れていたけど、蓮はいじめを受けているのだ。
落書きだらけのノートに、しょっちゅうなくなる文房具。
出会ってから3回も筆記用具を一式買い直している。
「何かあった?」
「すみません。もう疲れてしまって……」
こんなに苦しんでいるこの子に誰も気づかないなんて、世界はどうかしている。
「結さん、吹っ切れた顔してますね」
「分かる?」
細田隆道の特集記事のネット版。
それを見せながら笑顔を向けた。
「見て、何もなくなっちゃった!」
私が撮った写真が差し替えられることはなかったけど、撮影者の部分に先輩の名前。
天涯孤独、無才……今度は唯一のカメラさえ奪われた。
人を憎んでも仕方ないと思っていたのに、世界を憎まずにはいられない。
世界を、理不尽を恨まずにはいられない。
「あの」
「どうしたの?」
「もしよかったら、いい写真を撮りに行きませんか?貯金、全部持ってきました」
蓮が示したその場所がどういうものなのか、私はよく知っている。
飛び込みだと鉄道会社に、ビルやマンションだと管理会社に迷惑がかかってしまう。
だったら、私は──
「この場所へ行こうよ。大丈夫。宿泊代も交通費も私が出すよ。
どうせ死ぬなら、お金なんて持っていても意味ないしね」
積み重ねてきた信頼なんて、崩れ去るのは一瞬だ。
そんな世界で息もできないなか歩いていく自分が想像できない。
だからもう終わりにする。
意味を間違えていただろうかと顔を覗きこむと、満面の笑みで頷いた。
「早速近くの宿を調べます」
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