ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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第13話

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「仲良くなりたいなら、まず相手が好きなものを知るところからじゃないか?」
翌日、学校で真島先生に尋ねてみたらそんな答えが返ってきた。
たしかに俺は桜雪ちゃんのことを殆ど知らない。
多分人に気を遣いながら生きてきた人で、今でも人に迷惑をかけないようにって常に考えながら生きている。
「手話を覚えようとしてるのもその子の為なんだろ?」
「まあ、そんなところかな。耳が聴こえないわけじゃないんだけど声が出ない子で、時々手が話してるときがあるから…」
多分、話したいことの半分も言えずに我慢してきたんだろう。
だったらせめて、溢れてしまった言葉を少しでもすくいとらせてほしい。
「仲良くなれるといいな」
「ありがとうりっ君」
「真島律先生な」
授業を受けるために教室に入ったものの、今日は生徒の集まりが悪い気がする。
いつもならもっと人が多いはずなのに、何かあったのだろうか。
出席簿を持った真島先生がにこやかに話しはじめた。
「今日はクラスの半数以上が家庭や仕事の事情で欠席だ。このまま授業進めるのもあれだから、俺の授業は自習にします。
分からないところがある生徒は質問に来るように。他の教科やってもいいよ」
今日も立派に先生しているりっ君には頭が上がらない。
数学はあまり得意じゃないから質問してみようと思ったけど、もう人だかりができている。
「真島先生、この問題なんですけど…」
「あ、俺もそれ分からなくて…教えてください」
「この課題の最難関だな…。じゃあ、解説しますね」
相変わらずすさまじい人気だ。
なんだか他のことがしたくなって手話の本を手に取る。
指文字は半分くらい覚えたものの、手話はまだ挨拶の半分くらいしか分からない。
「自転車、バイク、星、月、花…」
たまたま大丈夫とか平気というニュアンスは知ってたけど、これからもう少し分かるようになりたい。
「夏霧、課題は?」
「終わらせてあります」
最後の1枚はほとんど白紙だけど、真島先生は苦笑しながらそうかと一言呟いただけだった。
その後は普通に授業を受けて帰る準備をする。
あとは窓を閉めるだけというところで後ろから肩をたたかれた。
「みい、ちょっといいか?」
「りっ君が引き止めてくるなんて珍しいね」
「さっき、分からないところ聞きたそうだったから…どの問題?」
「全日制で似たようなところやってるんだけど、全然分からなくて…」
「じゃあその問題片づけてから帰ろう」
りっ君は俺をよく見ている。
もしかすると、考えていること全部見透かされているかもしれない。
唐牛で問題が解けたところで帰路につく。
星が綺麗な夜だったけど、頭の中は桜雪ちゃんのことでいっぱいだった。
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