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逆境を壊す
第61話
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こゆきは楽しそうにおもちゃと戯れている。
そんな姿を微笑ましく思いながら課題を進めていると、穂さんから返信がきた。
【俺も楽しかったよ。こゆきにも会いたいし、今度家に行ってもいいかな?】
嬉しくて舞いあがった気持ちを抑えつつ、返事を送った。
【こゆきの調子が悪くなければ、穂さんが空いている日にいつでも来てください。
バイトの日以外はだいたいいつも家にいるので、楽しみにしています】
もう少し部屋を片づけてようと決意しながら、明日の仕事に備えて休むことにした。
にゃんという声がして目を開けると、こゆきが心配そうに顔をのぞきこんでいる。
「……」
頭を撫でると意味が伝わったのか、ほっとしたようにその場で体を丸めた。
大丈夫だって分かってもらえて嬉しい。
なかなか伝わらないことも多かったけれど、やっぱりこゆき相手には言葉が通じやすいみたいだ。
午後は猫カフェでの仕事がある。
古書店の仕事を休む人がいると連絡がきていたので、もしかすると夜も仕事になるかもしれない。
また少し離れると思うと寂しさがこみあげたものの、仕事が好きだから頑張れる。
「八坂さん、こんにちは。こゆきはこっちに連れて行っておくね」
一礼しておやつのストックを数えていると、たまごボーロが残っていないことに気づく。
それに、冷蔵庫に卵がひとつもない。
【買い物に行ってきます】
メモ書きを残して近くのスーパーで買い物する。
いつもの店員さんに頭を下げながら帰ろうとすると、路地裏から声が聞こえた。
「霧、どうしてそんなに拒絶するんだ」
「やめてくれ。俺は俺の幸せを見つけたんだ。おまえが何を言ってこようが、二度とステージに立つつもりはない」
喧嘩なら止めた方がいいかもしれないと思って覗いてみると、穂さんが困惑した顔で相手と話していた。
…相手の人は、今度の音楽イベントの主催者だ。
「霧が出てくれたら盛り上がるし、俺はやっぱり一緒に歌いたい」
「黒川ならひとりでやっていけるよ。事務所もサポートしてくれるだろうし大丈夫」
「…あいつのこと、まだ気にしてるのか」
その瞬間、空気がずっしり重くなる。
闇を抱えていない人なんて殆ど見たことがない。
穂さんにだって、苦しみのひとつやふたつあるだろう。
「当たり前だろ。なんで、そんなこと…」
「ふたりで音楽やっていこうぜ」
「やめろ!」
肩に触れられた手を穂さんは払い除けた。
いつも太陽みたいに笑う人なのに、今は絶望の底に沈んだ顔をしている。
…このまま黙ってみているわけにはいかない。
持っていたクレープのキーホルダーを取り出し、具の部分を引っ張る。
けたたましい音に驚いたのか、ふたり揃って私を見た。
「さゆ…」
音は鳴らしたまま、穂さんの前に立って相手の男をにらみつける。
「…また来るから」
男が去っていったのを確認してブザーの音を止めると、後ろから抱きしめられる。
その手は小さく震えていて、とても苦しい思いをしていることを強く感じ取った。
そんな姿を微笑ましく思いながら課題を進めていると、穂さんから返信がきた。
【俺も楽しかったよ。こゆきにも会いたいし、今度家に行ってもいいかな?】
嬉しくて舞いあがった気持ちを抑えつつ、返事を送った。
【こゆきの調子が悪くなければ、穂さんが空いている日にいつでも来てください。
バイトの日以外はだいたいいつも家にいるので、楽しみにしています】
もう少し部屋を片づけてようと決意しながら、明日の仕事に備えて休むことにした。
にゃんという声がして目を開けると、こゆきが心配そうに顔をのぞきこんでいる。
「……」
頭を撫でると意味が伝わったのか、ほっとしたようにその場で体を丸めた。
大丈夫だって分かってもらえて嬉しい。
なかなか伝わらないことも多かったけれど、やっぱりこゆき相手には言葉が通じやすいみたいだ。
午後は猫カフェでの仕事がある。
古書店の仕事を休む人がいると連絡がきていたので、もしかすると夜も仕事になるかもしれない。
また少し離れると思うと寂しさがこみあげたものの、仕事が好きだから頑張れる。
「八坂さん、こんにちは。こゆきはこっちに連れて行っておくね」
一礼しておやつのストックを数えていると、たまごボーロが残っていないことに気づく。
それに、冷蔵庫に卵がひとつもない。
【買い物に行ってきます】
メモ書きを残して近くのスーパーで買い物する。
いつもの店員さんに頭を下げながら帰ろうとすると、路地裏から声が聞こえた。
「霧、どうしてそんなに拒絶するんだ」
「やめてくれ。俺は俺の幸せを見つけたんだ。おまえが何を言ってこようが、二度とステージに立つつもりはない」
喧嘩なら止めた方がいいかもしれないと思って覗いてみると、穂さんが困惑した顔で相手と話していた。
…相手の人は、今度の音楽イベントの主催者だ。
「霧が出てくれたら盛り上がるし、俺はやっぱり一緒に歌いたい」
「黒川ならひとりでやっていけるよ。事務所もサポートしてくれるだろうし大丈夫」
「…あいつのこと、まだ気にしてるのか」
その瞬間、空気がずっしり重くなる。
闇を抱えていない人なんて殆ど見たことがない。
穂さんにだって、苦しみのひとつやふたつあるだろう。
「当たり前だろ。なんで、そんなこと…」
「ふたりで音楽やっていこうぜ」
「やめろ!」
肩に触れられた手を穂さんは払い除けた。
いつも太陽みたいに笑う人なのに、今は絶望の底に沈んだ顔をしている。
…このまま黙ってみているわけにはいかない。
持っていたクレープのキーホルダーを取り出し、具の部分を引っ張る。
けたたましい音に驚いたのか、ふたり揃って私を見た。
「さゆ…」
音は鳴らしたまま、穂さんの前に立って相手の男をにらみつける。
「…また来るから」
男が去っていったのを確認してブザーの音を止めると、後ろから抱きしめられる。
その手は小さく震えていて、とても苦しい思いをしていることを強く感じ取った。
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