背徳のヘンゼルとグレーテル

黒蝶

文字の大きさ
7 / 7

第5話

しおりを挟む
ー***ー
食べ終わったあと、私は約束どおり廊下にトレイを置いた。
「ルイ...」
ぬいぐるみを抱きしめながら、大好きな人を思い浮かべる。
本当はもっと堂々としていたいのに、私にはそれができない。
(...明日がきてしまう)
私にとって今一番怖いのは、日付が変わってしまうことだ。
学校が、明日が、その先の未来が...怖くてしかたない。
(明日もお休みしたいな...。それで、お母さんに能力のことを習いたい)
ルイのことを守れるようになりたい。
ひ弱な私はいつも守られてきた。
【あの日】もそうだった。
「...もう寝よう」
私はそのまま眠りについた。
...でも、その夜は酷い悪夢を視ることになった。
《どっちから食べてやろうか...》
あの声が忘れられない。
特にこの寒い時期は、忘れることができない。
(どうしたらいいの?)
ー****ー
僕は部屋の前に出されているトレイを運び、まだ起きていたお母さんに声をかける。
「お母さん、洗い物は僕がやるよ」
「でも、」
「夜遅くまで起きていたら、お父さんが心配するよ?」
「分かりました。でも、ルイも洗い終わったらすぐ寝てくださいね?」
「うん、分かってる。おやすみ」
お母さんが部屋に入ったのを確認して、僕はふう、と息をついた。
メイの様子がおかしい。
いつもならにぱっと恥ずかしそうに笑って、寝る前に部屋かキッチンに挨拶にくるはずだ。
だが、今日はそれすらない。
(ただ疲れてるっていうならいいんだけど、なんだか違う気がするんだよな...)
僕は意を決して、メイの部屋に入ることにした。
洗い終えた食器を並べ、一応ノックしてみる。
「......ないで」
「メイ?起きてるの?」
「こないで...」
「メイ?」
僕は勢いよくドアを開けた。
そこには、魘されているメイがいた。
(きっと【あの日】のことを思い出しているんだ...!)
「メイ!メイ!」
「...!」
がばっと身体を起こし、こちらを虚ろな瞳が見つめている。
「僕だよ、メイ」
「ルイ...?」
ー***ー
さっきのは夢だったのだと理解するまでに少し時間がかかった。
「大丈夫?汗びっしょりだよ?」
「...ごめんなさい」
「気にしないで。...今日はこうして眠ろうか?」
ルイが私の手を握る。
強く強く、握ってくれる。
【あの日】より大きい手を見ると、とても心強く感じた。
「今日はずっと隣にいてくれるの?」
「勿論だよ」
しばらくすると、やがてルイは寝息をたてはじめた。
(ルイ、ありがとう...)
私は繋がれたままの手を見ながら、いつの間にか眠っていた。
...今度は夢も視ない程に。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

処理中です...