路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when Christmas comes.

第4話

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ー*ー
私はカムイがいないので、とても不安に思っていた。
「メル!こういうのはどうかな?ワンピースはこれで...」
(一生懸命選んでくれてる...)
ナタリーさんはなんていい人なのだろうか。
私のために何かをしてくれる人。
おばあさまがいなくなってからというもの、そんな人はいなかった。
「可愛い、です...」
「...?どうしたのメル?」
「なんでも、ありません」
「...なんでもないって顔じゃないんだけど」
ナタリーさんは私の手をとり、そっと握ってくれる。
「ゆっくり、自分が好きなものを選んだらいいよ。時間はまだまだあるから...ね?」
「ごめんなさい、ごめ...」
私はこみあげてくるものを堪えきれず、気づいたときには滴が頬を伝っていた。
「メル⁉ごめんね、あたし、突っ走って嫌なことしたかな?あーどうしよう、またやっちゃった!」
「違うんです、ごめんなさい...」
(どうしてこんなにも、優しくしてくれるのでしょう?)
私はナタリーさんを困らせてしまったと深く後悔した。
ー**ー
女性は服選びに時間がかかるというが、さすがに遅すぎる。
店の奥の方へ入ってみると、何か焦っているナタリーの声が聞こえた。
「あー、泣かないで、じゃなくて、そのっ」
(...そういうことか)
「どうしたのかな、お姫様」
「カムイ...?」
メルの顔を覗きこむと、潤んだ瞳で俺を見つめてきた。
身を焦がすような感覚に陥る。
(またこの感覚だ...)
俺はそんなことを考えている場合ではないと思い直し、ナタリーに尋ねる。
「メルが嫌がるようなことをしたのかな?」
「分からないの、でも多分...」
「違うんです、違っ、違っ...」
過呼吸をおこしかけているのだと見た瞬間に分かった。
「メル、息を吸って...吐いて...ゆっくりでいいから繰り返して」
彼女が落ち着くようにと背中をさすってやる。
しばらくそうしていると、メルの顔色はすっかりよくなっていた。
「ありがとうございます、カムイ。ナタリーさん、ごめんなさい...」
「いやいや、あたしが悪かったんだよね?遠慮せずに言って?」
ナタリーは客商売が長いからか、そういうことには敏感だ。
「俺も聞きたい。メル、ゆっくりでいいから話してごらん?誰もきみを責めたりしないから」
(きみの不安を取り除きたい)
しばらく沈黙が流れて、メルが口を開いた。
「ナタリーさんが、優しくしてくださったから、感極まってしまって...」
「ええ⁉あたしは普通の事しかしてないよ⁉」
きっとメルは辛い思いをしてきたせいで、メルにとっての『普通』は...他の人のものとはかなりかけ離れているのだろう。
「ナタリー、色々事情があるんだ」
「そうなの...。ねえメル。もし嫌じゃなければ、さっき選んだ服、着てくれる?」
「はい!」
メルはぱあっと明るくなった。
「それじゃあ...はい、男は出ていく!」
「え、あ、」
俺はとっとと追い出されてしまった。
(なんなんだ、ナタリーの奴。...まあいいか)
メルの事ばかり気になってしまう。
...この気持ちは、なんなんだろうか。
ー*ー
「はい、できた!帽子は...」
「ごめんなさい、これは脱ぎたくなくて...」
ナタリーさんに、嫌われたくない。
その思いが強くなり、つい強めに言ってしまう。
「あ、ごめんなさい!その...」
「何か理由があるんだね。よし、分かった!じゃあ帽子はそのまま、ただし...この髪飾り、あげる!友だちになった記念に」
それは、透き通った水色の花の形をしたヘアピンだった。
「そんな、こんな綺麗なものを...」
「いいからもらって?」
「えっと、じゃあ...ありがとうございます」
「どういたしまして!じゃあカーテン開けちゃうね!」
(まだ心の準備が...)
何か言おうとした時には、もうすでに仕切りのカーテンが開いていた。
「...あ、いた。カムイ!どうよあたしのセンス!」
(カムイに似合わないって言われたらどうしましょう...)
ー**ー
ナタリーの大声が聞こえた方を向く。
「...!」
白いブラウスに黒いリボン、水色のスカートといった格好だった。
茶色のコートも持っている。
「カムイ、変でしょうか...?」
「メル、可愛い」
「え?」
「可愛いよ」
(本当に可愛い...)
お世辞ではなく、本当に心の底から可愛いと思った。
「タグは切ってあるの?」
「あたしが切ったわ。ついでにネグリジェもタダでつけておいてあげる」
「...いくら?」
「これくらい!」
他にも何着か買ったので、それなりの値段だった。
しかし、とても安く感じた。
「メル、カムイ、今度はベンがいるときにまた遊びにきてね!」
「ありがとうございました!」
メルの笑顔はいつもよりも輝いていた。
ー*ー
「ねえ、メル。片眼で歩くのはなれてる?」
唐突な質問に私は戸惑った。
「え、あ、はい。普段はいつも左目を隠して歩いていたので...」
「じゃあこれ、出掛けるときはこれをつけて。そうすれば、帽子を被らずに済むから」
渡されたのは、布とゴムが合体したようなもの。
「あの、これは...」
「そこの椅子に座って」
私が座ると、カムイがしゃがみこんで...顔が近くなる。
「眼帯っていうんだ。これはね、こうやって使うんだ」
丁寧に私の顔につけてくれる。
頬にカムイの手があたるたび、心臓が壊れそうなほど胸が熱くなった。
「よし終わり。これで帽子が脱げるでしょう?」
「ありがとうございます...」
(この感情はなんでしょうか)
そんなことを考えていると、カムイが口を開く。
「ただし、家では外してね。目が痛むし、何より...俺が独り占めしていたい」
「...?はい、分かりました!」
(独り占め?)
「今日はもう帰ろうか」
「はい!」
「メル、この手を離さないでね」
「分かりました」
差し出された手をそっと握ると、カムイが強く握ってくれた。
なんだか恥ずかしかったが、どこか懐かしかった。
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