35 / 220
Until the day when Christmas comes.
第4話
しおりを挟む
ー*ー
私はカムイがいないので、とても不安に思っていた。
「メル!こういうのはどうかな?ワンピースはこれで...」
(一生懸命選んでくれてる...)
ナタリーさんはなんていい人なのだろうか。
私のために何かをしてくれる人。
おばあさまがいなくなってからというもの、そんな人はいなかった。
「可愛い、です...」
「...?どうしたのメル?」
「なんでも、ありません」
「...なんでもないって顔じゃないんだけど」
ナタリーさんは私の手をとり、そっと握ってくれる。
「ゆっくり、自分が好きなものを選んだらいいよ。時間はまだまだあるから...ね?」
「ごめんなさい、ごめ...」
私はこみあげてくるものを堪えきれず、気づいたときには滴が頬を伝っていた。
「メル⁉ごめんね、あたし、突っ走って嫌なことしたかな?あーどうしよう、またやっちゃった!」
「違うんです、ごめんなさい...」
(どうしてこんなにも、優しくしてくれるのでしょう?)
私はナタリーさんを困らせてしまったと深く後悔した。
ー**ー
女性は服選びに時間がかかるというが、さすがに遅すぎる。
店の奥の方へ入ってみると、何か焦っているナタリーの声が聞こえた。
「あー、泣かないで、じゃなくて、そのっ」
(...そういうことか)
「どうしたのかな、お姫様」
「カムイ...?」
メルの顔を覗きこむと、潤んだ瞳で俺を見つめてきた。
身を焦がすような感覚に陥る。
(またこの感覚だ...)
俺はそんなことを考えている場合ではないと思い直し、ナタリーに尋ねる。
「メルが嫌がるようなことをしたのかな?」
「分からないの、でも多分...」
「違うんです、違っ、違っ...」
過呼吸をおこしかけているのだと見た瞬間に分かった。
「メル、息を吸って...吐いて...ゆっくりでいいから繰り返して」
彼女が落ち着くようにと背中をさすってやる。
しばらくそうしていると、メルの顔色はすっかりよくなっていた。
「ありがとうございます、カムイ。ナタリーさん、ごめんなさい...」
「いやいや、あたしが悪かったんだよね?遠慮せずに言って?」
ナタリーは客商売が長いからか、そういうことには敏感だ。
「俺も聞きたい。メル、ゆっくりでいいから話してごらん?誰もきみを責めたりしないから」
(きみの不安を取り除きたい)
しばらく沈黙が流れて、メルが口を開いた。
「ナタリーさんが、優しくしてくださったから、感極まってしまって...」
「ええ⁉あたしは普通の事しかしてないよ⁉」
きっとメルは辛い思いをしてきたせいで、メルにとっての『普通』は...他の人のものとはかなりかけ離れているのだろう。
「ナタリー、色々事情があるんだ」
「そうなの...。ねえメル。もし嫌じゃなければ、さっき選んだ服、着てくれる?」
「はい!」
メルはぱあっと明るくなった。
「それじゃあ...はい、男は出ていく!」
「え、あ、」
俺はとっとと追い出されてしまった。
(なんなんだ、ナタリーの奴。...まあいいか)
メルの事ばかり気になってしまう。
...この気持ちは、なんなんだろうか。
ー*ー
「はい、できた!帽子は...」
「ごめんなさい、これは脱ぎたくなくて...」
ナタリーさんに、嫌われたくない。
その思いが強くなり、つい強めに言ってしまう。
「あ、ごめんなさい!その...」
「何か理由があるんだね。よし、分かった!じゃあ帽子はそのまま、ただし...この髪飾り、あげる!友だちになった記念に」
それは、透き通った水色の花の形をしたヘアピンだった。
「そんな、こんな綺麗なものを...」
「いいからもらって?」
「えっと、じゃあ...ありがとうございます」
「どういたしまして!じゃあカーテン開けちゃうね!」
(まだ心の準備が...)
何か言おうとした時には、もうすでに仕切りのカーテンが開いていた。
「...あ、いた。カムイ!どうよあたしのセンス!」
(カムイに似合わないって言われたらどうしましょう...)
ー**ー
ナタリーの大声が聞こえた方を向く。
「...!」
白いブラウスに黒いリボン、水色のスカートといった格好だった。
茶色のコートも持っている。
「カムイ、変でしょうか...?」
「メル、可愛い」
「え?」
「可愛いよ」
(本当に可愛い...)
お世辞ではなく、本当に心の底から可愛いと思った。
「タグは切ってあるの?」
「あたしが切ったわ。ついでにネグリジェもタダでつけておいてあげる」
「...いくら?」
「これくらい!」
他にも何着か買ったので、それなりの値段だった。
しかし、とても安く感じた。
「メル、カムイ、今度はベンがいるときにまた遊びにきてね!」
「ありがとうございました!」
メルの笑顔はいつもよりも輝いていた。
ー*ー
「ねえ、メル。片眼で歩くのはなれてる?」
唐突な質問に私は戸惑った。
「え、あ、はい。普段はいつも左目を隠して歩いていたので...」
「じゃあこれ、出掛けるときはこれをつけて。そうすれば、帽子を被らずに済むから」
渡されたのは、布とゴムが合体したようなもの。
「あの、これは...」
「そこの椅子に座って」
私が座ると、カムイがしゃがみこんで...顔が近くなる。
「眼帯っていうんだ。これはね、こうやって使うんだ」
丁寧に私の顔につけてくれる。
頬にカムイの手があたるたび、心臓が壊れそうなほど胸が熱くなった。
「よし終わり。これで帽子が脱げるでしょう?」
「ありがとうございます...」
(この感情はなんでしょうか)
そんなことを考えていると、カムイが口を開く。
「ただし、家では外してね。目が痛むし、何より...俺が独り占めしていたい」
「...?はい、分かりました!」
(独り占め?)
「今日はもう帰ろうか」
「はい!」
「メル、この手を離さないでね」
「分かりました」
差し出された手をそっと握ると、カムイが強く握ってくれた。
なんだか恥ずかしかったが、どこか懐かしかった。
私はカムイがいないので、とても不安に思っていた。
「メル!こういうのはどうかな?ワンピースはこれで...」
(一生懸命選んでくれてる...)
ナタリーさんはなんていい人なのだろうか。
私のために何かをしてくれる人。
おばあさまがいなくなってからというもの、そんな人はいなかった。
「可愛い、です...」
「...?どうしたのメル?」
「なんでも、ありません」
「...なんでもないって顔じゃないんだけど」
ナタリーさんは私の手をとり、そっと握ってくれる。
「ゆっくり、自分が好きなものを選んだらいいよ。時間はまだまだあるから...ね?」
「ごめんなさい、ごめ...」
私はこみあげてくるものを堪えきれず、気づいたときには滴が頬を伝っていた。
「メル⁉ごめんね、あたし、突っ走って嫌なことしたかな?あーどうしよう、またやっちゃった!」
「違うんです、ごめんなさい...」
(どうしてこんなにも、優しくしてくれるのでしょう?)
私はナタリーさんを困らせてしまったと深く後悔した。
ー**ー
女性は服選びに時間がかかるというが、さすがに遅すぎる。
店の奥の方へ入ってみると、何か焦っているナタリーの声が聞こえた。
「あー、泣かないで、じゃなくて、そのっ」
(...そういうことか)
「どうしたのかな、お姫様」
「カムイ...?」
メルの顔を覗きこむと、潤んだ瞳で俺を見つめてきた。
身を焦がすような感覚に陥る。
(またこの感覚だ...)
俺はそんなことを考えている場合ではないと思い直し、ナタリーに尋ねる。
「メルが嫌がるようなことをしたのかな?」
「分からないの、でも多分...」
「違うんです、違っ、違っ...」
過呼吸をおこしかけているのだと見た瞬間に分かった。
「メル、息を吸って...吐いて...ゆっくりでいいから繰り返して」
彼女が落ち着くようにと背中をさすってやる。
しばらくそうしていると、メルの顔色はすっかりよくなっていた。
「ありがとうございます、カムイ。ナタリーさん、ごめんなさい...」
「いやいや、あたしが悪かったんだよね?遠慮せずに言って?」
ナタリーは客商売が長いからか、そういうことには敏感だ。
「俺も聞きたい。メル、ゆっくりでいいから話してごらん?誰もきみを責めたりしないから」
(きみの不安を取り除きたい)
しばらく沈黙が流れて、メルが口を開いた。
「ナタリーさんが、優しくしてくださったから、感極まってしまって...」
「ええ⁉あたしは普通の事しかしてないよ⁉」
きっとメルは辛い思いをしてきたせいで、メルにとっての『普通』は...他の人のものとはかなりかけ離れているのだろう。
「ナタリー、色々事情があるんだ」
「そうなの...。ねえメル。もし嫌じゃなければ、さっき選んだ服、着てくれる?」
「はい!」
メルはぱあっと明るくなった。
「それじゃあ...はい、男は出ていく!」
「え、あ、」
俺はとっとと追い出されてしまった。
(なんなんだ、ナタリーの奴。...まあいいか)
メルの事ばかり気になってしまう。
...この気持ちは、なんなんだろうか。
ー*ー
「はい、できた!帽子は...」
「ごめんなさい、これは脱ぎたくなくて...」
ナタリーさんに、嫌われたくない。
その思いが強くなり、つい強めに言ってしまう。
「あ、ごめんなさい!その...」
「何か理由があるんだね。よし、分かった!じゃあ帽子はそのまま、ただし...この髪飾り、あげる!友だちになった記念に」
それは、透き通った水色の花の形をしたヘアピンだった。
「そんな、こんな綺麗なものを...」
「いいからもらって?」
「えっと、じゃあ...ありがとうございます」
「どういたしまして!じゃあカーテン開けちゃうね!」
(まだ心の準備が...)
何か言おうとした時には、もうすでに仕切りのカーテンが開いていた。
「...あ、いた。カムイ!どうよあたしのセンス!」
(カムイに似合わないって言われたらどうしましょう...)
ー**ー
ナタリーの大声が聞こえた方を向く。
「...!」
白いブラウスに黒いリボン、水色のスカートといった格好だった。
茶色のコートも持っている。
「カムイ、変でしょうか...?」
「メル、可愛い」
「え?」
「可愛いよ」
(本当に可愛い...)
お世辞ではなく、本当に心の底から可愛いと思った。
「タグは切ってあるの?」
「あたしが切ったわ。ついでにネグリジェもタダでつけておいてあげる」
「...いくら?」
「これくらい!」
他にも何着か買ったので、それなりの値段だった。
しかし、とても安く感じた。
「メル、カムイ、今度はベンがいるときにまた遊びにきてね!」
「ありがとうございました!」
メルの笑顔はいつもよりも輝いていた。
ー*ー
「ねえ、メル。片眼で歩くのはなれてる?」
唐突な質問に私は戸惑った。
「え、あ、はい。普段はいつも左目を隠して歩いていたので...」
「じゃあこれ、出掛けるときはこれをつけて。そうすれば、帽子を被らずに済むから」
渡されたのは、布とゴムが合体したようなもの。
「あの、これは...」
「そこの椅子に座って」
私が座ると、カムイがしゃがみこんで...顔が近くなる。
「眼帯っていうんだ。これはね、こうやって使うんだ」
丁寧に私の顔につけてくれる。
頬にカムイの手があたるたび、心臓が壊れそうなほど胸が熱くなった。
「よし終わり。これで帽子が脱げるでしょう?」
「ありがとうございます...」
(この感情はなんでしょうか)
そんなことを考えていると、カムイが口を開く。
「ただし、家では外してね。目が痛むし、何より...俺が独り占めしていたい」
「...?はい、分かりました!」
(独り占め?)
「今日はもう帰ろうか」
「はい!」
「メル、この手を離さないでね」
「分かりました」
差し出された手をそっと握ると、カムイが強く握ってくれた。
なんだか恥ずかしかったが、どこか懐かしかった。
0
あなたにおすすめの小説
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる