路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when Christmas comes.

第6話

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ー*ー
ようやく家にたどり着いたとき、カムイが私を抱きしめた。
「あの、カムイ...?」
「ごめん、元気の補充」
(様子が変です...)
「カムイ、もしかして怪我をなさったのですか⁉」
「え?...怪我してるのは、メルじゃないか」
そう言われてはじめて気づいた。
...乱暴に掴まれた右手首が紫色になっていることに。
「ごめんね、守れなくて...。すぐに家で手当てするから。こっちだよ」
「カムイ、これくらい大丈夫ですから!」
「ダメだよ、女の子なんだから。痕になったら大変でしょ?」
(男の人でも大変だと思うのですが...)
「ひゃっ...」
手首に冷たいものが貼られ、包帯が巻かれていく。
「ごめんね、冷たかった?」
「いえ、大丈夫です!カムイは手当てが上手ですね。やっぱりお医者さんだからですか?」
「うん。それもあるね。...おなかすいた」
「私、何か作ります!えっと、キッチンは...」
カムイが優しく手を握ってくれる。
(カムイはどうして私に優しくしてくださるのでしょう?)
「ありがとうございます」
私はカムイに導かれるまま、キッチンに向かった。
ー**ー
俺は彼女に甘えてしまった。
(また守れなかった...くそっ)
それよりも俺が今気になっているのはただ一つだ。
「できました」
メルが作ってくれたのは、焦げ目が綺麗についたマカロニグラタンだった。
「美味しそうだね」
「ありがとうございます!」
こうして誰かとご飯を食べるのはいつ以来だろうか。
「早速いただきます」
「い、いただきます...」
(...美味しい)
「すごいね、すごく美味しいよ!」
「よかったです...」
(ん?言ってはいけないことを言ったか?)
「メル?大丈夫?」
メルはしばらく戸惑った様子だったが、口を開いた。
「私、久しぶりなんです」
「え?」
「誰かとこうして温かいご飯を食べるのは、久しぶりなんです...」
少し泣きそうな顔でメルは真っ直ぐ俺を見つめる。
(同じことを思ってたのか)
「実は俺もなんだ」
「...?何がですか?」
「誰かとご飯を食べるのが、だよ。ご飯は二人で食べると美味しい。みんなで食べると、もっと美味しいんだ」
少なくとも、俺はそう信じている。
独りで食べると味気ないと思っていた。
それが今、メルがいるだけでこんなにも美味しく感じる。
「ゆっくり食べよう」
「はい!...くしゅっ」
メルが可愛らしいくしゃみをして気づく。
(しまった、暖炉の用意をしていなかった)
「ちょっと待っててね」
「あ、それ...」
メルから買ったマッチ。
それを使って暖炉に光を灯す。
「わあ...綺麗です」
「メルが必死に売っていたから、その分輝いているんだと思うよ」
「そうでしょうか...?」
「うん」
メルは嬉しそうにしている。
(よかった、元気になったみたいだ)
ー*ー
カムイは、人を喜ばせる天才だと思う。
「ちゃんと約束を守ってくれたんだね」
「あ、はい!」
『家にいる時は眼帯をはずす』。私は料理前にはずしたのだ。
「ありがとう」
頭をよしよしと撫でられる。
高鳴る鼓動を抑えられない。
(どうしてこんなに体が熱くなるのでしょう?)
「あのさ、メル」
一呼吸おいて、カムイが言いにくそうにしている。
「なんでしょうか?」
「メルはさっきのごろつきたちと知り合いなの?」
ガタン、とテーブルを揺らしてしまった。
「ごめん、言いたくなかったら言わなくていいんだ。でも、メルに何かあったら嫌だと思って...」
「あの人たちは、私に何かをしようとしたんです」
「何か?」
「分かりません。服を脱がされました。色々なところを触られました。たくさん、人がいました。なんとか逃げましたが、いつもマッチを売っていたために、『マッチ売りの少女』と名付けられ、あの人たちに追われる身になりました...。だからマッチを売る場所を、いつも変えなくてはならなくなりました」
思い出すと嫌なことばかりだ。
でも、カムイになら話してもいいと思った。
...たとえこれで追い出されても、後悔はない。
(カムイは私が作ったものを、美味しいと言ってくれました。だからそれで充分です)
「...すいません、こんなこと言われても困りますよね?出ていきますから、」
カムイはテーブルを飛び越え、私の身体を抱きしめた。
「俺は困らないよ。メルが言いづらいことだっただろうに、話してくれて嬉しかった。ありがとう」
「カムイっ」
私はその安心できる胸の中で泣いてしまった。
(また困らせてしまいます...)
ー**ー
また泣かせてしまった。
こういうとき、俺はどうすればいいのか分からなくなる。
(俺のやり方でやるしかない)
「俺は...メルがいてくれてよかったと思ってるよ。大丈夫だよ、もう一人にしたりしないから。怖いものからは俺が守るから。だから...俺の側から離れないでよ」
「カムイ...ありがとう、ございます」
俺はこんなかっこ悪いことしか言えないけれど、メルを守りたいと思った。
メルの側にいたいとも。
「ありがとうございます...」
メルの頭を撫で続けていると、彼女の身体から力が抜けた。
「メル?」
「すぅ...」
(なんでこんなに可愛いんだ)
今はまだこの家に一つしかないベッドまで、メルを横抱きにして運んだ。
「...いい夢を」
俺は隣のソファに横になり、そのまま眠りについた。
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