路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when I get engaged. -Of light, ahead of it...-

第63話

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ー*ー
「『呪いの悪夢』さんですか?」
カムイはゆっくりと頷く。
「両親を殺した、殺人鬼だよ。エリックから死体が見つかったって聞いてたから、油断してた」
「そうなんですか⁉」
カムイの話によると、『呪いの悪夢』はもうすでに死体があがっていたそうだ。
しかしその死体は左手首が綺麗な状態で、残りの部分は焼けていたらしい。
「あの、左手首だけを切って逃げた、ということでしょうか?」
「多分そうだと思う」
何故そんなことができるのだろうか。
そこまで聞いて、私はカムイに取り敢えずそのまま待っていてほしいと告げた。
(一番辛いのはカムイです。だから...)
「カムイ、取り敢えず朝食にしましょう。ご飯を食べたら、きっと元気が出ますから!」
カムイは少し動きを止めたあと、おもいきり笑っていた。
「ありがとう、メル」
(やっと笑ってくれました)
ー**ー
マフィアの端くれであるあの男。
もう死んだのだと思うと安心できたのに。
何故今になって俺にかまうのだろうか。
「カムイ...?」
メルが心配そうにこちらを見ている。
「ごめん、なんでもない」
メルが俺の頬にそっと手を添える。
「...!」
「難しいお顔をしなくても、きっと大丈夫です。私もお手伝いしますから...」
「嫌だ」
「え?」
「メルに手伝わせるなんてできない」
あんなグロテスクなものを見たり、嫌な思いをするのは俺だけでいい。
エリックにもこの件をおりてもらって...
「ダメです」
「...」
「またカムイは一人でやろうとしてます。そんなの絶対にダメです」
「メルが傷つくのは嫌なんだ」
「私はカムイと一緒なら、何も怖くありません。だから...」
「分かった。その代わり、メルが嫌だと思ったらすぐにやめて。それは約束して」
「分かりました」
メルは強く決意したように頷く。
メルとできるだけ安全に暮らしたい。
しかし、あの男との決着はつけなければならないようだ。
(今度こそ...終わりにする!)
ー*ー
決まった回数、扉の方から音がする。
「死体をもってきた」
「お疲れ様。ところで、身元不明の死体って、ある?」
「そう言うと思って、十五人分運んできた」
「恩に着るよ」
私はその数を聞いただけで、少しふらふらした。
身元不明ということは、事件扱いにさえならなかったということを指し示すからだ。
路地裏では、そういう死体も少なからず見てきた。
布を被せられたもの、焼け爛れたもの、バラバラの骨...カムイと暮らす前のことを少し思い出しただけで、相当のものがイメージできた。
「エリックさんもコーヒー如何ですか?」
「ああ、もらおう」
私はエリックさんとカムイ、それに自分の分も淹れてトレーにのせる。
「お待たせしました」
我ながら、また一段階淹れるのが上手くなったような気がする。
「では、俺は仕事に戻る」
エリックさんはコーヒーを一気に飲んだあと、足早に行ってしまった。
「カムイ、死体を見てもいいですか?」
ー**ー
いきなりの申し出に、俺はアールグレイをふきそうになる。
「本当に平気?」
「はい!路地裏でいつも見ていましたから...」
俺はその一言で、メルの暮らしがどれだけ大変だったのかを思いおこす。
(死体を普通に見ていた生活、か...)
「俺も行くから少し待って?」
「はい」
俺は急いで準備をする。
メルに手袋を渡すと、俺は早速一つ目の死体を調べる。
「彼は焼死か」
「この人はナイフで刺されてます」
メルは別の袋の死体を見ている。
「これは...うわっ」
ボロボロと骨が落ちる。
「あー...」
俺がぼやいていると、メルが何かに気づいたようにいう。
「この人たち、夫婦なんでしょうか?」
ー*ー
「え?」
「だってこの骨、二人分ですよ?」
私は見た瞬間に分かってしまった。
(でも、二人分の死体を一緒の袋には入れないはず...)
「メル、並べてみてもらってもいいかな?」
「はい!」
私はいそいそと並べる。
急ぐけれど、正確に。
「できました!」
その骨は、頭の骨と脊髄・右の手足の骨と、左の手足の骨に分かれていた。
「この左手足の骨は、この人には細すぎます」
「たしかに、これはどう見ても別人のものだね」
カムイが何かを考えこむようにしている。
「今日はここまでにしようか」
「はい!」
ー**ー
あの二つの骨が意味するものはなんなのか...。
「カムイ、また難しいお顔になってます」
「ごめん」
今は折角メルと二人で出掛けているのだ。
死体のことは取り敢えずおいておこう。
「メル、今日は何が食べたい?」
「カムイは何か食べたいものはないんですか?」
(俺が、食べたいもの...)
疲れたとき、落ちこんだとき。
いつも食べていたそれを思い浮かべた。
「じゃあせーので言おう。せーの...」
「「ハンバーグ」です」
「「あ...」」
二人で声が揃ったので、俺たちはしばらく顔を見あわせて笑った。
「今日はそんな気分だったんです」
「そっか。俺もそういう気分だったんだ」
にこにこしているメルを見て、俺も幸せな気持ちになる。
帰り道、俺たちのあしどりは軽やかになっていた。
(さて、今日はデミグラスソースでメルのは星の形にしようかな)
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