泣けない、泣かない。

黒蝶

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泣けないver.

私にとっての正義の味方

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「ごめんなさい、あんまり眠れなくて...」
『駄目だよ、ちゃんと寝ないと。...っていうのは建前で、本当はすごく嬉しい!』
「そう言ってもらえるとすごく嬉しいな...。ねえ、今日はどんなことをして過ごしたの?」
『今日?今日はね...』
こうして話しているだけで忘れられる。
嫌なことも、明日からのことも...何もかも。
少しぼうっとしてしまったからか、優翔の話し声が止まった。
「優翔?」
『ねえ、何かあった?』
やっぱり優翔は鋭い。
「ううん、なんでもない」
『...本当になんでもない人は、そんなふうに泣きそうな顔はしないと思うよ』
完全に無意識だった。
頑張って繕っていたはずなのに、それができなくなってしまっている。
どうやって言い訳しようか迷っていると、優翔は優しい言葉を紡いでくれた。
『言いたくないなら無理矢理話を聞いたりはしない。
だけど、もしそれが1人では解決できないことなら...ちゃんと話してほしいんだ』
私の視界にはあのノートが入っている。
けれど、本当に優翔に見せてしまってもいいのだろうか。
『お願い、独りで抱えこまないで』
「...!」
優翔の言葉は不思議だ。
いつだって私を暗い闇から救いあげてくれる。
誰に助けを求めても無駄だと思っていた。
今さらそんなことをしてどうなるんだと思っていたはずなのに...。
この世界はいつだって残酷で、神様なんてきっといない。
けれど、私にとって1番それに近いのは...優翔だ。
「...ノートが」
『ノートって、あのお気に入りの?』
「今日、昨日?に確認したらこうなってたの」
マジックで書かれた言葉が、ナイフのように突き刺さる。
(やっぱり困らせちゃったかな?)
画面の向こうを確認すると、優翔は哀しんでくれているようだった。
『酷い、どうしてこんなことを...。それに、いつやったんだろうね。
それにそのノートには、詩音の夢が詰まってるのに...』
「...夢が、詰まったノート」
私のノートをそんなふうに言ってもらえるのは本当に嬉しい。
実はこのノートはかなり古いもので...小さい頃から頁を継ぎ足して使っている。
そして中身は、私にとっての未来への切符が入っているのだ。
「覚えててくれたの?」
『覚えてるよ、詩音と話したことなら忘れるはずがない。
お母さんと一緒に考えた歌詞も入ってるんだよね?』
「...うん」
泣いてはいけないと思うのに、涙を止められない。
私にとってこのノートは母との数少ない想い出の品で、今でも使っているものだ。
初めて頁を捲ったとき、書かれていた言葉を思い出す。
【詩音ならきっと歌手になれる。お母さん、応援してるからね】
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