泣けない、泣かない。

黒蝶

文字の大きさ
82 / 156
泣かないver.

体調不良 久遠side

しおりを挟む
「これから休みに入るけど、夜遊びとかしないように」
それは軽い終業式のようなもので...よくよく考えてみるとテストが1度もなかった。
「大翔、テストってまだなの...?」
「ごめん、ちゃんと説明してなかったな。通信制は2学期制だから、テストは2月。正月休みがあるからその間に勉強しておけば余裕で間に合う。
...俺は教科が多いから、だいぶ前からやらないと間に合わなくなるけどな」
苦笑しながらも大翔はとても楽しそうだ。
「今日も一緒に帰ろう。...すぐ終わらせてくるから」
「駅で待っててもいい?ここにいたら邪魔になっちゃうから」
「邪魔とは思わないけど...分かった、風邪引かないようにな」
私が頷くと、生徒会長としての仕事をこなす為に大翔はどこかへ行ってしまった。
外は真っ白な雪景色...そんななかでも街は色々な音でいっぱいになっている。
(駄目だ、吐きそう...)
「久遠」
「大翔...?」
「遅くなってごめん。丁度電車きたけど乗れそうか?」
「...うん」
ふたり並んで座っていると、真剣な眼差しが向けられる。
「早速で申し訳ないんだけど...ちょっと手伝ってほしい」
「私でよければ」
今すぐ何かするのかと思っていると、大翔はどこかへと向かって歩き出す。
...私の手を繋いだまま。
「待って...」
「...もうちょっとこっち」
もう訳も分からないまま大翔に近づくと、ぐいっと腰をひかれて横抱きにされる。
「舌、噛まないように気をつけろ」
「ありがたいけど、恥ずかしいよ...」
「ふらふらなのを放っておけるはずないだろ」
やっぱり彼は優しくて、周りをよく見ていて...そんな彼が好きで堪らない。
「ごめん」
「謝る必要なんてない」
「それじゃあ...ありがとう」
「恥ずかしいならこれ被ってて。...その方が温かいと思うから」
ブランケットのようなものでぐるぐるにされて、だんだん眠くなってしまう。
本当はもっと話したいことがあるのに、結局眠気に勝てなかった。
「久遠、起きられるか?」
「ごめん、私...」
「無理しなくていい。まだちょっと怠いんだろ?」
力なく頷くと、ぎゅっと体を抱きしめられる。「大翔...?」
「本当にごめん」
私を待たせてしまったからと、大翔はだいぶ傷ついているように見える。
そんな彼に私ができることは少ないけれど、不安を打ち消したかった。
「私は大丈夫だから...そういえば、何かすることがあるんじゃなかったっけ?」
すっかり忘れていたという表情をしながら、優しく頭を撫でてくれる。
「その話はまた後で。今はもうちょっと寝てろ」
「...うん」
なんだかいつもと天井が違う気がするのは気のせいだろうか。
気になってはいたけれど、結局また疲労や体調不良に負けて瞼をおろしてしまう。
...頼ってもらえたのがとても嬉しかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...