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泣けないver.
その後の話
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それから休学時期が終わるのなんてあっという間だった。
必要な書類は全部届いて、あとは試験を受けるだけ。
(でも、面接って何をどこまで話せばいいんだろう)
そうこうしているうちに、郵便受けに何かが投函される。
「...?」
ふたつの封筒からは、カウンセリング資格の合否と学校からの報告が出てきた。
【私たちで調査を進めたところ、重大ないじめがあったと】
そこまで読んで引き出しの中に仕舞う。
どんなふうに認定されたとしても、私の暮らしが変わるわけではない。
困りごとなんて沢山あるけれど、それは全部胸に仕舞っておこう。
...話したところで、問題が解決する訳ではないのだから。
ぼんやりそんな冷たいことを考えていると、インターホンが元気よく弾む音がする。
『詩音、来たよ』
「こ、こんにちは。ドアは開いてるから...」
『それじゃあお邪魔します』
インターホン越しに軽く会話をして、お茶の準備をする。
半分隠れながらではあるけれど、優翔とは以前よりも人目を気にせず会えるようになった。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。...もしかして、新しい茶葉?」
「ちょっと気になって買ってみたんだけど、どうかな?」
「すごく美味しいよ」
ほっと息を吐いて、そのまま隣に座る。
資格試験を受けたことも、学校から手紙がきたことも優翔には秘密だ。
「優翔は今のお仕事、楽しい?」
「大変なことも多いけど、すごく楽しいよ」
優翔は4月から本格的に先生としてのお仕事がはじまった。
確かに忙しそうには見えるけれど、苦しそうにしている様子はない。
4月は不安そうだったのに、色々な生徒が相談に来てくれるのだと嬉しそうに話してくれた。
(楽しそうでよかった...)
「詩音はもう平気?」
「だいぶ落ち着いたよ。...ありがとう」
あのあと私は精神的なバランスを本格的に崩してしまい、そのまま心療内科への通院を続けることになった。
もう我慢しなくていいんだと思うと気が楽になるけれど、とにかく心配をかけてしまうのが嫌だ。
(でも、これで少しは手助けができるようになるのかな...)
「10月から学校生活が始まるね」
「そうなるといいんだけど...」
「大丈夫だよ。余程の素行不良じゃない限り受け入れてもらえないなんてことにはならないから」
気づいたときにはふたりの距離が零になっていて、唇が重なりあう。
これからきっと大変な戦いがはじまってしまう。
もしかするとまた挫けてしまいそうになるかもしれないけれど、このぬくもりと共に私は進んでいこう。
──いつか大切な人の隣を、胸を張って歩けるように。
必要な書類は全部届いて、あとは試験を受けるだけ。
(でも、面接って何をどこまで話せばいいんだろう)
そうこうしているうちに、郵便受けに何かが投函される。
「...?」
ふたつの封筒からは、カウンセリング資格の合否と学校からの報告が出てきた。
【私たちで調査を進めたところ、重大ないじめがあったと】
そこまで読んで引き出しの中に仕舞う。
どんなふうに認定されたとしても、私の暮らしが変わるわけではない。
困りごとなんて沢山あるけれど、それは全部胸に仕舞っておこう。
...話したところで、問題が解決する訳ではないのだから。
ぼんやりそんな冷たいことを考えていると、インターホンが元気よく弾む音がする。
『詩音、来たよ』
「こ、こんにちは。ドアは開いてるから...」
『それじゃあお邪魔します』
インターホン越しに軽く会話をして、お茶の準備をする。
半分隠れながらではあるけれど、優翔とは以前よりも人目を気にせず会えるようになった。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。...もしかして、新しい茶葉?」
「ちょっと気になって買ってみたんだけど、どうかな?」
「すごく美味しいよ」
ほっと息を吐いて、そのまま隣に座る。
資格試験を受けたことも、学校から手紙がきたことも優翔には秘密だ。
「優翔は今のお仕事、楽しい?」
「大変なことも多いけど、すごく楽しいよ」
優翔は4月から本格的に先生としてのお仕事がはじまった。
確かに忙しそうには見えるけれど、苦しそうにしている様子はない。
4月は不安そうだったのに、色々な生徒が相談に来てくれるのだと嬉しそうに話してくれた。
(楽しそうでよかった...)
「詩音はもう平気?」
「だいぶ落ち着いたよ。...ありがとう」
あのあと私は精神的なバランスを本格的に崩してしまい、そのまま心療内科への通院を続けることになった。
もう我慢しなくていいんだと思うと気が楽になるけれど、とにかく心配をかけてしまうのが嫌だ。
(でも、これで少しは手助けができるようになるのかな...)
「10月から学校生活が始まるね」
「そうなるといいんだけど...」
「大丈夫だよ。余程の素行不良じゃない限り受け入れてもらえないなんてことにはならないから」
気づいたときにはふたりの距離が零になっていて、唇が重なりあう。
これからきっと大変な戦いがはじまってしまう。
もしかするとまた挫けてしまいそうになるかもしれないけれど、このぬくもりと共に私は進んでいこう。
──いつか大切な人の隣を、胸を張って歩けるように。
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