裏世界の蕀姫

黒蝶

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夏彦ルート

第33話

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私が知らない夏彦の声がする。
彼で間違いないはずなのに、凄まじい怒りを1番に感じてしまうからか少しだけ体が震えそうになった。
「…ソルト、もう少しだから」
小声で言葉をかけるものの、それはとてもか細いものになってしまった。
相手に気づかれないという意味ではいいのかもしれないけれど、逆にソルトを不安にさせてしまったかもしれない。
「人を傷つけるってことは、同じくらい傷つけられる覚悟ができてるってことだよね?…そうじゃないなら、こんな人でなし同然の行為ができるはずないもんね?
あんたたちがハサミで滅茶苦茶にした服には、それを生地から組み立てた人やデザインした人…それから、売り子の思いが詰まってる。君たちはそれを壊したんだよ」
夏彦が怒っているのは、強盗する為にお店を襲ったことじゃない。
お店の商品を…人の心がこもったものを踏みにじって破壊したから怒っているんだ。
「洋服ごときで、何が変わるっていうんだよ!」
音しか聞こえてこないけれど、金属がぶつかったのは理解した。
……多分、鋏の音だ。
「今の言葉、取り消してくれる?…じゃないと、次は本気でその腕を切り落としちゃいそうだから」
「ひっ…!」
彼は本気だ。今不審者たちが少しでも変な動きをしたら、確実に深い傷を作ることになる。
そんなことをしてほしくない。それなら、ここからできることをしよう。
そのとき、ソルトが足元にあった何かにぶつかってしまった。
「…おい。このロッカーには何が入ってる?」
勝ち誇ったような声に、夏彦の憎しみと怒り…沢山の感情を一気に読み取りすぎたせいか、少しずつ視界がぐらついてくる。
不審者たちに見つかったらどうなるんだろう。
あの人たちみたいに暴力をふるうかもしれない。
目を閉じた瞬間、聞いたことがないような大きい音がした。
「動かないで!全員伏せなさい!」
「なんで、警察がここに、」
「いいから伏せなさい!」
威嚇射撃、というものだろうか。
1度だけぱん、と乾いた音がして、誰かがロッカーの前に座りこんだらしい音も聞こえた。
「わ、分かった、降参する…」
──嘘だ。
直感としか言いようがないけれど、先程から扉の近くで何かを削るような音がしている。
蕀さんたちに細かい指示を出しながら、遠隔で動かしてみることにした。
できるかどうかではなく、やれるかどうかで試してみたい。
「…無理だよ。その人たち、反省って言葉を知らないみたいだから」
僅かに開いている隙間から外の様子を窺おうとすると、勢いよくこちらに何かが飛んできた。
…それは間違いなく人の体だろう。
「反省する気がないなら、もうちょっと俺と遊ぶ?」
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