49 / 385
春人ルート
第35話
しおりを挟む
「……」
今はただ、目の前のことに集中したい。
鍋で具材を煮こみながら、少し離れた場所で溜まっていた洗い物をする。
ちゃんと汚れを落とさないと、もし食べるときに汚れていたら大変なことになってしまう。
それに、怒鳴られてしまうかもしれない。
…あの人たちはいないのに、そんなことばかりを考えてしまう。
「お待たせ。あとは体を乾かせば綺麗になると思う」
「お風呂、本当に入れるんですね…」
「ただ、洋服と同じで洗い方には気をつけないといけないんだ。
材質によっては、繊維が傷んで毛並みが戻らなくなるから」
春人は夜風がふく外にふたりを座らせて、じっと私の方を見つめる。
「何か手伝えることはない?今日も夜中に出掛けないといけないんだけど、その前にできることがあるならやっておきたいんだ。
いつも任せっきりだし、夜にひとりでいるのは不安なんじゃないかって思ったんだけど…」
怖くないと言えば嘘になる。
ただ、そんなことを話したらきっと春人を困らせてしまうだろう。
「だ、大丈夫です」
「俺相手にそんなふうに強がらなくてもいい」
すぐに見破られてしまった。
どうして私が考えていることがずばずばと当てられてしまうのだろう。
「君は嘘を吐くのが下手だから信頼できる」
「え…?」
「俺に迷惑をかけないようにとか考えてくれたんだろうけど、そんなことは気にしなくていい。
あと、嘘を吐けないってことは正直者ってことだから…身勝手かもしれないけど、そのままでいてほしい」
瞬間、心臓が速く動き出す。
まるで機械が動きはじめたようにばくばくと音をたてている。
今までこんなふうになったことはなかった。
それは病気?それとも、知らない感情?
「……月見?」
「ごめんなさい、えっと、その、頑張ります…?」
「やっぱり君のそういう素直なところ、いいと思う」
こんなふうに褒められたことなんてなかった。
頭を撫でられると、かちかちと時計を刻むような音が体中から鳴り響く。
それからどうやって食事を仕上げて食べたのか、全く覚えていない。
「それじゃあ行ってきます」
「い、いってらっしゃい…」
ぱたんと扉が閉まって、途端に寂しさがこみあげてくる。
本当はついていってみたい、一緒にいさせてほしい、少しでも話ができたら…そんなことを考えてしまう。
「…勉強しよう」
ここには読んだことがない本が沢山あって、好きなものを読んでいいと許可をもらっている。
どれにしようか迷っていると、1冊の小さい本を見つけた。
手に取ってみると、タイトルが手書きで大きく書かれている。
──【伝説の便利屋事件に関する独自調査報告書】
今はただ、目の前のことに集中したい。
鍋で具材を煮こみながら、少し離れた場所で溜まっていた洗い物をする。
ちゃんと汚れを落とさないと、もし食べるときに汚れていたら大変なことになってしまう。
それに、怒鳴られてしまうかもしれない。
…あの人たちはいないのに、そんなことばかりを考えてしまう。
「お待たせ。あとは体を乾かせば綺麗になると思う」
「お風呂、本当に入れるんですね…」
「ただ、洋服と同じで洗い方には気をつけないといけないんだ。
材質によっては、繊維が傷んで毛並みが戻らなくなるから」
春人は夜風がふく外にふたりを座らせて、じっと私の方を見つめる。
「何か手伝えることはない?今日も夜中に出掛けないといけないんだけど、その前にできることがあるならやっておきたいんだ。
いつも任せっきりだし、夜にひとりでいるのは不安なんじゃないかって思ったんだけど…」
怖くないと言えば嘘になる。
ただ、そんなことを話したらきっと春人を困らせてしまうだろう。
「だ、大丈夫です」
「俺相手にそんなふうに強がらなくてもいい」
すぐに見破られてしまった。
どうして私が考えていることがずばずばと当てられてしまうのだろう。
「君は嘘を吐くのが下手だから信頼できる」
「え…?」
「俺に迷惑をかけないようにとか考えてくれたんだろうけど、そんなことは気にしなくていい。
あと、嘘を吐けないってことは正直者ってことだから…身勝手かもしれないけど、そのままでいてほしい」
瞬間、心臓が速く動き出す。
まるで機械が動きはじめたようにばくばくと音をたてている。
今までこんなふうになったことはなかった。
それは病気?それとも、知らない感情?
「……月見?」
「ごめんなさい、えっと、その、頑張ります…?」
「やっぱり君のそういう素直なところ、いいと思う」
こんなふうに褒められたことなんてなかった。
頭を撫でられると、かちかちと時計を刻むような音が体中から鳴り響く。
それからどうやって食事を仕上げて食べたのか、全く覚えていない。
「それじゃあ行ってきます」
「い、いってらっしゃい…」
ぱたんと扉が閉まって、途端に寂しさがこみあげてくる。
本当はついていってみたい、一緒にいさせてほしい、少しでも話ができたら…そんなことを考えてしまう。
「…勉強しよう」
ここには読んだことがない本が沢山あって、好きなものを読んでいいと許可をもらっている。
どれにしようか迷っていると、1冊の小さい本を見つけた。
手に取ってみると、タイトルが手書きで大きく書かれている。
──【伝説の便利屋事件に関する独自調査報告書】
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる