裏世界の蕀姫

黒蝶

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夏彦ルート

第54話

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「…うん、すごく可愛い」
秋らしい服を新調したから着てほしい、売るかどうかも兼ねて決めるから…そんな言葉を嬉しく思いながら、真新しい服に袖を通した。
「本当に、変ではありませんか?」
「全然!やっぱりぴったりだったね」
「えっと、その…もしかして、私に合わせて作ってくれたんですか?」
「さあ、どうかな」
…誤魔化しているけれど、それが彼の優しさだと知っている。
「ありがとうございます」
「お礼を言われるようなことはしてないよ」
夏彦はただ笑っていて、そんな彼の様子に少し安心する。
「月見ちゃんにファッションショーに出てもらうわけにはいかないし、日頃のお礼ってことでそれはもらって」
「やっぱり、サンプルじゃなかったんですか?」
「ううん。そのつもりだったけど気が変わったんだ」
口角が片方しか上がっていない…やっぱり最初から私が着られるように作ってくれたものなんだ。
「あの…これなら、身につけられますか?」
布の切れ端で作ったもので申し訳なかったけれど、すぐに渡せるものがそれしかなかった。
「ちっちゃいネクタイ?こういうの、ペンにつけたらおしゃれかも!ありがとう」
「次はもっと上手く作れるように頑張ります」
「俺はこれで充分なんだけどな…」
部屋の扉を閉めたまま、何を話すわけでもなく視線が交わる。
どんな反応をしたらいいのか分からないことが多いけれど、自分が作ったもので喜んでもらえるのは嬉しい。
「次は、どんなものを作ったらいいでしょうか?」
「そろそろまた花菜が頼みにくるんじゃないかな?きっと月見ちゃんに作ってほしいって言うと思うよ」
花菜にも喜んでほしいけれど、夏彦の笑顔が見たい。
…最近の私はちょっと変な気がする。
胸がどきどきするものは何だろう。
この感情をどう言葉にするのがいいのか分からない。
「ソルト、どうかしたの?」
毛を逆立てて怒っているソルトの視線の先を見ると、この前の男性が立っている。
「…もう来ないと思っていたのに」
夏彦の目には諦めと殺意が浮かんでいて、とにかく止めたいと思った。
「あの、これからファッションショー?の練習をするのはどうでしょうか?」
「え、この状況で?」
「あんまり人に見つかりたくないなら、他の人たちが沢山いれば入ってこられないんじゃないかなって…単純、でしょうか?」
「いや、そんなことないよ。ありがとう、早速やってみるね!
俺はあいつら相手に視野が狭くなりがちだから…本当にごめん」
「謝られるようなことは、何もされてないです。私も小物、沢山作りますね」
夏彦が部屋から出るのを確認してから、小さめの窓を開ける。
それからすぐグローブをはずして、いつものように呟いた。
「──お願い、蕀さんたち」
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