71 / 385
春人ルート
第54.5話
しおりを挟む
月見は頭を押さえたまま、その場に倒れこむ。
意識を飛ばす前、彼女は秋久の名前を口にした。
訳が分からないまま連絡すると、何度か電話が鳴って焦った声が耳に響き渡る。
『…悪い、今ちょっと厄介事の処理中でな』
「どういうことですか?僕にできることは、」
『電話を切らないでくれ。それだけで充分だ』
「分かりました」
恐らく誰かにつきまとわれているのだろう。
それがストーカーなのか、それとも…。
どのみち、何故彼女が秋久が危険な目に遭っていると気づいたのか分からない。
彼女を部屋に寝かせ、ラビを抱えたままふと鞄に目をやると、見覚えのないストラップがついていた。
「…まさか」
頭の中でばらばらになっていた歯車が噛み合う。
彼女の手から出血していた理由、夏彦たちを送り出した後のそわそわした様子…。
もしもこのストラップを作ったのが彼女なら、全てのことに説明がつく。
『どうした?』
「どうやら鞄の中に、姫からの贈り物が入っているようですよ」
こうなってしまえばやむを得ない。
これから秋久を追っていては、きっと間に合わなくなってしまう。
説明を求められる可能性は否めないが、命を落としてしまってからでは遅いのだ。
『へえ、お嬢ちゃんからか。…可愛らしい、植物でできた…』
そこまでで言葉が途切れる。
「…秋久?」
そう話しかけると、返事の代わりに何かが伸びていく音が聞こえた。
やはり、このストラップは──
『すごい仕掛けだな。だが、おかげでなんとか撒けたようだ。
これから仕事に戻る。お嬢ちゃんによろしく伝えてくれ』
「そうでしたか。後で彼女に伝えておきますね」
こういうとき、深く訊かないでいてくれるのがリーダーの魅力と言えるだろう。
彼女が起きたか確認しに行こうとすると、扉の向こうから浅い呼吸音が聞こえた。
体調を崩しているのではないか…そう思った俺は、迷わず扉を開ける。
「はっ……は、」
「随分疲れてるみたいだね。あの仕掛けを作ったから?」
「仕掛け、って…何の、話…」
「まずは息を整えて。それから隠してる腕を見せてもらうから」
彼女のいいところは、嘘を吐くのが下手なところだ。
正直で、誰かの為に頑張れる…こんなふうに感じたことはなかったのに、心のどこかで彼女を手放したくないと思っているらしい。
…果たしてそんなことが赦されるのだろうか。
「あのキーホルダー、いつ作ったの?」
「ごめんなさい。本当になんでもなくて…」
「──月見」
呼吸が落ち着いた彼女と視線をあわせると、申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめんなさい。あんなふうに使うのは初めてだったんです。
上手くできたら危険をすぐ察知できると思って…余計なことをしました」
自らの体がどうなるかも分からないのに、それでも人の為に動いた。
その事は称賛に値するが、やはり認めることはできない。
「…君が傷つくようなやり方では意味がない。もっと他の方法を考えよう」
意識を飛ばす前、彼女は秋久の名前を口にした。
訳が分からないまま連絡すると、何度か電話が鳴って焦った声が耳に響き渡る。
『…悪い、今ちょっと厄介事の処理中でな』
「どういうことですか?僕にできることは、」
『電話を切らないでくれ。それだけで充分だ』
「分かりました」
恐らく誰かにつきまとわれているのだろう。
それがストーカーなのか、それとも…。
どのみち、何故彼女が秋久が危険な目に遭っていると気づいたのか分からない。
彼女を部屋に寝かせ、ラビを抱えたままふと鞄に目をやると、見覚えのないストラップがついていた。
「…まさか」
頭の中でばらばらになっていた歯車が噛み合う。
彼女の手から出血していた理由、夏彦たちを送り出した後のそわそわした様子…。
もしもこのストラップを作ったのが彼女なら、全てのことに説明がつく。
『どうした?』
「どうやら鞄の中に、姫からの贈り物が入っているようですよ」
こうなってしまえばやむを得ない。
これから秋久を追っていては、きっと間に合わなくなってしまう。
説明を求められる可能性は否めないが、命を落としてしまってからでは遅いのだ。
『へえ、お嬢ちゃんからか。…可愛らしい、植物でできた…』
そこまでで言葉が途切れる。
「…秋久?」
そう話しかけると、返事の代わりに何かが伸びていく音が聞こえた。
やはり、このストラップは──
『すごい仕掛けだな。だが、おかげでなんとか撒けたようだ。
これから仕事に戻る。お嬢ちゃんによろしく伝えてくれ』
「そうでしたか。後で彼女に伝えておきますね」
こういうとき、深く訊かないでいてくれるのがリーダーの魅力と言えるだろう。
彼女が起きたか確認しに行こうとすると、扉の向こうから浅い呼吸音が聞こえた。
体調を崩しているのではないか…そう思った俺は、迷わず扉を開ける。
「はっ……は、」
「随分疲れてるみたいだね。あの仕掛けを作ったから?」
「仕掛け、って…何の、話…」
「まずは息を整えて。それから隠してる腕を見せてもらうから」
彼女のいいところは、嘘を吐くのが下手なところだ。
正直で、誰かの為に頑張れる…こんなふうに感じたことはなかったのに、心のどこかで彼女を手放したくないと思っているらしい。
…果たしてそんなことが赦されるのだろうか。
「あのキーホルダー、いつ作ったの?」
「ごめんなさい。本当になんでもなくて…」
「──月見」
呼吸が落ち着いた彼女と視線をあわせると、申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめんなさい。あんなふうに使うのは初めてだったんです。
上手くできたら危険をすぐ察知できると思って…余計なことをしました」
自らの体がどうなるかも分からないのに、それでも人の為に動いた。
その事は称賛に値するが、やはり認めることはできない。
「…君が傷つくようなやり方では意味がない。もっと他の方法を考えよう」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる