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春人ルート
第70話
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ベッドに腰掛けるなり、春人は質問してきた。
「…どうしてそんな無茶をしたの?」
「春人が死んでしまうのが、嫌だったからです」
「だからって、自分を差し出したら意味がないでしょ?」
「油断はしましたが、自分を捨てたつもりなんてありません。そうじゃないなら、蕀さんにお願いなんてしなくても私が独りでつっこんでいけばいいですから」
そうだ。私はいつも自分なんかどうでもいいと思っていたはずなのに、今回は命を捨てない方法を考えていた。
つっこんでいけば早かったのにそうしなかったのだ。
「春人は、あのまま死ぬつもりだったんじゃないですか?」
「それは…」
「私は、春人がいない生活なんて嫌です。毎日あなたにおかえりなさいって伝えられて、ただいまが返ってくる生活がいいです。
それが私にとっての幸せで、もっとほしいっていつも思っているんです。…欲張りで、思っちゃいけないことなのかもしれないけど…それでも私は、春人とがいいんです」
時折言葉に詰まりながら、なんとか思っていることを伝えることができた。
怒られてしまうと思っていたのに、目の前の春人は肩を震わせている。
「…折角助かっても、それで誰かを失ったら意味がない。今回はこれのおかげで助かったけど、もうあんなことしないで」
彼が見せてくれたのは、歯車が飛び散った懐中時計だった。
「誰かひとりでもいなくなったら、俺の時間はきっと永遠に止まったままだ。
一生どこにも行けないし、もう二度とご飯が美味しいとも思えない」
あまり思っていることを話さない春人が、涙を零しながら話してくれている。
心に響いた彼の気持ちは薇みたいにくるくると回って、私の中にぐっさりとささった。
「…その時計、直るでしょうか?」
「部品はあると思うから、多分…」
「何度壊されても、ちゃんと直してみせます。それは多分、人との関係も同じです。1回壊れたらそれで終わりなんて、きっと悲しいです。
…だから私は、もっと春人のことを知りたいと思っています。そうすればきっと、ばらばらになってしまっても一緒にいられるでしょう?」
壊れていた私に生きることを教えてくれた彼に、少しでも前を向いてほしい。
なかなか口にはできないけれど、溢れそうになる涙を堪えてベッドの方に顔を向けた。
「…そうかもね。誰もが同じ歯車にはなれないけど、沢山の出会いで今ができているのかもしれない」
ばらばらになった歯車を小さなテーブルに並べて、春人は大きく息を吐く。
「大丈夫ですか…?」
「俺より君の方が重傷に見える。指、動かせないんでしょ?」
「今は無理ですけど、絶対動かせるようになってみせます」
「…その傷痕、残るのかな?」
「残るかもしれない、とは冬真さんに言われました」
水を運んでくれたとき、申し訳なさそうに告げられたその言葉に助けてくれてありがとうとかえした。
変わり者だと言われたけれど、あれはどういう意味だったんだろう。
「…本当にごめん」
「いえ、ふたりとも命があるので、私はそれでいいと思っています。ただ…もっと早く助けに行けていれば、春人にもっと怪我をさせずにすみました。
こんなに痛い思いをしていることにすぐ気づかなくて、本当にごめんなさい」
包帯だらけの手で、春人は優しく頭を撫でてくれた。
彼の黒柿色の髪が風にゆるゆると揺れて、痛々しい傷を負いながらも微笑んでいる姿に魅入ってしまう。
「君が来なかったら、俺は今ここにいない。…ありがとう、月見」
「…どうしてそんな無茶をしたの?」
「春人が死んでしまうのが、嫌だったからです」
「だからって、自分を差し出したら意味がないでしょ?」
「油断はしましたが、自分を捨てたつもりなんてありません。そうじゃないなら、蕀さんにお願いなんてしなくても私が独りでつっこんでいけばいいですから」
そうだ。私はいつも自分なんかどうでもいいと思っていたはずなのに、今回は命を捨てない方法を考えていた。
つっこんでいけば早かったのにそうしなかったのだ。
「春人は、あのまま死ぬつもりだったんじゃないですか?」
「それは…」
「私は、春人がいない生活なんて嫌です。毎日あなたにおかえりなさいって伝えられて、ただいまが返ってくる生活がいいです。
それが私にとっての幸せで、もっとほしいっていつも思っているんです。…欲張りで、思っちゃいけないことなのかもしれないけど…それでも私は、春人とがいいんです」
時折言葉に詰まりながら、なんとか思っていることを伝えることができた。
怒られてしまうと思っていたのに、目の前の春人は肩を震わせている。
「…折角助かっても、それで誰かを失ったら意味がない。今回はこれのおかげで助かったけど、もうあんなことしないで」
彼が見せてくれたのは、歯車が飛び散った懐中時計だった。
「誰かひとりでもいなくなったら、俺の時間はきっと永遠に止まったままだ。
一生どこにも行けないし、もう二度とご飯が美味しいとも思えない」
あまり思っていることを話さない春人が、涙を零しながら話してくれている。
心に響いた彼の気持ちは薇みたいにくるくると回って、私の中にぐっさりとささった。
「…その時計、直るでしょうか?」
「部品はあると思うから、多分…」
「何度壊されても、ちゃんと直してみせます。それは多分、人との関係も同じです。1回壊れたらそれで終わりなんて、きっと悲しいです。
…だから私は、もっと春人のことを知りたいと思っています。そうすればきっと、ばらばらになってしまっても一緒にいられるでしょう?」
壊れていた私に生きることを教えてくれた彼に、少しでも前を向いてほしい。
なかなか口にはできないけれど、溢れそうになる涙を堪えてベッドの方に顔を向けた。
「…そうかもね。誰もが同じ歯車にはなれないけど、沢山の出会いで今ができているのかもしれない」
ばらばらになった歯車を小さなテーブルに並べて、春人は大きく息を吐く。
「大丈夫ですか…?」
「俺より君の方が重傷に見える。指、動かせないんでしょ?」
「今は無理ですけど、絶対動かせるようになってみせます」
「…その傷痕、残るのかな?」
「残るかもしれない、とは冬真さんに言われました」
水を運んでくれたとき、申し訳なさそうに告げられたその言葉に助けてくれてありがとうとかえした。
変わり者だと言われたけれど、あれはどういう意味だったんだろう。
「…本当にごめん」
「いえ、ふたりとも命があるので、私はそれでいいと思っています。ただ…もっと早く助けに行けていれば、春人にもっと怪我をさせずにすみました。
こんなに痛い思いをしていることにすぐ気づかなくて、本当にごめんなさい」
包帯だらけの手で、春人は優しく頭を撫でてくれた。
彼の黒柿色の髪が風にゆるゆると揺れて、痛々しい傷を負いながらも微笑んでいる姿に魅入ってしまう。
「君が来なかったら、俺は今ここにいない。…ありがとう、月見」
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