89 / 385
春人ルート
第71話
しおりを挟む
名前をこんなふうに優しく呼ばれる日がくるなんて思っていなかった。
優しくて温かい、今まで知らなかった景色。
「春人」
「どうしたの?」
「…生きていてくれて、本当によかったです」
「腕が落ちかけたんだから、そこだけは気をつけて。
…なんて、俺が言っても説得力がないんだけどね」
本当に痛々しい傷を負っている春人に、どんな言葉をかけるのがいいか分からない。
ただ、生きていてくれて本当によかった。
「…腕、こっちに出してくれる?」
「は、はい」
春人よりは少し薄い包帯で覆われている腕を上にあげてみる。
ただ、やっぱり指先に力が入らない。
「指、どんな感じがする?」
「なんだか変な感じがします。春人はいつも温かいのに、今は何も感じないんです」
「…だから不安だった?」
その言葉にただ驚いてしまう。
どうして彼にはいつも分かってしまうのだろうか。
「誰だってそこまでの怪我をしたら不安になる。本当に指が動くようになるのか、誰かの体温を感じられるか…そういうことを考えずにはいられない」
まるで心の中が全部見えているみたいに、思っていることを全部言い当てられてしまう。
「しばらく不自由な生活になると思うけど、俺が側で支えるよ。だからそんなに心配しなくてもいい」
また優しく頭を撫でられてすごく緊張してしまう。
このどきどきがどうにかおさまってくれないかと考えるけれど、意識すればするほど駄目だったらしい。
「きちんとリハビリすれば絶対大丈夫。俺もできることはやる」
「あ、ありがとうございます」
春人が側にいてくれるだけで、なんだか早く動かせるようになるような気がする。
彼の言葉はいつも心に響いて本当に不思議だ。
「…ごめん、そろそろ春人さんの点滴を換える時間なんだ」
「すみませんでした。私もお部屋に戻ります」
ふたりに一礼して、そのまま部屋へ戻ることにする。
時間をかけて戻らないと転んでしまいそうで、体のバランスがなかなか上手くとれない。
5分くらいかけて部屋まで戻ると、そこにはお客様が来ていた。
「…よかった、ちゃんと会えた」
「雪乃…」
名前を呼ぶと、彼女に頭を下げられる。
「ごめんなさい。何か不穏なことがおこると分かっていたのに止められなかった。
もっと早く占っていれば、誰も怪我をしなかったかもしれないのに…」
たしかに雪乃の占いはよく当たる。
初めて占ってもらったときからずっとそうだ。
まるで、何かの能力みたいに…能力?
「月見、本当に、」
「私の怪我は誰のせいでもありません。それに、自分の心に素直に行動したおかげで春人の役に立てました。
だから…背中を押してくれてありがとうございます」
もしかすると、彼女も私と同じようなものなのだろうか。
そんなこととても訊けないけれど、もしそうなら自分を責めないでほしい。
「…よかった、私でもできることがあったなら。ふたりとも無事でいてくれてありがとう」
それから雪乃は料理を持ってきてくれた。
彼女も優しいいい人で、話しているとすごく楽しくなる。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
優しくて温かい、今まで知らなかった景色。
「春人」
「どうしたの?」
「…生きていてくれて、本当によかったです」
「腕が落ちかけたんだから、そこだけは気をつけて。
…なんて、俺が言っても説得力がないんだけどね」
本当に痛々しい傷を負っている春人に、どんな言葉をかけるのがいいか分からない。
ただ、生きていてくれて本当によかった。
「…腕、こっちに出してくれる?」
「は、はい」
春人よりは少し薄い包帯で覆われている腕を上にあげてみる。
ただ、やっぱり指先に力が入らない。
「指、どんな感じがする?」
「なんだか変な感じがします。春人はいつも温かいのに、今は何も感じないんです」
「…だから不安だった?」
その言葉にただ驚いてしまう。
どうして彼にはいつも分かってしまうのだろうか。
「誰だってそこまでの怪我をしたら不安になる。本当に指が動くようになるのか、誰かの体温を感じられるか…そういうことを考えずにはいられない」
まるで心の中が全部見えているみたいに、思っていることを全部言い当てられてしまう。
「しばらく不自由な生活になると思うけど、俺が側で支えるよ。だからそんなに心配しなくてもいい」
また優しく頭を撫でられてすごく緊張してしまう。
このどきどきがどうにかおさまってくれないかと考えるけれど、意識すればするほど駄目だったらしい。
「きちんとリハビリすれば絶対大丈夫。俺もできることはやる」
「あ、ありがとうございます」
春人が側にいてくれるだけで、なんだか早く動かせるようになるような気がする。
彼の言葉はいつも心に響いて本当に不思議だ。
「…ごめん、そろそろ春人さんの点滴を換える時間なんだ」
「すみませんでした。私もお部屋に戻ります」
ふたりに一礼して、そのまま部屋へ戻ることにする。
時間をかけて戻らないと転んでしまいそうで、体のバランスがなかなか上手くとれない。
5分くらいかけて部屋まで戻ると、そこにはお客様が来ていた。
「…よかった、ちゃんと会えた」
「雪乃…」
名前を呼ぶと、彼女に頭を下げられる。
「ごめんなさい。何か不穏なことがおこると分かっていたのに止められなかった。
もっと早く占っていれば、誰も怪我をしなかったかもしれないのに…」
たしかに雪乃の占いはよく当たる。
初めて占ってもらったときからずっとそうだ。
まるで、何かの能力みたいに…能力?
「月見、本当に、」
「私の怪我は誰のせいでもありません。それに、自分の心に素直に行動したおかげで春人の役に立てました。
だから…背中を押してくれてありがとうございます」
もしかすると、彼女も私と同じようなものなのだろうか。
そんなこととても訊けないけれど、もしそうなら自分を責めないでほしい。
「…よかった、私でもできることがあったなら。ふたりとも無事でいてくれてありがとう」
それから雪乃は料理を持ってきてくれた。
彼女も優しいいい人で、話しているとすごく楽しくなる。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる