90 / 385
春人ルート
第72話
しおりを挟む
「春人さん、そろそろ諸々の数値を測っておきたいんだけど…」
遠慮がちな冬真さんの言葉にはっとして、ついいつもどおりの勢いで立ちあがってしまう。
「私、もう……」
「平気?そんな勢いよく立ちあがったら…遅かったか」
ぴりぴりと腕が痛くて、思わずしゃがみこんでしまう。
そんな私に春人がベッドから手を差し伸べてくれる。
自分の方が酷い怪我をしていて痛いはずなのに、本当に優しいし申し訳ない。
「すみません…」
「君が謝ることじゃない。…もう少しで冬真が来てくれるはずだから、少しだけ待ってて」
「は、はい」
いつも優しく頭を撫でてくれるけれど、今日はいつも以上にゆるゆるしているような気がする。
…そういえば、事件はどうなったのだろうか。
彼に直接訊くのは躊躇われるものの、誰に質問していいかも分からない。
「…ちょっとあいつと部屋に戻ってて」
春人の声に顔をあげると、そこには夏彦さんと冬真さんが立っていた。
「何ふたりでこそこそ話してるの?お兄さん嫉妬しちゃうな…」
「えっと、」
「あんたが茶化すからこの人困ってる。部屋まで丁重に運んで。…腕が使えないって意外と体のバランス取れなくなるんだから」
「分かったよ。春人、また後で。行こうか、月見ちゃん」
「はい」
ひらひらと手をふってくれた春人に一礼して、少しずつ歩いていく。
「月見ちゃん…ありがとう」
「お礼を言われるようなことなんて、何もしてないです」
「だけど、ハルが助かったのは君がいてくれたからだよ。それに、事件だってほぼ解決できたようなものだから」
「ほぼ、ですか?」
そう尋ねると、夏彦さんはどこか遠くを見るように目を細めた。
「月見ちゃんには知る権利がある。いいよ、病室でゆっくり話そうか」
ベッドに横になった後、少しして夏彦さんが話しはじめた。
あのときの男はとある場所の下っ端だったこと、上からの命令どおり殺人を隠蔽したことを認めたこと、犯人の正体まで辿り着けたこと…。
そこまで聞いただけでもとにかく大変そうだ。
ただ、ひとつだけ疑問が残った。
「あの、その犯人さんは捕まえられないんですか?」
「捕まえようとすると、権力をふりかざして逃げるタイプなんだ。
だからもう少し証拠を固める必要がある。それに…あの男は最低だけどあの男の家族には関係ないことだから、安全な場所に逃さないといけないんだ」
色々な手順があって、夏彦さんがかなり疲れていることにも納得した。
沢山やることがあるうえに、みんな普段の生活がある。
「すみません。私にも何かできればよかったんですけど…」
「月見ちゃんは充分頑張ってるよ。誰も手出しができなかった問題にやっと手が届く状態になったし、本当に助かってる。
そういえば、アッキーが調子がいいときでいいから話を聞かせてほしいって言ってたよ」
「そうなんですね。私にできることならやります」
夏彦さんはどこかほっとした様子で笑いかけてくれる。
窓の方に目をやると、もうすぐ太陽が沈むところでなんだか神秘的な景色が見られた。
遠慮がちな冬真さんの言葉にはっとして、ついいつもどおりの勢いで立ちあがってしまう。
「私、もう……」
「平気?そんな勢いよく立ちあがったら…遅かったか」
ぴりぴりと腕が痛くて、思わずしゃがみこんでしまう。
そんな私に春人がベッドから手を差し伸べてくれる。
自分の方が酷い怪我をしていて痛いはずなのに、本当に優しいし申し訳ない。
「すみません…」
「君が謝ることじゃない。…もう少しで冬真が来てくれるはずだから、少しだけ待ってて」
「は、はい」
いつも優しく頭を撫でてくれるけれど、今日はいつも以上にゆるゆるしているような気がする。
…そういえば、事件はどうなったのだろうか。
彼に直接訊くのは躊躇われるものの、誰に質問していいかも分からない。
「…ちょっとあいつと部屋に戻ってて」
春人の声に顔をあげると、そこには夏彦さんと冬真さんが立っていた。
「何ふたりでこそこそ話してるの?お兄さん嫉妬しちゃうな…」
「えっと、」
「あんたが茶化すからこの人困ってる。部屋まで丁重に運んで。…腕が使えないって意外と体のバランス取れなくなるんだから」
「分かったよ。春人、また後で。行こうか、月見ちゃん」
「はい」
ひらひらと手をふってくれた春人に一礼して、少しずつ歩いていく。
「月見ちゃん…ありがとう」
「お礼を言われるようなことなんて、何もしてないです」
「だけど、ハルが助かったのは君がいてくれたからだよ。それに、事件だってほぼ解決できたようなものだから」
「ほぼ、ですか?」
そう尋ねると、夏彦さんはどこか遠くを見るように目を細めた。
「月見ちゃんには知る権利がある。いいよ、病室でゆっくり話そうか」
ベッドに横になった後、少しして夏彦さんが話しはじめた。
あのときの男はとある場所の下っ端だったこと、上からの命令どおり殺人を隠蔽したことを認めたこと、犯人の正体まで辿り着けたこと…。
そこまで聞いただけでもとにかく大変そうだ。
ただ、ひとつだけ疑問が残った。
「あの、その犯人さんは捕まえられないんですか?」
「捕まえようとすると、権力をふりかざして逃げるタイプなんだ。
だからもう少し証拠を固める必要がある。それに…あの男は最低だけどあの男の家族には関係ないことだから、安全な場所に逃さないといけないんだ」
色々な手順があって、夏彦さんがかなり疲れていることにも納得した。
沢山やることがあるうえに、みんな普段の生活がある。
「すみません。私にも何かできればよかったんですけど…」
「月見ちゃんは充分頑張ってるよ。誰も手出しができなかった問題にやっと手が届く状態になったし、本当に助かってる。
そういえば、アッキーが調子がいいときでいいから話を聞かせてほしいって言ってたよ」
「そうなんですね。私にできることならやります」
夏彦さんはどこかほっとした様子で笑いかけてくれる。
窓の方に目をやると、もうすぐ太陽が沈むところでなんだか神秘的な景色が見られた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる