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春人ルート
第73話
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指が動かせないということはかなり苦労することがあると分かってきた。
「あ…」
これで何度目だろう。
箸をいつもは右手で持つけれど、今は左手で動かしている。
ただ、少しでも気を抜くとすぐに食事を落としてしまう。
トレイの側のものを掴もうとするけれど、やっぱり上手くできずに里芋が転がってしまった。
「…ごめんなさい」
かなり手間をかけて作られたものなはずなのに、こんな状態になってしまうのが申し訳ない。
俯いていると、がらがらと何かを引きずるような音がして部屋の扉の前で止まる。
「…少し入ってもいい?」
「え、あ、はい」
急いで片手で落ちていたものを食器の上に並べてそう返事をする。
そこに入ってきたのは、まだ点滴を打っている春人だった。
「あんまり無理をしたら、」
「…その指じゃまともに箸が使えないだろうと思って持ってきた」
渡されたのはスプーンとフォークで、なんだか可愛らしい花の模様が描かれている。
「すみません。ありがとうございます…」
「…こういうのしか持ってなかった」
「え?」
「本当はもっと柄がついてないものの方がよかったんじゃないかと思っただけ。…こういうのでよかった?」
「はい。持ってきていただけただけでありがたいです」
春人はほっとしたように息を吐いて、どうしてか私の方をじっと見つめる。
「あの…」
「前から思っていたけど、君はもっと食べた方がいいと思う。栄養が偏ったら治るものも治らなくなる」
「それは、春人もだと思います」
「本当にそのとおりだよね!」
ふたりきりだったはずの部屋に明るい声が響き渡る。
「…夏彦」
「ごめんごめん。邪魔したら悪いとは思ったんだけど、まー君が困ってたから」
「なら病室に戻らないといけないか」
春人が動こうとした瞬間、夏彦さんは少し寂しそうに微笑んだ。
「大切なものはすぐなくなっちゃうんだから、後悔しないようにしなよ…ハル」
「それは分かってるつもり」
「というわけで、月見ちゃん、またね」
「あ、はい…」
ふたりが部屋を出たのを確認してから、部屋で少しだけ育ってしまった蕀さんの状態を確認する。
「…ベッドの下でよかった」
チェリーを見つめながら、早速用意してもらったスプーンで一口食べてみる。
時間はかかってしまうけれど、多分これなら落としてしまうことはないだろう。
「美味しい…」
誰かが作ってくれたものなんて食べたことがなかった。
このぬくもりをどう表現したらいいのか分からないけれど、とにかく心が震えている。
後で春人の部屋に行ってみよう…そんなことを考えながら、ゆっくり料理を味わった。
「あ…」
これで何度目だろう。
箸をいつもは右手で持つけれど、今は左手で動かしている。
ただ、少しでも気を抜くとすぐに食事を落としてしまう。
トレイの側のものを掴もうとするけれど、やっぱり上手くできずに里芋が転がってしまった。
「…ごめんなさい」
かなり手間をかけて作られたものなはずなのに、こんな状態になってしまうのが申し訳ない。
俯いていると、がらがらと何かを引きずるような音がして部屋の扉の前で止まる。
「…少し入ってもいい?」
「え、あ、はい」
急いで片手で落ちていたものを食器の上に並べてそう返事をする。
そこに入ってきたのは、まだ点滴を打っている春人だった。
「あんまり無理をしたら、」
「…その指じゃまともに箸が使えないだろうと思って持ってきた」
渡されたのはスプーンとフォークで、なんだか可愛らしい花の模様が描かれている。
「すみません。ありがとうございます…」
「…こういうのしか持ってなかった」
「え?」
「本当はもっと柄がついてないものの方がよかったんじゃないかと思っただけ。…こういうのでよかった?」
「はい。持ってきていただけただけでありがたいです」
春人はほっとしたように息を吐いて、どうしてか私の方をじっと見つめる。
「あの…」
「前から思っていたけど、君はもっと食べた方がいいと思う。栄養が偏ったら治るものも治らなくなる」
「それは、春人もだと思います」
「本当にそのとおりだよね!」
ふたりきりだったはずの部屋に明るい声が響き渡る。
「…夏彦」
「ごめんごめん。邪魔したら悪いとは思ったんだけど、まー君が困ってたから」
「なら病室に戻らないといけないか」
春人が動こうとした瞬間、夏彦さんは少し寂しそうに微笑んだ。
「大切なものはすぐなくなっちゃうんだから、後悔しないようにしなよ…ハル」
「それは分かってるつもり」
「というわけで、月見ちゃん、またね」
「あ、はい…」
ふたりが部屋を出たのを確認してから、部屋で少しだけ育ってしまった蕀さんの状態を確認する。
「…ベッドの下でよかった」
チェリーを見つめながら、早速用意してもらったスプーンで一口食べてみる。
時間はかかってしまうけれど、多分これなら落としてしまうことはないだろう。
「美味しい…」
誰かが作ってくれたものなんて食べたことがなかった。
このぬくもりをどう表現したらいいのか分からないけれど、とにかく心が震えている。
後で春人の部屋に行ってみよう…そんなことを考えながら、ゆっくり料理を味わった。
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