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春人ルート
第78話
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その夜、春人からテスト通信をするからよければ一緒にいてほしいと言ってもらえた。
ふたつ返事で頷いた私の前に映っているのは、外にいる夏彦さんの姿だ。
「…どんな感じ?」
『もうちょっと軽くなってくれたら、個人的には助かるかな…。ただ、声はばっちり聞こえてるから通信機器としてはちゃんと機能してる。
流石ハル、まさかこんなにすごいものを1日で作っちゃうなんてね』
「…別に」
たしかに映っている夏彦さんの表情の小さな変化ひとつまで見えていて、今隣で機械を動かしている人は本当にすごい人なんだなとしみじみ思った。
「…あの、音が途切れたりしませんか?」
『うん、全然大丈夫!やっぱりハルは偉いな…』
「そのままそこに立ってて」
『まだ何かやるの?』
「…ちょっとね」
春人は沢山の工具を見つめて、少し大きめのものを取り出す。
何をするんだろうと不思議に思っていると、ばたばたと音をたててあっという間に組み上がっていく。
「これでもう少し音が聞き取りやすくなる。あと、送受信の範囲が広がったはずだ」
『オッケー、じゃあもう少し離れてから連絡してみるよ』
夏彦さんは手をふって、一旦通信を切ることにしたようだ。
「春人は、すごいですね」
「そんなに目を輝かせても、別にいいものを持ってるわけじゃないから…」
春人が俯いたまま、なかなか目を合わせてくれない。
言ってはいけないことを言ってしまったのかもしれないと不安に思っていると、彼の耳が赤くなっていることに気づく。
「あ、あの…」
「…どうかした?」
顔をあげた春人の頬は赤くなっていて、またかたかたと歯車が動くような音をたてて鼓動が速くなる。
話そうとした瞬間、遠慮がちな声が耳に届いた。
『あの、おふたりさん…いちゃいちゃしてるところ悪いんだけど、ちゃんと聞こえてる?』
「別にいちゃいちゃとかそういうのじゃない。あと、ちゃんと聞こえてる」
『それじゃあ実験成功だ』
夏彦さんが嬉しそうにしているのが声だけで分かるから、聞いていると私も嬉しくなる。
そのとき、画面の端の方に何か黒い物体がうつった。
「…夏彦さん」
『どうかしたの?』
「後ろを振り返らずに、真っ直ぐ走ってもらえませんか?」
『…?うん、分かった』
私が不安な顔をしてしまったら、この人に不安な思いをさせてしまう。
そうならないように祈りながらどうしようか考えていると、春人に小声で訊かれた。
「…何かあったの?」
「夏彦さんのことを、誰かが追いかけているみたいなんです。さっき、画面のすみっこに黒いものが映っていたので…」
『ごめん、逃げ切れそうにない。…というわけで、このまま繋いでおくね』
「え?」
夏彦さんは後ろは振り返らないまま、手に持っていたカメラを動かして確認しているみたいだ。
…そこにあったのは、本来であれば動くはずがない小さな銅像のようなものだった。
「あれは…」
「春人、どうしたんですか?」
「すぐ秋久に連絡してほしい。今ならきっと間に合うから」
ふたつ返事で頷いた私の前に映っているのは、外にいる夏彦さんの姿だ。
「…どんな感じ?」
『もうちょっと軽くなってくれたら、個人的には助かるかな…。ただ、声はばっちり聞こえてるから通信機器としてはちゃんと機能してる。
流石ハル、まさかこんなにすごいものを1日で作っちゃうなんてね』
「…別に」
たしかに映っている夏彦さんの表情の小さな変化ひとつまで見えていて、今隣で機械を動かしている人は本当にすごい人なんだなとしみじみ思った。
「…あの、音が途切れたりしませんか?」
『うん、全然大丈夫!やっぱりハルは偉いな…』
「そのままそこに立ってて」
『まだ何かやるの?』
「…ちょっとね」
春人は沢山の工具を見つめて、少し大きめのものを取り出す。
何をするんだろうと不思議に思っていると、ばたばたと音をたててあっという間に組み上がっていく。
「これでもう少し音が聞き取りやすくなる。あと、送受信の範囲が広がったはずだ」
『オッケー、じゃあもう少し離れてから連絡してみるよ』
夏彦さんは手をふって、一旦通信を切ることにしたようだ。
「春人は、すごいですね」
「そんなに目を輝かせても、別にいいものを持ってるわけじゃないから…」
春人が俯いたまま、なかなか目を合わせてくれない。
言ってはいけないことを言ってしまったのかもしれないと不安に思っていると、彼の耳が赤くなっていることに気づく。
「あ、あの…」
「…どうかした?」
顔をあげた春人の頬は赤くなっていて、またかたかたと歯車が動くような音をたてて鼓動が速くなる。
話そうとした瞬間、遠慮がちな声が耳に届いた。
『あの、おふたりさん…いちゃいちゃしてるところ悪いんだけど、ちゃんと聞こえてる?』
「別にいちゃいちゃとかそういうのじゃない。あと、ちゃんと聞こえてる」
『それじゃあ実験成功だ』
夏彦さんが嬉しそうにしているのが声だけで分かるから、聞いていると私も嬉しくなる。
そのとき、画面の端の方に何か黒い物体がうつった。
「…夏彦さん」
『どうかしたの?』
「後ろを振り返らずに、真っ直ぐ走ってもらえませんか?」
『…?うん、分かった』
私が不安な顔をしてしまったら、この人に不安な思いをさせてしまう。
そうならないように祈りながらどうしようか考えていると、春人に小声で訊かれた。
「…何かあったの?」
「夏彦さんのことを、誰かが追いかけているみたいなんです。さっき、画面のすみっこに黒いものが映っていたので…」
『ごめん、逃げ切れそうにない。…というわけで、このまま繋いでおくね』
「え?」
夏彦さんは後ろは振り返らないまま、手に持っていたカメラを動かして確認しているみたいだ。
…そこにあったのは、本来であれば動くはずがない小さな銅像のようなものだった。
「あれは…」
「春人、どうしたんですか?」
「すぐ秋久に連絡してほしい。今ならきっと間に合うから」
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