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春人ルート
第84話
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『配置についたよ』
『了解。こっちは上手くやるから安心しろ』
その日の夜はいつもより寒く感じて、なんだか緊張してしまう。
指先に力を入れてみるけれど、やっぱり右手は動かないままだ。
「…絶対10分きっちりは稼いでみせる。だからお願い」
「は、はい。…こんばんは、駝鳥をお届けに参りました」
この言葉が合言葉になっているらしく、すんなりと入れてもらえる。
杖を持っているのを見て、相手はやっぱり油断しているように感じた。
『…お嬢ちゃん、今どのあたりだ?』
「配管ラウンジ、と書かれています」
ここから突き当たりを右に曲がって真っ直ぐ進むのが資料室に1番早く辿り着ける道順だ。
頭に道順は入れてきたけれど、あまりの広さに止まってしまいそうになる。
『資料室に入ったらすぐにスイッチを押して。…そっちまで走るから』
「あ、ありがとうございます」
何度か人に見つかりそうになるけれど、なんとかぶつからずにここまで来た。
資料室に入ると、スイッチはひとつだけ…。
恐る恐る押してみると、がちゃんと音がした。
「あの、押しました…」
『すぐ行く。冬真、別ルートはどうだ?』
『なんとか行けそう。そっちは?正門から入らないといけないよね?』
『それは、俺がばっちりナビゲートしちゃうよ』
『あんたはちゃらくてうるさい』
今この場所に本当に春人がいないんだと思うと、少し寂しく感じる。
1番捕まえる瞬間を見たかったはずなのに、今はどうしているだろう。
『お嬢ちゃんはそのまま待機。必ず誰かが来るまで待っててくれ』
「が、頑張ります」
今の私にできるのは、この場所から動かずに誰にも見つからないようにすること。
足音も気配も感じないなか、視界の隅にちらっと大きめの箱がうつる。
「…?」
それを開けてみると、沢山の事件に関する資料が入っていた。
「あ、あの、証拠になりそうな資料のようなものを見つけたんですけど…」
『できるだけ危険なことは避けてほしいが、できれば物証もあればありがたい。
…お嬢ちゃん、それは片手で運べる量か?』
「はい。軽いのでなんとか」
持ちあげてみると、予想よりずっと軽い。
もしかすると他にもからくりが隠されているのかもしれないと不安になりながら、ケースだけを手にとってテーブルの下に潜りこむ。
そのときがちゃりと音がして、中に黒服の人が入ってきた。
『月見ちゃん、今、』
「探せ!まだ鼠は屋敷にいるはずだ!」
どうしようと焦れば焦るほど、だんだん目の前が真っ暗になっていく。
落ち着かないといけないのに、どうすればいいのか分からなくなって目を閉じた。
『──月見』
「は、」
『今は返事はしなくていい。細い抜け道、場所を覚えていたらイヤホンを叩いて』
言われたとおりにすると、春人がふっと笑った気配がした。
『君にはそこから抜け出してもらう。その為にちょっとだけ怖い思いをしてもらわないといけないかもしれない』
「…やります」
小声で伝えると、春人からある作戦を告げられる。
『怖かったらそのままそこで隠れていること。ただ、もしやってみようと思ったなら…』
大きく息を吸って、その場で立ちあがる。
「き、キャンディーはお好きですか?」
「おまえは、」
できるだけ顔を見られないように気をつけながら、春人から何かあったときの為にと渡されていたものを思いきり投げた。
『了解。こっちは上手くやるから安心しろ』
その日の夜はいつもより寒く感じて、なんだか緊張してしまう。
指先に力を入れてみるけれど、やっぱり右手は動かないままだ。
「…絶対10分きっちりは稼いでみせる。だからお願い」
「は、はい。…こんばんは、駝鳥をお届けに参りました」
この言葉が合言葉になっているらしく、すんなりと入れてもらえる。
杖を持っているのを見て、相手はやっぱり油断しているように感じた。
『…お嬢ちゃん、今どのあたりだ?』
「配管ラウンジ、と書かれています」
ここから突き当たりを右に曲がって真っ直ぐ進むのが資料室に1番早く辿り着ける道順だ。
頭に道順は入れてきたけれど、あまりの広さに止まってしまいそうになる。
『資料室に入ったらすぐにスイッチを押して。…そっちまで走るから』
「あ、ありがとうございます」
何度か人に見つかりそうになるけれど、なんとかぶつからずにここまで来た。
資料室に入ると、スイッチはひとつだけ…。
恐る恐る押してみると、がちゃんと音がした。
「あの、押しました…」
『すぐ行く。冬真、別ルートはどうだ?』
『なんとか行けそう。そっちは?正門から入らないといけないよね?』
『それは、俺がばっちりナビゲートしちゃうよ』
『あんたはちゃらくてうるさい』
今この場所に本当に春人がいないんだと思うと、少し寂しく感じる。
1番捕まえる瞬間を見たかったはずなのに、今はどうしているだろう。
『お嬢ちゃんはそのまま待機。必ず誰かが来るまで待っててくれ』
「が、頑張ります」
今の私にできるのは、この場所から動かずに誰にも見つからないようにすること。
足音も気配も感じないなか、視界の隅にちらっと大きめの箱がうつる。
「…?」
それを開けてみると、沢山の事件に関する資料が入っていた。
「あ、あの、証拠になりそうな資料のようなものを見つけたんですけど…」
『できるだけ危険なことは避けてほしいが、できれば物証もあればありがたい。
…お嬢ちゃん、それは片手で運べる量か?』
「はい。軽いのでなんとか」
持ちあげてみると、予想よりずっと軽い。
もしかすると他にもからくりが隠されているのかもしれないと不安になりながら、ケースだけを手にとってテーブルの下に潜りこむ。
そのときがちゃりと音がして、中に黒服の人が入ってきた。
『月見ちゃん、今、』
「探せ!まだ鼠は屋敷にいるはずだ!」
どうしようと焦れば焦るほど、だんだん目の前が真っ暗になっていく。
落ち着かないといけないのに、どうすればいいのか分からなくなって目を閉じた。
『──月見』
「は、」
『今は返事はしなくていい。細い抜け道、場所を覚えていたらイヤホンを叩いて』
言われたとおりにすると、春人がふっと笑った気配がした。
『君にはそこから抜け出してもらう。その為にちょっとだけ怖い思いをしてもらわないといけないかもしれない』
「…やります」
小声で伝えると、春人からある作戦を告げられる。
『怖かったらそのままそこで隠れていること。ただ、もしやってみようと思ったなら…』
大きく息を吸って、その場で立ちあがる。
「き、キャンディーはお好きですか?」
「おまえは、」
できるだけ顔を見られないように気をつけながら、春人から何かあったときの為にと渡されていたものを思いきり投げた。
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