217 / 385
夏彦ルート
第86.5話
しおりを挟む
「夏彦」
「ハル?」
真っ暗な部屋で手品師から聞いた話を総合して報告書をまとめていると、マグカップを持ったハルが来てくれた。
「ありがとう」
「珈琲と角砂糖を持ってきた。…あと、カフェオレがいいならこれ淹れて」
「相変わらず優しい…」
「何に感激してるの?」
ふたりでいる時間は意外と気が抜ける。
それは相手が友人だからなのか、或いはずっと戦い続けてきた戦友だからなのかは分からない。
それでも、数え切れないくらい感謝している。
「…夏彦」
「どうしたの?」
「ひとつ訊きたい」
「俺に答えられることならね」
「…あの子には、植物を育てる才能でもあるの?」
月見ちゃんの能力については話すつもりはない。
まさかハルもそんな力が存在しているとは思っていないから、育てる才能という表現をしているのだろう。
だが、もしここで下手な反応を見せたら確実にアウトだ。
「どうかな…。昔の話、あんまりしたがらないから聞いてないんだ」
「…そう」
彼女と似たような傷を心に負っているハルには、過去のことを掘り返されるのがどれだけ辛いか分かるはずだ。
少し申し訳なく思いつつ、一先ず難を逃れた。
「それで、どうやって捕まえるつもり?また手品師が絡んできたらまー君のメンタルが持たないだろうし、早く解決したいところではあるよね…」
「資料まとめるの手伝うから、どれだったら見ていいのか教えて」
「いいの?正直猫の手も借りたいくらいだったから俺は助かるけど…」
「冬真のことは一理ある。それなら資料を早くまとめないと作戦が組めない」
ただでさえ業務過多になっている秋久たちには頼めないと思っていたので、はっきり言ってありがたい。
どれくらい時間が経ったか分からなくなった頃、漸く資料と報告書が完成した。
「ありがとう。本当に助かったよ」
「…別に。それで、彼女にはもう告白したの?」
「え?」
あまりに唐突すぎる質問に、冷めきった珈琲を吹き出しそうになる。
「い、いきなり何を言い出すかと思えば…」
「ごめん、これからだったんだ…」
「いやいや、何その微妙そうな視線!?」
ふたりでぎゃあぎゃあ言っていると扉が開く。
「これから血圧測らないといけないから、春人さんは少しだけ下がってて」
「分かりました」
にこやかな笑顔で敬語を使う春人には相変わらず慣れない。
あまり人との距離を詰めないようにしているようにも見えるけど、一体どうやって使い分けているのだろうか。
「…特に高くはなさそうだね」
「そっか、よかった。ありがとうまー君」
「別に。僕は僕の仕事をしているだけだから」
こういうちょっと素っ気ないところが春人に似ている。
なんとなく微笑ましく思っていると、ソルトを抱えた秋久が部屋にやってきた。
「悪いな、無理言って」
「いや、春人が手伝ってくれたおかげでもう終わったよ。…結論から言うと、もうあまり時間がないかもしれない」
途端に仕事の顔になる面々を見つめてはっきり告げる。
…そう、まずは目の前にある厄介事を全部片づけないといけない。
この気持ちを伝えるにしろそれからだ。
「ハル?」
真っ暗な部屋で手品師から聞いた話を総合して報告書をまとめていると、マグカップを持ったハルが来てくれた。
「ありがとう」
「珈琲と角砂糖を持ってきた。…あと、カフェオレがいいならこれ淹れて」
「相変わらず優しい…」
「何に感激してるの?」
ふたりでいる時間は意外と気が抜ける。
それは相手が友人だからなのか、或いはずっと戦い続けてきた戦友だからなのかは分からない。
それでも、数え切れないくらい感謝している。
「…夏彦」
「どうしたの?」
「ひとつ訊きたい」
「俺に答えられることならね」
「…あの子には、植物を育てる才能でもあるの?」
月見ちゃんの能力については話すつもりはない。
まさかハルもそんな力が存在しているとは思っていないから、育てる才能という表現をしているのだろう。
だが、もしここで下手な反応を見せたら確実にアウトだ。
「どうかな…。昔の話、あんまりしたがらないから聞いてないんだ」
「…そう」
彼女と似たような傷を心に負っているハルには、過去のことを掘り返されるのがどれだけ辛いか分かるはずだ。
少し申し訳なく思いつつ、一先ず難を逃れた。
「それで、どうやって捕まえるつもり?また手品師が絡んできたらまー君のメンタルが持たないだろうし、早く解決したいところではあるよね…」
「資料まとめるの手伝うから、どれだったら見ていいのか教えて」
「いいの?正直猫の手も借りたいくらいだったから俺は助かるけど…」
「冬真のことは一理ある。それなら資料を早くまとめないと作戦が組めない」
ただでさえ業務過多になっている秋久たちには頼めないと思っていたので、はっきり言ってありがたい。
どれくらい時間が経ったか分からなくなった頃、漸く資料と報告書が完成した。
「ありがとう。本当に助かったよ」
「…別に。それで、彼女にはもう告白したの?」
「え?」
あまりに唐突すぎる質問に、冷めきった珈琲を吹き出しそうになる。
「い、いきなり何を言い出すかと思えば…」
「ごめん、これからだったんだ…」
「いやいや、何その微妙そうな視線!?」
ふたりでぎゃあぎゃあ言っていると扉が開く。
「これから血圧測らないといけないから、春人さんは少しだけ下がってて」
「分かりました」
にこやかな笑顔で敬語を使う春人には相変わらず慣れない。
あまり人との距離を詰めないようにしているようにも見えるけど、一体どうやって使い分けているのだろうか。
「…特に高くはなさそうだね」
「そっか、よかった。ありがとうまー君」
「別に。僕は僕の仕事をしているだけだから」
こういうちょっと素っ気ないところが春人に似ている。
なんとなく微笑ましく思っていると、ソルトを抱えた秋久が部屋にやってきた。
「悪いな、無理言って」
「いや、春人が手伝ってくれたおかげでもう終わったよ。…結論から言うと、もうあまり時間がないかもしれない」
途端に仕事の顔になる面々を見つめてはっきり告げる。
…そう、まずは目の前にある厄介事を全部片づけないといけない。
この気持ちを伝えるにしろそれからだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる