裏世界の蕀姫

黒蝶

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イベントもの

初めての神社(初詣)

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「…ここなら人が来ない」
「そうなんですか?」
写真でしか見たことがなかった場所に、今自分が立っていることが信じられない。
肌寒いなか、ふたりだけで行くのは危険だからと冬真さんがついてきてくれた。
私の指先は動かないままで、春人はできるだけ運動を避けないといけない状態で…ぼろぼろなふたりが狙われては大変だからと都合を合わせてくれたのだ。
「あの、」
「冬真ならきっとお守りを買ってる。神様とか、そういうものに興味があるみたいだから」
「そうなんですね…」
全然知らなかった。
私はまだまだ、周りの人たちについて分かっていないことが多い。
それに、外のこともまだまだ知らないことだらけだ。
「…はぐれるといけないから」
「あ、ありがとうございます」
ぎこちなく会話が進んでいくけれど、なんとか目的の場所に辿りつくことができた。
「これが噂の絵馬なんですね…」
「俺も昔は知らなかったから、こういうところに来るのは久しぶりなんだ」
色々なお願い事が書かれているのが見えるけれど、一体どうすればあんなに綺麗な字が書けるのだろうか。
「…人の願い事見てないで書いてみれば」
「冬真、言い方をもっと優しくしないとそれでは絶対君主のようですよ」
「…ごめん」
「絶対…?」
「あなたは知らなくていいことですよ」
春人は有無を言わさない笑みで告げる。
それにしても、冬真さんはいつからここにいたのだろう。
「向こうで札を買って、それにしたためるんです」
「や、」
「ん?」
「…いえ、なんでもありません」
春人が話していたことに興味があって、見てみたいとお願いした。
それはもう叶ったので、私はもう満足だ。
「えっと、もう帰るんですか?」
「…素直に言えばいいのに」
「え?」
「僕、もうちょっと離れた場所にいる。終わったら声をかけて」
「ありがとうございます」
冬真さんが遠ざかっていくのを見送ると、春人に手をひかれる。
「…やってみたかったんでしょ、これ。そっちにあるペンで書くんだ」
「ですが、私はあんなに字を綺麗に書けません…」
「大事なのは文字の綺麗さじゃない」
「え?」
「あれには願いを書く。だから、思いがこもっていればそれでいいんじゃないかな」
春人の優しい言葉に、ただ感謝を伝えることしかできない。
やっぱり利き手じゃない方で書く文字はいつも以上に雑になってしまったけれど、いい思い出にはなった。
「春人は何を書いたんですか?」
「そういうのは言わない方が叶う。…行こう」
「はい」
差し出してくれた手はなんだか温かくてほっとする。
これからも春人の側にいられますようにと、さっき書いたばかりの願い事を思い浮かべていた。
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