裏世界の蕀姫

黒蝶

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イベントもの

初めてのキャットナイト(ハロウィン)

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その日、突然玄関の扉が開かれた。
訳が分からず思わず目を閉じそうになっていると、遠慮がちに肩をたたかれる。
恐る恐る目を開けてみると、そこには見知った顔があった。
「よう、お嬢ちゃん」
「アッキー…!」
いつの間にか私の後ろに立っていた夏彦が驚きの声をあげる。
「こんな早く来るなんて聞いてないよ。仕事はどうしたの?」
「なんでおまえはいつもそんなに…まあいい。今日は早く片づけてきたからな、お嬢ちゃんの手伝いをしようと思っただけだ」
「あ、ありがとうございます…」
秋久さんが相手だとやっぱり緊張してしまうけれど、夏彦の周りは優しい人ばかりで本当にいつも助けられてばかりだ。
つい最近になって、ハロウィンというものがあると知った。
全然どんなことをするのか分からないので、何か作れるものがあればと試しにやってみている。
「お嬢ちゃん、プリンは作れるか?」
「あ、はい…」
「それじゃあ頼む。夏彦は俺と力仕事だな」
「先にアッキーひとりでやっててもらっていい?俺、色々まだ終わってなくて…」
店員さんの分に、注文が入った分…それから、秋久さんたちの分も衣装を作ると言っていた。
夏彦はやっぱり忙しそうで、それなのにとても楽しそうで…本当にお仕事が大好きなんだと思う。
「かぼちゃを使ったプリン、できました」
「おう、ありがとな」
「こっちもできたよ!」
秋久さんと料理の話をしていると夏彦が駆け寄ってきて、1枚の袋を渡してくれた。
「月見ちゃんはそれ着てね」
「え…私の分もあるんですか?」
「当たり前でしょ?そういうのなら終わった後でも部屋着くらいにはできるから」
「ありがとうございます」
一旦その場を離れて袋を開けてみる。
中から出てきたのは、猫耳がついた黒いパーカーだった。
「で、できました…」
「うん、やっぱり可愛い」
「いいな、そういうの」
夏彦は狼さんの耳をつけていて、洋服には尻尾までついていた。
秋久さんの服はとてもシンプルなもので、赤い何かがマントとシャツについている。
「助かった。これならなんとかなりそうだ」
「それならいいけど、無理しない程度にね」
「怪我だらけのおまえこそ、ちゃんと休息をとれよ」
ひらひらと手をふって去っていく背中に心で感謝の気持ちを伝える。
「月見ちゃん、お菓子ある?」
「えっと、これなら作りました」
「かぼちゃプリンだ…!」
「夏彦、その…と、トリック・オア・トリート…?」
秋久さんに教えてもらった言葉を口にすると、にっこり笑ってチョコレートをくれた。
「ありがとうございます」
「ご飯、半分くらいは手伝えてよかった。ソルトが寝ている間に食べちゃおうか」
「は、はい…」
空が紺碧色に染まる頃、ふたり揃って食事を口にする。
こんなに楽しい行事があるんだと思うと、心が晴れていくような気がした。
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