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夏彦ルート
第88話
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「さっきはありがとう」
何の前触れもなく後ろから声をかけられて驚いていると、夏彦がそう言って笑いかけてくれた。
「私は、特別なことはしていないので…」
「月見ちゃんの心遣いが嬉しかったんだ。最近現場で張りつめることが多かったから、本当に助かったよ」
夏彦が笑ってくれるなら、どんなことでもできる気がする。
ほっとひと安心していると、ソルトが夏彦に向かって勢いよく走り出した。
「え!?流石に突進してくるとは思わなかった…。ソルトは本当に元気だね」
よしよしと頭を撫でてもらって満足したのか、ソルトはひと鳴きして私のところまで戻ってきた。
「実はソルトがちょっとまー君に懐いてきてるんだ」
「そうなんですか?」
「最初は警戒してたみたいだけど、まー君がいい人だって分かったみたい」
そんな話をしていると、だんだん心が温まっていくのを感じる。
心にある感情は枯れることなくすくすくと育っているみたいで、夏彦が笑う度にどきどきした。
「月見ちゃんはこの戦いが終わったら、何かしたいことってある?」
「私は夏彦とご飯を食べられればそれでいいです。ソルトがいて、あなたがいて…その生活が続くといいなって思っています」
本心だった。
全部が終わったら用無しになって追い出されてしまうかもしれないけれど、それまでにもう1度ご飯を一緒に食べたい。
「…今、追い出されるかもしれないとか考えてなかった?」
「そ、れは…」
「勘で言ってみただけだけど、意外と当たるものなんだね」
夏彦の笑顔はなんだか寂しさが滲んでいて、どうすればいいか分からなくなる。
彼の方に目線を向けると、手が大きくふりあげられた。
殴られる…そう思って目を閉じると、髪をわしわし撫でられる。
恐る恐る目を開けると、夏彦は向日葵色の髪かき乱しながら少しだけ笑っていた。
「俺は、誰でも彼でも家に受け入れたりなんかしないよ。月見ちゃんだから一緒にいたいんだ」
「…本当に」
「うん?」
「本当に、私なんかでいいんですか…?」
「…言ったでしょ、月見ちゃんだからいいって。一生懸命なところも、【ハイドランジア】での仕事ぶりも…俺の過去を知っても、態度を変えないで真っ直ぐ向き合ってくれるところも…全部君にしかないいいところだよ」
まさかそんなふうに言ってもらえるとは思っていなかった。
ただその言葉が嬉しくて、だんだん涙が零れそうになる。
「ごめんね、泣かせるつもりじゃなかったんだけど…」
「初めて、だったんです。ありがとうございます」
夏彦の手は優しくて、その温かさにほっとする。
こんな私でもここにいていいんだと思うと、明日からも前を向いて生きられそうだった。
何の前触れもなく後ろから声をかけられて驚いていると、夏彦がそう言って笑いかけてくれた。
「私は、特別なことはしていないので…」
「月見ちゃんの心遣いが嬉しかったんだ。最近現場で張りつめることが多かったから、本当に助かったよ」
夏彦が笑ってくれるなら、どんなことでもできる気がする。
ほっとひと安心していると、ソルトが夏彦に向かって勢いよく走り出した。
「え!?流石に突進してくるとは思わなかった…。ソルトは本当に元気だね」
よしよしと頭を撫でてもらって満足したのか、ソルトはひと鳴きして私のところまで戻ってきた。
「実はソルトがちょっとまー君に懐いてきてるんだ」
「そうなんですか?」
「最初は警戒してたみたいだけど、まー君がいい人だって分かったみたい」
そんな話をしていると、だんだん心が温まっていくのを感じる。
心にある感情は枯れることなくすくすくと育っているみたいで、夏彦が笑う度にどきどきした。
「月見ちゃんはこの戦いが終わったら、何かしたいことってある?」
「私は夏彦とご飯を食べられればそれでいいです。ソルトがいて、あなたがいて…その生活が続くといいなって思っています」
本心だった。
全部が終わったら用無しになって追い出されてしまうかもしれないけれど、それまでにもう1度ご飯を一緒に食べたい。
「…今、追い出されるかもしれないとか考えてなかった?」
「そ、れは…」
「勘で言ってみただけだけど、意外と当たるものなんだね」
夏彦の笑顔はなんだか寂しさが滲んでいて、どうすればいいか分からなくなる。
彼の方に目線を向けると、手が大きくふりあげられた。
殴られる…そう思って目を閉じると、髪をわしわし撫でられる。
恐る恐る目を開けると、夏彦は向日葵色の髪かき乱しながら少しだけ笑っていた。
「俺は、誰でも彼でも家に受け入れたりなんかしないよ。月見ちゃんだから一緒にいたいんだ」
「…本当に」
「うん?」
「本当に、私なんかでいいんですか…?」
「…言ったでしょ、月見ちゃんだからいいって。一生懸命なところも、【ハイドランジア】での仕事ぶりも…俺の過去を知っても、態度を変えないで真っ直ぐ向き合ってくれるところも…全部君にしかないいいところだよ」
まさかそんなふうに言ってもらえるとは思っていなかった。
ただその言葉が嬉しくて、だんだん涙が零れそうになる。
「ごめんね、泣かせるつもりじゃなかったんだけど…」
「初めて、だったんです。ありがとうございます」
夏彦の手は優しくて、その温かさにほっとする。
こんな私でもここにいていいんだと思うと、明日からも前を向いて生きられそうだった。
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