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夏彦ルート
第94話
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翌日からも夏彦がリハビリを手伝ってくれた。
「それじゃあ、足をゆっくり上下させてみて」
「は、はい」
ベッドに寝転んだまま、上に下にとゆっくり動かしていく。
これが意外と体力を消耗するもので、だんだん足が疲れていった。
「一旦休憩にしようか」
「ごめんなさい…」
「ううん、それが普通だよ。無理に動かせば痛みが酷くなるし、ゆっくりやっていこう」
「あ、ありがとう、ございます」
どうしても疲れてしまっていつもどおりにできない。
話しかけようとしたのに、夏彦は部屋を出ていってしまった。
…本当は体力がなさすぎて呆れられたんじゃないだろうか。
色々独りで考えて不安になっていると、マグカップをふたつ持って戻ってきた。
「これ、最近売られるようになったばっかりのお茶なんだって。まー君が月見ちゃんにも味の感想を聞きたいって言ってた」
「あ、ありがとうございます。いただきます」
夏彦が渡してくれたマグカップを両手で持って、そのまま傾ける。
「少し甘いんですね。飲みやすくて、私は好きです」
「花から取れた蜜が入ってるんだって。たしかに甘いね。だけど、俺もこういうの好きかも」
本当に呆れられたわけではないのだと安心しつつ、夏彦の怪我の具合がどうなっているのか心配になる。
「あの、夏彦は無理してませんか?」
「言ったでしょ、俺はもうほぼ完治してるから平気だって。そうじゃないと、今頃まー君にベッドにくくりつけられてるよ」
「それならいいんですけど…」
それなら、時々表情が曇るのはどうしてだろう。
まるで何かに苦しんでいるような、寂しさが隠れているような…その正体が何なのか分からない。
勿論知りたいけれど、訊いてしまっていいのか悩んではずっとその場で足踏みしている状態だ。
「月見ちゃん」
「は、はい」
「さっきまー君に訊いたら、少しだけなら出掛けてもいいって言われたんだ。
もうすぐこの一件も片づきそうだし…この前話したように一緒にきてほしい場所があるんだけど、よかったらどうかな?」
「私が行っても迷惑にならないなら、喜んで」
「ありがとう。それじゃあ、約束ね」
その話をした後の夏彦の表情は安堵に満ちていたけれど、それと同時に少し不安が残っていたような気がする。
結局またはっきりとは聞けず、そのままリハビリを続けて終わった。
「ソルトもおさんぽですか?」
夕飯を食べた後、こっそりと広めの廊下で独り走る練習をしているとソルトが現れる。
「私は、速く走れるようになりたくて練習しているんです。…ソルトみたいに上手くできるとよかったのに」
杖がないと長い時間ただ立っているだけでも辛い。
できるだけ早く治したいとどうしても焦ってしまう。
「ソルト、私、もう少しだけ練習しますね」
撫でながらそう話しかけると、ソルトがにゃあとひと鳴きする。
その先を見ようと顔をあげた瞬間、ぐっと抱き寄せられた。
「…駄目だよ、無理したら」
「それじゃあ、足をゆっくり上下させてみて」
「は、はい」
ベッドに寝転んだまま、上に下にとゆっくり動かしていく。
これが意外と体力を消耗するもので、だんだん足が疲れていった。
「一旦休憩にしようか」
「ごめんなさい…」
「ううん、それが普通だよ。無理に動かせば痛みが酷くなるし、ゆっくりやっていこう」
「あ、ありがとう、ございます」
どうしても疲れてしまっていつもどおりにできない。
話しかけようとしたのに、夏彦は部屋を出ていってしまった。
…本当は体力がなさすぎて呆れられたんじゃないだろうか。
色々独りで考えて不安になっていると、マグカップをふたつ持って戻ってきた。
「これ、最近売られるようになったばっかりのお茶なんだって。まー君が月見ちゃんにも味の感想を聞きたいって言ってた」
「あ、ありがとうございます。いただきます」
夏彦が渡してくれたマグカップを両手で持って、そのまま傾ける。
「少し甘いんですね。飲みやすくて、私は好きです」
「花から取れた蜜が入ってるんだって。たしかに甘いね。だけど、俺もこういうの好きかも」
本当に呆れられたわけではないのだと安心しつつ、夏彦の怪我の具合がどうなっているのか心配になる。
「あの、夏彦は無理してませんか?」
「言ったでしょ、俺はもうほぼ完治してるから平気だって。そうじゃないと、今頃まー君にベッドにくくりつけられてるよ」
「それならいいんですけど…」
それなら、時々表情が曇るのはどうしてだろう。
まるで何かに苦しんでいるような、寂しさが隠れているような…その正体が何なのか分からない。
勿論知りたいけれど、訊いてしまっていいのか悩んではずっとその場で足踏みしている状態だ。
「月見ちゃん」
「は、はい」
「さっきまー君に訊いたら、少しだけなら出掛けてもいいって言われたんだ。
もうすぐこの一件も片づきそうだし…この前話したように一緒にきてほしい場所があるんだけど、よかったらどうかな?」
「私が行っても迷惑にならないなら、喜んで」
「ありがとう。それじゃあ、約束ね」
その話をした後の夏彦の表情は安堵に満ちていたけれど、それと同時に少し不安が残っていたような気がする。
結局またはっきりとは聞けず、そのままリハビリを続けて終わった。
「ソルトもおさんぽですか?」
夕飯を食べた後、こっそりと広めの廊下で独り走る練習をしているとソルトが現れる。
「私は、速く走れるようになりたくて練習しているんです。…ソルトみたいに上手くできるとよかったのに」
杖がないと長い時間ただ立っているだけでも辛い。
できるだけ早く治したいとどうしても焦ってしまう。
「ソルト、私、もう少しだけ練習しますね」
撫でながらそう話しかけると、ソルトがにゃあとひと鳴きする。
その先を見ようと顔をあげた瞬間、ぐっと抱き寄せられた。
「…駄目だよ、無理したら」
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