裏世界の蕀姫

黒蝶

文字の大きさ
320 / 385
冬真ルート

第7話

しおりを挟む
毎朝7時前になると、扉がノックされる。
「入るよ」
「お、おはようございます」
「…ちょっと傷の具合を診せてもらう」
「お、お願いします」
あれからどれくらい日が過ぎたんだろう。
その感覚もないまま、私の1日はほとんどベッドの上で終わっていた。
掃除をしようとすると傷口が開くからと止められてしまって、今は時々料理を作らせてもらうくらいだ。
「明日は朝早いから、多分君が起きる頃にはここを出てると思う。誰か来ても開けなくていいから」
「分かりました」
だいぶ動けるようにはなったけれど、私にできることは少ない。
余計なことをして冬真さんの負担になるくらいなら、料理だけはしっかりこなしていこうと決めた。
「あの…どうかしたんですか?」
さっきからこちらを見つめている冬真さんに話しかけると、勢いよく手に何かが押し付けられる。
それは柔らかくて、とても温かいものだった。
「……これでもつけておいたら?」
「え…?」
手渡されたのは、可愛らしい手袋だった。
思っていたより指の怪我が深刻らしく、1日に何回も包帯を換えてもらっている。
それを隠す為、ということだろうか。
「何もないよりマシだと思う」
「あ、ありがとうございます」
「リビングにいるから」
「あ……」
朝早く出るということは、お昼ご飯があった方がいいんじゃないだろうか…そう思ったけれど、訊く前に部屋を出ていってしまった。
窓からスノウが入ってくることはあっても、他にお客さんなんてこない。
「…読み終わってしまいました」
今日もスノウが側にいてくれて、冬真さんに貸してもらった本を読んで過ごす。
あまり話しかけても迷惑になりそうで、自分から話しかけにいく勇気はない。
「──から、ここに来たってことでいい?」
扉の外から話し声が聞こえて、ますます出ていいのか分からなくなってしまう。
どうしようか扉の前で立ち止まっていると、向こうからがちゃりと開けられる音がした。
「なんで君はぼんやり立ってるの?」
「えっと…ごめんなさい。本を読み終わったので、お返ししようと思ったんです。
誰か他の方がいらっしゃっているんですか?」
「君には関係ない」
ぴしゃりと言われた瞬間、私の体は凍りついたように動かなくなる。
そうだ。私は置いてもらっている身のくせに何を言っているんだろう。
知られたくないことがあるのは当たり前なのに、どうしても体が動かせなかった。
「……ごめんなさい」
そう言葉にするのがやっとで、それからどんな話をしたのか全く思い出せない。
気づいたときには部屋で独り震えていた。
怒らせたいわけじゃなかったのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...