裏世界の蕀姫

黒蝶

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秋久ルート

第18話

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「だ、だ、大丈夫ですか…?」
頭を打ったなら動かさない方がいいだろうし、ただ、このまま放っておくわけにはいかない。
「お嬢ちゃん、どうした?」
「あの、えっと、苦しそうな声が聞こえて、見たら倒れていて…」
「…成程な。お嬢ちゃんはここで待ってな。大体の原因は分かってるから」
「分かりました」
小走りでどこか別の部屋へ向かった秋久さんを見送った後、倒れていた人に水を飲ませた。
「えっと…柿田さん、ですよね?水なら飲めますか?」
「すみません、ありがとうございます。まさかあいつが作ったものだったとは思わなくて…俺としたことがやってしまいました」
「あいつって、」
誰なのか訊こうとすると、秋久さんが誰かの手を掴んで部屋から引っ張り出した。
「ボス、お疲れ様です」
「ボスって言うな。柿田、渋沢はどうした?」
「デスクッキングの餌食になりました」
「そうか。…他の奴らに食べさせるなって言ったよな、花菜」
「すみません、先輩。だけど私、どうしてももっと料理上手になりたかったんです!」
話が飲み込めていないのは私だけだろうか。
花菜がどう関係して、柿田さんが倒れていたことに繋がるのか分からない。
「お嬢ちゃん。悪いんだが、昼食作りを手伝ってもらえないか?」
「わ、分かりました」
秋久さんについていこうとすると、後ろから声をかけられた。
「ボス、そのお姫様はボスの恋人ですか?」
「ちょっとワケアリでな。あまり深くつっこまないでくれ」
「分かりました」
それから通された部屋は、何かが爆発したみたいに壁が真っ黒だった。
「時々花菜が料理をするんだが、あいつは本当に苦手でな。昼食どころか毒味みたいになるんだ。
他の部下には絶対出さないように頼んでるんだが、悪い奴じゃないから強く言えなくて困ってる」
「それで、キッチンが焦げてしまったということでしょうか?」
「ああ。柿田も渋沢も強く断れないからな」
秋久さんは楽しそうに仲間の話をしてくれた。
その言葉ひとつひとつに絆みたいなものを感じて、聞いているだけで楽しくなる。
「お嬢ちゃん、手伝ってくれてありがとな」
「いえ。こちらこそ、お話を聞けてよかったです」
そのまま真っ直ぐ元の部屋まで戻ると、柿田さんも渋沢さんもゆっくり休んでいるところだった。
「ボス、お疲れ様です。あと、そっちの人も…すみません、俺まだ名乗ってなかったですね。
柿田優吾って言います。さっきはありがとうございました」
「い、いえ…」
「それで、そっちは渋沢有吾です」
どうして秋久さんがふたりのことを名字で読んでいるのかずっと疑問だったけれど、この瞬間あっさり解消された。
「ふたりとも、まかないできたから食べろ。今日はお嬢ちゃんにも手伝ってもらったから、いつもより美味いはずだ」
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