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冬真ルート
第30話
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まだ秋久さんたちと話しているのかもしれないと思うと、部屋から出ると邪魔になりそうでベッドに座りなおす。
「…おしまい」
思わず声に出てしまったものの、読み終わった本をもう1度見つめる。
ぼんやりしていると、外に向かって伸ばした蔦から誰かが近づいてくるのを感じとった。
勝手に外に出ないようにしていたけれど、誰が来たのか確かめたい。
気配があった場所までなんとか辿り着いたものの、もう通りすぎてしまったのか誰の姿もなかった。
「よかった、ちゃんと戻ったんだね」
驚いてふりかえると、冬香さんが微笑んでいた。
「あ、あの…」
「どうかしたの?」
「先日はありがとうございました」
「大したことはしてないよ。僕はただ、気になることがあってここに来ているだけだからね。
それにしても、やっぱり蕀姫はすごいね。この蔦は君のものでしょ?」
どうしてこの人は蕀さんたちについて詳しいんだろう。
そのことを話したことなんてなかったはずなのに、冬真以上に見抜く力が強いのだろうか。
「僕がここにいたから確認しに来たの?」
「えっと…はい」
「そうか。君みたいないい子が冬真の側にいてくれると安心するよ」
「手品師さん…冬香さんは、冬真の知り合いなんですか?」
そう尋ねると、彼は少し答えづらそうにしていた。
…というよりは、なんだか表情が曇っている気がする。
訊いてはいけないことだったのだろうか。
「ごめんなさい。もし冬真に何か用事があるなら呼んでこようと思ったんです」
「いや、君は何も悪くないよ。ただ、本当に黙っていてくれているんだなって思っただけなんだ」
「秘密にしてほしいと、冬香さんに言われたので…」
「守ってくれてありがとう」
ほっとした表情でこちらを見つめる冬香さんの目は優しいもので、誰かに似ているような気がしてしまう。
会ったことがあったのか、別の理由があるのかは自分でも分からない。
「そうだ。それじゃあふたつお願いしてもいい?」
「私にできることですか?」
「うん。寧ろ君にしかできないことなんだ」
「できることがあるなら頑張ります」
そう答えると、冬香さんは笑って話しはじめる。
「ありがとう。まずひとつ目は、この蔦を少し分けてほしい。誰かに勝手にあげたりしないし、君がそういうことができることは誰にも言わない。
…ただ、お守り代わりに持っておきたいんだ」
「そういうことなら…」
何かお礼がしたかったし、冬香さんが危険な状態になればすぐ分かる。
そのときは冬真に話すことになるかもしれないけれど、それまでは秘密を守りたい。
「ありがとう。…それじゃあもうひとつ。この花を冬真に見えるように飾っておいてほしいんだ。
このコップにさして、水は1日に1回換えてくれれば持つから」
どこからか出された花はとても綺麗で、ずっと見ていたくなる。
「分かりました。やってみます」
「ありがとう。…ねえ、蕀姫」
「はい」
「お菓子のラムネ売りには気をつけて」
その言葉の意味が分からず首を傾げていると、後ろから足音が聞こえる。
そちらを向こうとした瞬間、突風が吹き荒れた。
目を開けたとき、目の前にいたはずの手品師さんの姿はなくて、駆け寄ってきた冬真に手を掴まれる。
「何か気になることでもあった?」
「…おしまい」
思わず声に出てしまったものの、読み終わった本をもう1度見つめる。
ぼんやりしていると、外に向かって伸ばした蔦から誰かが近づいてくるのを感じとった。
勝手に外に出ないようにしていたけれど、誰が来たのか確かめたい。
気配があった場所までなんとか辿り着いたものの、もう通りすぎてしまったのか誰の姿もなかった。
「よかった、ちゃんと戻ったんだね」
驚いてふりかえると、冬香さんが微笑んでいた。
「あ、あの…」
「どうかしたの?」
「先日はありがとうございました」
「大したことはしてないよ。僕はただ、気になることがあってここに来ているだけだからね。
それにしても、やっぱり蕀姫はすごいね。この蔦は君のものでしょ?」
どうしてこの人は蕀さんたちについて詳しいんだろう。
そのことを話したことなんてなかったはずなのに、冬真以上に見抜く力が強いのだろうか。
「僕がここにいたから確認しに来たの?」
「えっと…はい」
「そうか。君みたいないい子が冬真の側にいてくれると安心するよ」
「手品師さん…冬香さんは、冬真の知り合いなんですか?」
そう尋ねると、彼は少し答えづらそうにしていた。
…というよりは、なんだか表情が曇っている気がする。
訊いてはいけないことだったのだろうか。
「ごめんなさい。もし冬真に何か用事があるなら呼んでこようと思ったんです」
「いや、君は何も悪くないよ。ただ、本当に黙っていてくれているんだなって思っただけなんだ」
「秘密にしてほしいと、冬香さんに言われたので…」
「守ってくれてありがとう」
ほっとした表情でこちらを見つめる冬香さんの目は優しいもので、誰かに似ているような気がしてしまう。
会ったことがあったのか、別の理由があるのかは自分でも分からない。
「そうだ。それじゃあふたつお願いしてもいい?」
「私にできることですか?」
「うん。寧ろ君にしかできないことなんだ」
「できることがあるなら頑張ります」
そう答えると、冬香さんは笑って話しはじめる。
「ありがとう。まずひとつ目は、この蔦を少し分けてほしい。誰かに勝手にあげたりしないし、君がそういうことができることは誰にも言わない。
…ただ、お守り代わりに持っておきたいんだ」
「そういうことなら…」
何かお礼がしたかったし、冬香さんが危険な状態になればすぐ分かる。
そのときは冬真に話すことになるかもしれないけれど、それまでは秘密を守りたい。
「ありがとう。…それじゃあもうひとつ。この花を冬真に見えるように飾っておいてほしいんだ。
このコップにさして、水は1日に1回換えてくれれば持つから」
どこからか出された花はとても綺麗で、ずっと見ていたくなる。
「分かりました。やってみます」
「ありがとう。…ねえ、蕀姫」
「はい」
「お菓子のラムネ売りには気をつけて」
その言葉の意味が分からず首を傾げていると、後ろから足音が聞こえる。
そちらを向こうとした瞬間、突風が吹き荒れた。
目を開けたとき、目の前にいたはずの手品師さんの姿はなくて、駆け寄ってきた冬真に手を掴まれる。
「何か気になることでもあった?」
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