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秋久ルート
第36話
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すっかり忘れていたけれど、秋久さんにさっきのを見られてしまったのだ。
やっぱり、出ていくように言われてしまうのだろうか。
「あ、あの、」
「心配しなくても誰にも話すつもりはないし、言いたくないことを無理矢理聞き出すつもりもない。
ただ、俺でよければ力にならせてほしいんだ」
どうしてこの人はここまでしてくれるんだろう。
私は秋久さんたちに何かお返しができるわけじゃない。
「私、は…」
「…悪い、泣かせるつもりじゃなかったんだ」
なんだか少し慌てた様子で秋久さんは頭を撫でてくれた。
やっぱりその温かさに安心してしまうけれど、やっぱりどこまでも優しい人だと感じてまた涙が出てしまう。
「意外と泣き虫なんだな。少し安心した」
「安心…ですか?」
「ああ。我慢しすぎて泣けなくなってるんじゃないかと思ってたんでな」
「ごめ、なさ…」
「さっきも言ったように、言いたくないことは言わなくていい。
それに、今はできるだけ休んでいてほしい。…眠れそうにないか?」
本当は困らせたくなかったけれど、体は正直に頷いてしまう。
「それじゃあ、もう少し手を握っててもいいか?」
「お願、しま…」
「分かった」
まだ上手く話せない私に寄り添ってくれて、心がぽかぽかするのを感じながら目を閉じる。
いつも嫌な夢ばかり見るのに、このときは秋久さんが沢山笑いかけてくれた。
「悪い、起こしたか?」
「いえ…」
次に目を開けたとき、秋久さんの腕を敷きこんでしまっていた。
「ごめんなさい」
「いや。俺が起こしたくなかっただけだから気にしなくていい。気分はどうだ?」
「喉が、すっきりしています」
「そりゃよかった。多分副作用の時間が終わったんだな」
優しく話しかけてもらえるのが嬉しい。
…だから、今ここで秘密にして余計な心配をかけたくなかった。
「あの…もう少し、お話してもいいですか?」
「おまえの気が向いてるなら喜んで付き合う」
「私は、小さい頃から蕀さんたちに出てきてもらうことができていました」
それから頭の中で整理しながら少しずつ話した。
人と違うことに気づいたのはまだ小学校に通っていた頃だったこと、あの家の人たちに走られていないはずだということ、人には隠してきたこと…。
「分かりづらくてごめんなさい」
「いや、充分だ。月見はずっとひとりで頑張ってきたんだな」
どうして彼の言葉はこんなにも私の心を溶かしていくんだろう。
また泣きそうになったけれど、今度はなんとか堪えられた。
「俺にできるのは話し相手になることくらいだが、それでよければいつでも話してくれ」
「ありがとうございます」
その言葉に感謝しつつ、ベッドからゆっくり降りる。
秋久さんの表情からは一瞬見えた哀しみが消えていた。
やっぱり、出ていくように言われてしまうのだろうか。
「あ、あの、」
「心配しなくても誰にも話すつもりはないし、言いたくないことを無理矢理聞き出すつもりもない。
ただ、俺でよければ力にならせてほしいんだ」
どうしてこの人はここまでしてくれるんだろう。
私は秋久さんたちに何かお返しができるわけじゃない。
「私、は…」
「…悪い、泣かせるつもりじゃなかったんだ」
なんだか少し慌てた様子で秋久さんは頭を撫でてくれた。
やっぱりその温かさに安心してしまうけれど、やっぱりどこまでも優しい人だと感じてまた涙が出てしまう。
「意外と泣き虫なんだな。少し安心した」
「安心…ですか?」
「ああ。我慢しすぎて泣けなくなってるんじゃないかと思ってたんでな」
「ごめ、なさ…」
「さっきも言ったように、言いたくないことは言わなくていい。
それに、今はできるだけ休んでいてほしい。…眠れそうにないか?」
本当は困らせたくなかったけれど、体は正直に頷いてしまう。
「それじゃあ、もう少し手を握っててもいいか?」
「お願、しま…」
「分かった」
まだ上手く話せない私に寄り添ってくれて、心がぽかぽかするのを感じながら目を閉じる。
いつも嫌な夢ばかり見るのに、このときは秋久さんが沢山笑いかけてくれた。
「悪い、起こしたか?」
「いえ…」
次に目を開けたとき、秋久さんの腕を敷きこんでしまっていた。
「ごめんなさい」
「いや。俺が起こしたくなかっただけだから気にしなくていい。気分はどうだ?」
「喉が、すっきりしています」
「そりゃよかった。多分副作用の時間が終わったんだな」
優しく話しかけてもらえるのが嬉しい。
…だから、今ここで秘密にして余計な心配をかけたくなかった。
「あの…もう少し、お話してもいいですか?」
「おまえの気が向いてるなら喜んで付き合う」
「私は、小さい頃から蕀さんたちに出てきてもらうことができていました」
それから頭の中で整理しながら少しずつ話した。
人と違うことに気づいたのはまだ小学校に通っていた頃だったこと、あの家の人たちに走られていないはずだということ、人には隠してきたこと…。
「分かりづらくてごめんなさい」
「いや、充分だ。月見はずっとひとりで頑張ってきたんだな」
どうして彼の言葉はこんなにも私の心を溶かしていくんだろう。
また泣きそうになったけれど、今度はなんとか堪えられた。
「俺にできるのは話し相手になることくらいだが、それでよければいつでも話してくれ」
「ありがとうございます」
その言葉に感謝しつつ、ベッドからゆっくり降りる。
秋久さんの表情からは一瞬見えた哀しみが消えていた。
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