裏世界の蕀姫

黒蝶

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秋久ルート

第42話

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「心配は、かけない方がいいんじゃないんですが…?」
「いや?俺はかけてもらえた方がありがたい。場合にもよるが、月見のことは心配したい」
秋久さんの言葉の意味がよく分からなくて、その場で固まってしまった。
どう反応するのがいいんだろう。
「人のことは心配するけど、自分のことは全然大事にしないだろう?
そういう相手を心配できるのは嬉しい。まあ、時々困ることもあるが」
秋久さんが嘘を吐いているようには見えない。
だからこそ、余計にどうしたらいいのか分からなかった。
「アッキーいる?」
「今ちょっと取り込み中だから、あんたはもうちょっとそこで大人しくしてて」
扉の外からそんな声がしてはっとする。
秋久さんはお仕事をしていたのではないか…そう思うと、私はただ下がることしかできない。
「ごめんなさい。お邪魔しました」
「月見、別にそんなに慌てなくても、」
「おやすみなさい」
その一言しか言えなかった。
本当はもっとちゃんと話がしたかったのに、それ以上のことを口にするのは難しい。
とにかくその場を離れると、後ろから甘栗がゆっくりついてきた。
「片づけが終わるまで、待っていてくれますか?」
甘栗は小さく鳴いて、大人しく座って待ってくれている。
手早く道具を洗い終わらせて、すぐに自分の部屋に戻った。
「眠れそうにないなら、一緒に話をしましょう」
伝えたかった気持ちをきっと半分も伝えられていない。
ただ、秋久さんたちに迷惑だけはかけなくないと考えていた。
…いつの間に眠っていたのか、ベッドから体を起こす。
隣で甘栗が丸くなって寝ているのが見える。
それから、見覚えのない毛布がかけられていた。
「まだ、朝じゃない…」
窓の外にはのぼりはじめた太陽が見えてはいるものの、まだ真っ暗だった。
「落ち着け。……だろ?」
「ここを逃したら──」
夏彦さんと秋久さんの声が聞こえる。
喧嘩しているのか、ふたつのそれはいつもよりずっと怖い。
扉を少しだけ開けるたものの、ふたりは気づいていないらしく言い争っていた。
「感情的に動いても上手くいかない。今はやめておけ」
「もう無理だよ。この日をどれだけ心待ちにしてたことか…」
「考え直せ」
「今回は無理。のんびりしてたらまた逃げられる」
「夏彦、頼む」
「やっとこの手で恨みを晴らせるのに、何を迷う必要があるの?」
「夏樹はそんなことを望んでいない」
「そんなの本人じゃないのに分からないでしょ!?」
夏彦さんがあんなふうに話すのを初めて見た。
怖くて動けずにいると、秋久さんと目が合う。
そのとき、彼は一瞬笑って夏彦さんに向きなおる。
「……なら俺を倒していけ、夏彦。それができたら文句は言わねえよ」
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