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秋久ルート
第47話
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「役に立ちたい、なんて健気だね」
次の日、私は朝から秋久さんの職場にいた。
ひとりでぼんやりしていると、花菜が話しかけてくれたのだ。
私に元気がないと感じたのか、すぐにふたりきりの部屋で話を聞きたいと言ってくれた。
「ごめんなさい。私ばかり話してしまって…」
「ううん!私、人に悩みを相談してもらえるのって嬉しいんだ。
この人には信頼されてるのかなって思うから…人の話を聞くのも仕事だしね」
花菜の笑顔に癒やされて、頬が緩むのを感じる。
彼女の笑顔は、きっと周りを明るく照らしてきたのだろう。
「月見?大丈夫?」
「は、はい」
「月見は力になりたいって焦ってるけど、私は月見がいてくれるおかげで先輩たちが暴走せずにすんでるんだと思うんだ」
「どういうことですか?」
よく分からなくて、ただ黙って聞いていることしかできない。
そんな私に花菜は優しく微笑んだ。
「まだ月見がいなかった頃、なっちゃんがかなり無理してたことがあったんだ」
「なっちゃん…?」
「あ、夏彦が無理してたの。だけど、それを止められる相手が先輩しかいなかった。
…まあ、その話は今度にして…先輩も相当無理する人だったんだ」
「そうなんですか?」
いつも余裕そうに見えていたその表情には、一体何が隠されていたのだろう。
花菜は何かを思い出すような目をして、悲しそうに続ける。
「あの頃の私は新人で…力になりたくても寧ろ負担を増やしてばっかりだったんだ。
この前見られちゃったとおり料理は苦手だし、仕事にもまだ慣れてなかったし…あんなことがあったなんて知らなかったから、余計に力になれなかった」
あんなことというのは夏樹さんのことだろうか。
名前しか分からなくても、その人が大切に想われていたことは分かる。
「事件の捜査で無茶をした先輩は、危ない人たちに目をつけられたことがあったんだ」
「そうなんですか?」
「詳しいことはあんまり話せないんだけど、ずっと命を狙われてた。…それから先輩は周りを巻きこみたくないからって戦術を変えるようになったみたい。
誰が止めても突っ走っていたのに、今は目の前に犯人の情報があっても無茶な動きをしてない。
…私ね、それはきっと月見がいてくれるからだと思うんだ。人に弱みを見せない人だから強がってるんじゃないかって心配だったけど、月見がいてくれるからそういうことが減ってるように見える」
そんなふうに思ってくれているなんて知らなかった。
秋久さんのことも、知っているつもりでまだまだ知らなかったみたいだ。
「入るぞ。…花菜、何話してる?」
「どうして話しているの前提なんですか?」
「お嬢ちゃんの表情が曇ってるからだ」
「ごめんなさい、少し考え事をしていただけなんです」
「…本当か?」
秋久さんの表情は不安そうなものになって、向けられた視線がやんわりささる。
「は、はい」
「そうか。ならいい」
秋久さんが笑った顔を見て、花菜がにやにやしながら彼に向き治る。
「先輩、いい恋人を持ちましたね」
次の日、私は朝から秋久さんの職場にいた。
ひとりでぼんやりしていると、花菜が話しかけてくれたのだ。
私に元気がないと感じたのか、すぐにふたりきりの部屋で話を聞きたいと言ってくれた。
「ごめんなさい。私ばかり話してしまって…」
「ううん!私、人に悩みを相談してもらえるのって嬉しいんだ。
この人には信頼されてるのかなって思うから…人の話を聞くのも仕事だしね」
花菜の笑顔に癒やされて、頬が緩むのを感じる。
彼女の笑顔は、きっと周りを明るく照らしてきたのだろう。
「月見?大丈夫?」
「は、はい」
「月見は力になりたいって焦ってるけど、私は月見がいてくれるおかげで先輩たちが暴走せずにすんでるんだと思うんだ」
「どういうことですか?」
よく分からなくて、ただ黙って聞いていることしかできない。
そんな私に花菜は優しく微笑んだ。
「まだ月見がいなかった頃、なっちゃんがかなり無理してたことがあったんだ」
「なっちゃん…?」
「あ、夏彦が無理してたの。だけど、それを止められる相手が先輩しかいなかった。
…まあ、その話は今度にして…先輩も相当無理する人だったんだ」
「そうなんですか?」
いつも余裕そうに見えていたその表情には、一体何が隠されていたのだろう。
花菜は何かを思い出すような目をして、悲しそうに続ける。
「あの頃の私は新人で…力になりたくても寧ろ負担を増やしてばっかりだったんだ。
この前見られちゃったとおり料理は苦手だし、仕事にもまだ慣れてなかったし…あんなことがあったなんて知らなかったから、余計に力になれなかった」
あんなことというのは夏樹さんのことだろうか。
名前しか分からなくても、その人が大切に想われていたことは分かる。
「事件の捜査で無茶をした先輩は、危ない人たちに目をつけられたことがあったんだ」
「そうなんですか?」
「詳しいことはあんまり話せないんだけど、ずっと命を狙われてた。…それから先輩は周りを巻きこみたくないからって戦術を変えるようになったみたい。
誰が止めても突っ走っていたのに、今は目の前に犯人の情報があっても無茶な動きをしてない。
…私ね、それはきっと月見がいてくれるからだと思うんだ。人に弱みを見せない人だから強がってるんじゃないかって心配だったけど、月見がいてくれるからそういうことが減ってるように見える」
そんなふうに思ってくれているなんて知らなかった。
秋久さんのことも、知っているつもりでまだまだ知らなかったみたいだ。
「入るぞ。…花菜、何話してる?」
「どうして話しているの前提なんですか?」
「お嬢ちゃんの表情が曇ってるからだ」
「ごめんなさい、少し考え事をしていただけなんです」
「…本当か?」
秋久さんの表情は不安そうなものになって、向けられた視線がやんわりささる。
「は、はい」
「そうか。ならいい」
秋久さんが笑った顔を見て、花菜がにやにやしながら彼に向き治る。
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