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秋久ルート
第61話
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「俺はただ自らの無力を嘆いた。けど、それじゃああいつの願いを叶えてやれない。夏彦のことだって護ってやれないんじゃないかって思ったんだ。
だから俺は、元々ひとりでやっていた裏の諜報活動をチームでやってみることにした」
「それがカルテットなんですね」
秋久さんは小さく頷いて、沈んだ表情で私を見た。
「悪い。こんな重い話をして困らせるつもりじゃなかったんだ」
「私は大丈夫です。でも、秋久さんは全然大丈夫そうに見えません…」
そんな思いをたったひとりで抱え続けて、きっと苦しかったはずだ。
それなのに、ずっと表情に出すことなく今も必死で隠そうとしている。
少し考えてからその場に立って、彼の胡桃色の髪を撫でた。
「どうしたんだ、いきなり…」
「秋久さんにこうしてもらえると安心するので、やってみようって思ったんです。…迷惑でしたか?」
怒らせてしまったかもしれないと思っていたのに、秋久さんは今にも泣き出しそうな顔で私を見つめた。
「迷惑なんかじゃない。…なんでだろうな、寧ろ安心してる」
嘘を吐いたり、気を遣って思いこもうとしているようには見えない。
もし本当に安心してもらえているなら嬉しいけれど、やっぱり少し不安になる。
「相手のことを憎いとか、嫌だって思ったことはないんですか?」
「ある。…あるが、復讐してやろうというより単純に真実が知りたいと思った。
何故あんないい奴が死ななければならなかったのかずっと考えているが、どれも正解だとは思えない」
秋久さんの心はずっと泣いている。
それなら、私にできるのは彼の気持ちを取りこぼさないように話を聞くことだけだ。
「ずっとひとりでそんな想いを抱えて生きるのは、すごく大変だったと思います。
やっぱり秋久さんは頑張りすぎです」
「月見だって大変だっただろ」
「私より秋久さんの方が、ずっとずっと苦しそうです」
「色々あるな、お互い」
そんな話をしていると、秋久さんの表情が少しだけ穏やかになった気がする。
「こんなふうに誰かと仕事抜きで話をすると、いい意味で肩の力が抜ける。ありがとな」
「私はただ一緒にいただけなので…」
秋久さんたちみたいに、誰かの助けになるようなことはできない。
それでも、こうやって彼らと関わっていくことはできる。
「…ごめん、ちょっと入る」
扉の外から聞こえた声に驚いて椅子に座ると、冬真さんが真っ青な顔をして入ってきた。
「どうした?何かあったのか?」
冬真さんは言いづらそうにしていたけれど、深呼吸して一息に告げた。
「…夏彦と連絡が取れない」
だから俺は、元々ひとりでやっていた裏の諜報活動をチームでやってみることにした」
「それがカルテットなんですね」
秋久さんは小さく頷いて、沈んだ表情で私を見た。
「悪い。こんな重い話をして困らせるつもりじゃなかったんだ」
「私は大丈夫です。でも、秋久さんは全然大丈夫そうに見えません…」
そんな思いをたったひとりで抱え続けて、きっと苦しかったはずだ。
それなのに、ずっと表情に出すことなく今も必死で隠そうとしている。
少し考えてからその場に立って、彼の胡桃色の髪を撫でた。
「どうしたんだ、いきなり…」
「秋久さんにこうしてもらえると安心するので、やってみようって思ったんです。…迷惑でしたか?」
怒らせてしまったかもしれないと思っていたのに、秋久さんは今にも泣き出しそうな顔で私を見つめた。
「迷惑なんかじゃない。…なんでだろうな、寧ろ安心してる」
嘘を吐いたり、気を遣って思いこもうとしているようには見えない。
もし本当に安心してもらえているなら嬉しいけれど、やっぱり少し不安になる。
「相手のことを憎いとか、嫌だって思ったことはないんですか?」
「ある。…あるが、復讐してやろうというより単純に真実が知りたいと思った。
何故あんないい奴が死ななければならなかったのかずっと考えているが、どれも正解だとは思えない」
秋久さんの心はずっと泣いている。
それなら、私にできるのは彼の気持ちを取りこぼさないように話を聞くことだけだ。
「ずっとひとりでそんな想いを抱えて生きるのは、すごく大変だったと思います。
やっぱり秋久さんは頑張りすぎです」
「月見だって大変だっただろ」
「私より秋久さんの方が、ずっとずっと苦しそうです」
「色々あるな、お互い」
そんな話をしていると、秋久さんの表情が少しだけ穏やかになった気がする。
「こんなふうに誰かと仕事抜きで話をすると、いい意味で肩の力が抜ける。ありがとな」
「私はただ一緒にいただけなので…」
秋久さんたちみたいに、誰かの助けになるようなことはできない。
それでも、こうやって彼らと関わっていくことはできる。
「…ごめん、ちょっと入る」
扉の外から聞こえた声に驚いて椅子に座ると、冬真さんが真っ青な顔をして入ってきた。
「どうした?何かあったのか?」
冬真さんは言いづらそうにしていたけれど、深呼吸して一息に告げた。
「…夏彦と連絡が取れない」
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