裏世界の蕀姫

黒蝶

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秋久ルート

第72話

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「それで、今から試しに撮影会をするってことか」
「は、はい…」
カメラというのを見るのは初めてで、なんだか緊張してしまう。
「あ、あの…」
「どうかした?」
「私、手が汚くて…」
つるつるすべすべなわけじゃないし、手中包帯だらけだ。
本当にこんな手で写ってしまっていいのか不安になる。
「大丈夫!というか、月見ちゃんは心が綺麗だからそれがいいんだ」
夏彦さんが優しく笑いかけてくれて、恐る恐る手を出す。
どうしようか戸惑っていると、秋久さんが手首に何かをつけてくれた。
「これで大丈夫だ」
「あ、ありがとうございます」
「ふたりとも、やっぱり仲いいよね!」
「えっと、その…」
「そうだろ?」
秋久さんの一言に、私も夏彦さんも驚いていた。
「まさかそんな堂々と宣言するなんて思ってなかった」
「俺は別に当たり前のことしか言ってないんだが、そんなに変か?」
「えっと…あ、ありがとうございます。秋久さんと一緒にいるの、好きです」
精一杯の感謝を伝えたくて言葉にすると、今度は私が驚かれているみたいだった。
「あ、あの…」
「ふたりが素直だってことは分かった。もうくっついちゃえばいいのに」
くっつくというのはどういうことだろう。
秋久さんの手を握ると、夏彦さんは楽しそうに笑っていた。
「これは参った。…取り敢えず撮影始めるね」
「あ、ご、ごめんなさい」
すっかり忘れていた。
言われたとおりに手を置いてはみたけれど、本当にこれでいいのか自信がない。
「大丈夫だよ。そのまま動かさないで…」
ぱっと光ったのが眩しくて?思わず目を覆ってしまう。
「顔はこっちに向けた方がいい」
「すみません…」
「謝る必要はない。誰だって初めてのときは失敗する」
秋久さんの言葉ひとつにどきどきする。
これは一体なんていう気持ちなんだろう。
秋久さんをじっと見つめていると、少し離れた場所から夏彦の声が聞こえた。
「ふたりとも、もう終わったよ。随分熱く見つめ合ってたね」
「え、あ、あの、」
「…夏彦」
「ごめんごめん。微笑ましいって思っただけなんだ。それより、写真できたよ」
夏彦さんが見せてくれた写真には、私の手じゃないみたいに写っていた。
きらきら光るブレスレットは、誰かを幸せにしてくれそうに見える。
「お疲れさん」
「あ、ありがとうございます」
やっぱり頭を撫でてもらえるのは嬉しい。
じっとしていると、秋久さんは優しく笑いかけてくれた。
「楽しかったか?」
「よく、分かりません。でも、嫌じゃなかったです」
「それはよかった」
少し離れた場所で夏彦さんがカメラを触っている。
そんな様子を秋久さんはほっとした様子で見つめていた。
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