皓皓、天翔ける

黒蝶

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第1章『はじまりの物語』

第3話

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「列車が来たから乗っただけなんだけど…。宵月君はどうしてここにいるの?」
バイトにしては遅い時間だ。
もう日付をまたいでいるし、そもそも車掌さんのバイトなんてあるはずがない。
あったとしても高校生が勤めるのは無理だろう。
「…切符見せてくれる?」
質問がスルーされてしまったことはさておき、さっきの車掌さんに見せたものと同じものを見せた。
「これがポケットに入ってて…」
切符を見た宵月君は少し複雑そうな表情をする。
「……レアケースだ」
「え?」
「いいって言うまで絶対この部屋から出ないで」
「あ、ちょっと…」
小走りでどこかへ行ってしまった彼の背中を目で追いながら、首を傾げて近くのソファーに体を預ける。
自分が思っていたより疲れていたみたいで、少しうとうとしてしまった。
こんこん、と扉がたたかれる音がして目が覚める。
《す、すみません》
声をかけた方がいいかもしれないと思って体を起こすと、明らかに顔色が悪い人が扉の前に立っていた。
絶対にこの部屋から出るなと言われているけど、体調が悪いなら放っておくわけにはいかない。
「えっと…」
《すみません、すみません……》
扉を開けようとして、様子がおかしいことに気づく。
両足が焼けているのに、どうしてこの人は杖1本で歩けているんだろう。
そもそもどうやって立っているの?
「遅くなってしまい申し訳ありません。お客様、どうされましたか?」
《あの、喉が渇いて…》
「そうですか。お席までご案内します」
宵月君は慣れた手つきでおばあさんを別の車両へ送り届ける。
足から力が抜けて、その場にへたりこんでしまった。
彼には普通の人と変わらず視えたのだろうか。
「大丈夫?」
「あ、うん。さっきの人は?」
「大丈夫。他の車掌に任せてきた」
「そっか」
「……視えてた?」
宵月君は真剣な顔で尋ねてくる。
その言葉に私は首を縦にふった。
「そう。あの人のことが視えるってことは、やっぱり霊力が強いんだろうね」
「れいりょく?」
「簡単に言えば、幽霊を視る力ってこと。俺のは少し違うけど、普通の人間にあのおばあさんは視えない」
話が見えなくて呆然としてしまう。
普通の人には視えない?だけど、さっきたしかにおばあさんがいて…冷静に考えたところで納得した。
「思ったより驚いてなさそうだけど、もしかしてこういう経験は初めてじゃない?」
「うん。…私だけじゃなかったんだね、視えるの」
もう一度ソファーに腰掛け、淹れてくれた紅茶をごちそうになる。
向かい側に座った宵月君は困った顔をしていたものの、恐る恐るといった様子で尋ねてきた。
「霊力がどれくらい強いとか、そういうのは今は置いておいてもいい?」
「うん。この列車のこととか、さっきのおばあさんのこととか…宵月君のことを教えてほしい」
「分かった。順番に話す」
宵月君はひと呼吸おいて、少しずつ話しはじめる。
「まず、この列車は本来死者しか乗れない。…毎日丑の刻にしか運行しない黄泉行列車だから」
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