皓皓、天翔ける

黒蝶

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第5章『隠しごと』

第24話

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「お、おまたせしました」
《ありがとうございます。…うん、美味い》
お客様の言葉に安堵しつつ、今度は食べ物を勧めてみることにした。
「小腹が空きませんか?」
《ああ、たしかに。…明菜のクッキー食べたくなってきたな》
「すみません、明菜さんというのは…」
《ああ、すみません。幼馴染なんです。けど、流石にそんなクッキーはないよな…》
男子学生は苦笑しながら、玄米茶を一気に飲み干す。
《お茶のおかわりもお願いしていいですか?》
「かしこまりました」
そのままお茶のおかわりを用意してサーブすると、男子学生は微笑んでくれた。
《ありがとう》
「い、いえ…」
それから、さっき氷雨君から渡されたフードプロセッサーを取り出して、ただのクッキーを砕いていれる。
紐を引っ張るとばりばりと音を立てて、いつの間にかクッキーの形になっていた。
「お、おまたせしました」
《ありが…》
男子学生は固まったまま動かない。
何かまずいことでもしたのかと思っていたら、クッキーを見つめて呆然としていた。
「お客様、どうされましたか?」
《いや、その…このクッキーの見た目が明菜が作ったものそっくりだから驚いたんだ。…いただきます》
一口齧った彼の瞳からは、一筋の涙が流れ出る。
《明菜が作ってくれてたのと同じ味がする…。材料、教えてもらえませんか?》
「えっと…申し訳ありません。き、企業秘密で…」
それ以上説明のしようがなかった。
まさかフードプロセッサーに入れて混ぜたらいつの間にか完成しました、なんて言えない。
《昔からこの味が好きで、よく焼いてもらっていたんです。食べると心が安らいで、嫌なことも忘れられた…。
けど、もう会えない気がするんです。すみません、変な話をして…》
「いえ。あの…あなたの話を、もっと聞かせていただけませんか?」
背中の痛々しい傷にガーゼをはりながら問いかけると、男子学生はゆっくり話しはじめた。
《俺には明菜という幼馴染がいました。昔から好きで…けど、想いを伝える勇気がなかった》
苦笑していた彼は、何かを思い出したような様子で言葉を続ける。
《そんななか、弟に言われたんです。明菜のことが好きだから相談に乗ってほしいって》
「え……」
《自分で言うのもおかしな話かもしれないけど、弟とは仲いいんですよ。一緒にツーリング行ったり、ゲームで遊んだり…毎日楽しくやってました。
けど、弟にそう言われたら応援したい気持ちの方が強くなっちゃって…俺が明菜を好きってことを言えませんでした》
自分の気持ちに蓋をして、大切な人たちの幸せを願う。
それがとても難しいことだというのは、なんとなく分かっている。
この人は最期までそれをやってのけたのだ。
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