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第7章『複合』
第37話
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《俺はいわゆる落ちこぼれで、家の人間からはどうなろうとなんとも思われていませんでした。…だから、俺に関心が向かないうちに家を出たんです。
バイトしながら夜間大学を卒業して、養護教諭の資格を取りました》
私には絶対に真似できないことだ。
男性は環境から脱出するため、沢山努力してきたのだろう。
《そのときの恩師の先生とは連絡を取り合っていたんですが、家の人間からは一切連絡がありませんでした。
俺としてはそれでよかったし、今更関わられても困る。…だけど、周りで変なことがおこるようになりました》
「変なこと、ですか?」
男性は不安そうな表情のまま話を続ける。
《はじめは無言電話がかかってくる程度のものだったので無視してたんです。
それが最近は家に差出人不明の針が入った手紙が届いたり、落書きだらけの紙を入れられたり…》
「け、警察には行かなかったんですか?」
《そうしようとも思ったけど、勤め先の学校には手を出されなかったのでそれでいいと思いました》
「そうなんですね…」
この人は、自分以外の人が傷つけられなければそれでいいと思っているんだ。
多分だけど、周りの人たちにどう頼ったらいいか分からなかったのかもしれない。
《特に実害があると感じていなかったからそのままにしておいたんですけど、夜道で待ち伏せされるようになって……》
そこまで話した男性ははっとした表情で焦りだす。
《そうだ、俺は夜道で待ち伏せされて、必死で逃げた。後ろから知らない女の笑い声がしたけど、怖くて振り返れなかったんだ。
そうこうしているうちに追いつかれて、背中が痛かった…》
刺されたということだろうか。
よく見ると、男性の洋服に穴があいている。
ただ、複合型ということは他にも死因となりうる何かがあるはずだ。
《それから人が多い通りを目指して走った。それで突き飛ばされる形になって…道路で転んだ。
すぐに体を起こしたけど、すぐトラックが走ってきて…俺、轢かれたはずじゃ……》
男性が混乱するのも無理はない。
いきなり自分が死んでいたなんて言われても実感がわかないだろう。
《もしかして俺、死んじゃったんですか…?》
「……この列車は、お客様に最後の旅を少しでも楽しく過ごしていただくためにあります」
《そうなんですね。嫌がらせしてた犯人も見つけられず、どうして俺を追いかけてたのかも分からず死んだのか…》
悔しそうに言葉を滲ませる男性にかける言葉が見つからない。
境遇が似ていたからか、男性の表情が曇っているからか。
私はただ俯くことしかできなかった。
バイトしながら夜間大学を卒業して、養護教諭の資格を取りました》
私には絶対に真似できないことだ。
男性は環境から脱出するため、沢山努力してきたのだろう。
《そのときの恩師の先生とは連絡を取り合っていたんですが、家の人間からは一切連絡がありませんでした。
俺としてはそれでよかったし、今更関わられても困る。…だけど、周りで変なことがおこるようになりました》
「変なこと、ですか?」
男性は不安そうな表情のまま話を続ける。
《はじめは無言電話がかかってくる程度のものだったので無視してたんです。
それが最近は家に差出人不明の針が入った手紙が届いたり、落書きだらけの紙を入れられたり…》
「け、警察には行かなかったんですか?」
《そうしようとも思ったけど、勤め先の学校には手を出されなかったのでそれでいいと思いました》
「そうなんですね…」
この人は、自分以外の人が傷つけられなければそれでいいと思っているんだ。
多分だけど、周りの人たちにどう頼ったらいいか分からなかったのかもしれない。
《特に実害があると感じていなかったからそのままにしておいたんですけど、夜道で待ち伏せされるようになって……》
そこまで話した男性ははっとした表情で焦りだす。
《そうだ、俺は夜道で待ち伏せされて、必死で逃げた。後ろから知らない女の笑い声がしたけど、怖くて振り返れなかったんだ。
そうこうしているうちに追いつかれて、背中が痛かった…》
刺されたということだろうか。
よく見ると、男性の洋服に穴があいている。
ただ、複合型ということは他にも死因となりうる何かがあるはずだ。
《それから人が多い通りを目指して走った。それで突き飛ばされる形になって…道路で転んだ。
すぐに体を起こしたけど、すぐトラックが走ってきて…俺、轢かれたはずじゃ……》
男性が混乱するのも無理はない。
いきなり自分が死んでいたなんて言われても実感がわかないだろう。
《もしかして俺、死んじゃったんですか…?》
「……この列車は、お客様に最後の旅を少しでも楽しく過ごしていただくためにあります」
《そうなんですね。嫌がらせしてた犯人も見つけられず、どうして俺を追いかけてたのかも分からず死んだのか…》
悔しそうに言葉を滲ませる男性にかける言葉が見つからない。
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私はただ俯くことしかできなかった。
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