皓皓、天翔ける

黒蝶

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第8章『整理』

第42話

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「おまたせしました」
《わあ、美味しそう!》
オレンジジュースを飲む男の子を見守りながら、子どもが食べられそうなお菓子を探してみる。
「クラッカーはいかがですか?こ、こちらは卵を使わずに作られています」
《卵が入ってないなら食べられる…。それください》
「どうぞ」
《あ、でもお金…》
「お金のことは気になさらないでください」
この子は本当に自分が死んでいることに気づいていない。
いつものお客様は自分が死んだことを忘れているけど、事実を知らない子ども相手にどう話すのがいいんだろう。
《僕、今日は大きい列車に乗る予定だったんだ。夜行列車の予約がとれたからって言ってたけど、この列車に乗っちゃった…。間違えちゃったんです》
「…そうでしたか」
たしか、いつも黄泉行列車が停まる駅でそんな催し物があったはずだ。
だから男の子は余計に気づかない。
自分が乗った列車が間違いではなかったことに。
「お客様は列車がお好きなんですか?」
《うん!おっきい電車を運転するのが夢なんだ。それでいつか、お兄ちゃんに乗ってほしい》
「お兄さんがいらっしゃるんですね」
《うん。優しくてかっこいいんだ。もう大人だからあんまり会えないけど、一緒に列車乗ってくれるって約束で…そうだ、お兄ちゃんを探さないと》
無邪気な男の子の言葉に、なんて返したらいいのか分からない。
「し、心配しなくても大丈夫です」
《どうして?》
「それは…あ、あの、もう少しお客様の話を聞かせていただけませんか?」
苦し紛れな言い方になってしまったけど、男の子はにっこり笑って教えてくれた。
《小学校でもよく絵をかくんだけど、いつも列車の絵ばっかりかいてたら先生に他の絵も見たいって言われちゃって…。
だけど、お兄ちゃんに会うには列車がないと困るから、列車の絵をかいて出してた》
「お兄さんは遠くに住んでいるんですね」
《保育士さん?のお仕事があるから帰れないって言ってた。ちょっと遠いけど、時間ができたら帰るって…。
列車がなかったらお兄ちゃんに会えないからすごく困る》
少し寂しそうに話す男の子を前にすると胸が痛む。
私もおばさんと暮らせなくなったとき、とても寂しかった。
だいぶできることが増えて今は電車やバス、自転車を使って自力で会いに行けるけど、会いたくても会えない時間がある辛さや寂しさは分かる。
「他にはどんなことを覚えていますか?」
《えっと、おじさんがくれたおかしを食べながら、電話しに行ったお兄ちゃんを待ってて……》
「それはどんなお菓子ですか?」
《スナック菓子だよ。じゃがいものやつ!》
その一言で男の子の死因がある程度分かった。
メモの情報が正しければ、男の子の死因はそれだ。
「お菓子を食べた後のことを教えてください」
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