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第11章『迷人』
第57話
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《モデルさんになりたくて、オーディションを受けたこともありました。
だけど、だんだん声が低くなりはじめて…。まあ、この低さで止まったからよかったけど、周りにじろじろ見られるようになったんです》
「モデルさんになりたい理由があるんですか?」
《自分だけの輝きを持ち続けていたいって言ってるモデルさんを見て、僕も自分が好きなものを好きって言いたいって思ったんです。
だけど、そんなに甘くなかった…。男の子らしくしなさいって言われて、すごく苦しくなったんです》
彼女にとってその言葉は猛毒だ。
誰かにとっては励ましの言葉になるんだろうけど、私もそういう言葉はあまり好きじゃない。
《モデルさんには可愛い女の子がなるものだからって、相手にしてもらえなくて…。親は仕事にしか興味ないし、学校での白い目にも耐えなくていいから行くのをやめたんです。
そうしたら、どんどん外に出るのが億劫になって、自分だけが知ってる僕でいられたらいいって思ったんです。食べるものはネットスーパーを利用して自分で作れるし、問題なかった》
ただ自分らしくあることがこんなにも難しいなんて、あまりにも悲しすぎる。
彼女はただ自分らしさを見失わないように生きていたかっただけだ。
どうしてそれさえも奪われてしまうのだろう。
《だけどある日、ご飯を作るのも面倒になって…生きているのが嫌になったのかも》
苦笑する少女の表情には疲労が滲み出ている。
《外に出ると変な目で見られるから、可愛いものが沢山あるお店にもいけなくなって、モデルの夢が叶わないならいる意味ないなって思ったんです。
けど、飲み物だけは買い足しておこうと思って近くのコンビニへ行きました。よくよく考えると、そこからどうやってここまできたのか、記憶がありません》
「そうでしたか…。とても苦労されたんですね」
私に言える言葉なんて安っぽいものしかない。
それでも、今この瞬間を彼女に楽しんでほしかった。
「モデルさんだから、姿勢がいいんですね」
《え?》
「あ、申し訳ありません…!」
つい口に出てしまっていた言葉を仕舞おうとすると、少女はにっこり微笑んで優しく手を握ってくれた。
《そんなふうに言われたの、初めてです。ありがとう》
よく分からないけど、喜んでもらえたならよかった。
もし暑い時間帯に買い物へ行ったなら、熱中症が原因なのかもしれない。
ただ、それならひとつ疑問が残る。
耳に届く声がいつものお客様と違うこは何故なんだろう。
「…そちらの方は?」
「あ、えっと、その……」
いつの間にか背後にいた氷雨君に声をかけられ、しどろもどろしてしまう。
そんな私を見た少女は氷雨君を真っ直ぐ見つめて頭を下げた。
《ごめんなさい。僕が引き止めちゃったんです。迷っちゃって、ごちそうを出してもらったうえ身の上話まで聞いてもらって…。
だから、そんなにお姉さんを怒らないでください》
少女の言葉に、氷雨君はふっと笑う。
「怒ってはいません。ただ、あなたが迷子なら私にも道を見つけるお手伝いをさせていただけませんか?」
だけど、だんだん声が低くなりはじめて…。まあ、この低さで止まったからよかったけど、周りにじろじろ見られるようになったんです》
「モデルさんになりたい理由があるんですか?」
《自分だけの輝きを持ち続けていたいって言ってるモデルさんを見て、僕も自分が好きなものを好きって言いたいって思ったんです。
だけど、そんなに甘くなかった…。男の子らしくしなさいって言われて、すごく苦しくなったんです》
彼女にとってその言葉は猛毒だ。
誰かにとっては励ましの言葉になるんだろうけど、私もそういう言葉はあまり好きじゃない。
《モデルさんには可愛い女の子がなるものだからって、相手にしてもらえなくて…。親は仕事にしか興味ないし、学校での白い目にも耐えなくていいから行くのをやめたんです。
そうしたら、どんどん外に出るのが億劫になって、自分だけが知ってる僕でいられたらいいって思ったんです。食べるものはネットスーパーを利用して自分で作れるし、問題なかった》
ただ自分らしくあることがこんなにも難しいなんて、あまりにも悲しすぎる。
彼女はただ自分らしさを見失わないように生きていたかっただけだ。
どうしてそれさえも奪われてしまうのだろう。
《だけどある日、ご飯を作るのも面倒になって…生きているのが嫌になったのかも》
苦笑する少女の表情には疲労が滲み出ている。
《外に出ると変な目で見られるから、可愛いものが沢山あるお店にもいけなくなって、モデルの夢が叶わないならいる意味ないなって思ったんです。
けど、飲み物だけは買い足しておこうと思って近くのコンビニへ行きました。よくよく考えると、そこからどうやってここまできたのか、記憶がありません》
「そうでしたか…。とても苦労されたんですね」
私に言える言葉なんて安っぽいものしかない。
それでも、今この瞬間を彼女に楽しんでほしかった。
「モデルさんだから、姿勢がいいんですね」
《え?》
「あ、申し訳ありません…!」
つい口に出てしまっていた言葉を仕舞おうとすると、少女はにっこり微笑んで優しく手を握ってくれた。
《そんなふうに言われたの、初めてです。ありがとう》
よく分からないけど、喜んでもらえたならよかった。
もし暑い時間帯に買い物へ行ったなら、熱中症が原因なのかもしれない。
ただ、それならひとつ疑問が残る。
耳に届く声がいつものお客様と違うこは何故なんだろう。
「…そちらの方は?」
「あ、えっと、その……」
いつの間にか背後にいた氷雨君に声をかけられ、しどろもどろしてしまう。
そんな私を見た少女は氷雨君を真っ直ぐ見つめて頭を下げた。
《ごめんなさい。僕が引き止めちゃったんです。迷っちゃって、ごちそうを出してもらったうえ身の上話まで聞いてもらって…。
だから、そんなにお姉さんを怒らないでください》
少女の言葉に、氷雨君はふっと笑う。
「怒ってはいません。ただ、あなたが迷子なら私にも道を見つけるお手伝いをさせていただけませんか?」
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