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第11章『迷人』
第56話
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「おまたせしました」
《わあ、美味しそうなパフェ…!ありがとうございます》
飲み物にしようと思ったけど、なんとなくおしゃれな食べ物が合いそうな気がしてつい持ってきてしまった。
《すごく美味しいです。最近外に出てなかったから、こういうものを食べてなくて…》
「そ、そうだったんですか…。あの、もしよければ外に出てなかった理由をお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
断られるのを覚悟で訊いてみると、相手は苦笑しながら話してくれた。
《それは、僕がこんなだから…。やっぱり変ですよね》
「どういうことですか?」
《僕、その…男なんです、体は》
「も、申し訳ありません。全く気づいていませんでした」
フリルたっぷりのワンピースを着た少女に頭を下げる。
まさか少年だとは思っていなかった。
声も女性が出す低めなトーンで、見た目も小柄で全く分からない。
《謝らないでください。だって僕、女の子ですから》
心は女性、ということでいいのだろうか。
少女は優しく微笑んで、少し考える仕草を見せた後パフェを口に運ぶ。
《お姉さんは食べないんですか?》
「私は仕事中なので…申し訳ありません」
《あ、ごめんなさい!僕が話しかけたら邪魔になるんじゃ…》
「いえ。その、寧ろ話を聞かせてほしいというか、それが仕事というか…。それに、あなたのことを知りたいんです」
断られるかと思ったけど、少女は寂しそうに笑った。
《僕の話なんて面白くないと思います》
「わ、私が話を聞きたいんです。無理にとは言いませんが…」
話してもらえなかったら、この人がどこの誰かも分からず終わる。
それだと、行くべき場所がどこなのか調べられない。
しばらく沈黙が流れ、少女がゆっくり話しはじめた。
《お姉さんは、僕のこと気味悪く思わないんですか?》
「…?可愛らしい方だな、とは思いましたが、気味悪くは感じていません」
《そう言ってもらえると安心します。…お姉さんが僕の家族ならよかったのに》
少女の瞳には悲しみが宿っていて、なんだか苦しそうだ。
《僕は変だから、腫れ物扱いされることが多くて…。小さい頃から可愛いものが好きだったんです。
服もピンクとか白系のものを沢山身につけて、スカートやワンピースを着て、髪も伸ばして…声も高かったから、休みの日は女の子だって言ってました》
ただ自分らしくいたい…そんな真っ直ぐな願いさえ許されないなんて、聞いているだけで胸が締めつけられる。
無邪気にパフェを食べる少女は、心にどれだけ深い傷を負っているんだろう。
ふたりきりの車両で、引き続き彼女の話を聞かせてもらうことにした。
《わあ、美味しそうなパフェ…!ありがとうございます》
飲み物にしようと思ったけど、なんとなくおしゃれな食べ物が合いそうな気がしてつい持ってきてしまった。
《すごく美味しいです。最近外に出てなかったから、こういうものを食べてなくて…》
「そ、そうだったんですか…。あの、もしよければ外に出てなかった理由をお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
断られるのを覚悟で訊いてみると、相手は苦笑しながら話してくれた。
《それは、僕がこんなだから…。やっぱり変ですよね》
「どういうことですか?」
《僕、その…男なんです、体は》
「も、申し訳ありません。全く気づいていませんでした」
フリルたっぷりのワンピースを着た少女に頭を下げる。
まさか少年だとは思っていなかった。
声も女性が出す低めなトーンで、見た目も小柄で全く分からない。
《謝らないでください。だって僕、女の子ですから》
心は女性、ということでいいのだろうか。
少女は優しく微笑んで、少し考える仕草を見せた後パフェを口に運ぶ。
《お姉さんは食べないんですか?》
「私は仕事中なので…申し訳ありません」
《あ、ごめんなさい!僕が話しかけたら邪魔になるんじゃ…》
「いえ。その、寧ろ話を聞かせてほしいというか、それが仕事というか…。それに、あなたのことを知りたいんです」
断られるかと思ったけど、少女は寂しそうに笑った。
《僕の話なんて面白くないと思います》
「わ、私が話を聞きたいんです。無理にとは言いませんが…」
話してもらえなかったら、この人がどこの誰かも分からず終わる。
それだと、行くべき場所がどこなのか調べられない。
しばらく沈黙が流れ、少女がゆっくり話しはじめた。
《お姉さんは、僕のこと気味悪く思わないんですか?》
「…?可愛らしい方だな、とは思いましたが、気味悪くは感じていません」
《そう言ってもらえると安心します。…お姉さんが僕の家族ならよかったのに》
少女の瞳には悲しみが宿っていて、なんだか苦しそうだ。
《僕は変だから、腫れ物扱いされることが多くて…。小さい頃から可愛いものが好きだったんです。
服もピンクとか白系のものを沢山身につけて、スカートやワンピースを着て、髪も伸ばして…声も高かったから、休みの日は女の子だって言ってました》
ただ自分らしくいたい…そんな真っ直ぐな願いさえ許されないなんて、聞いているだけで胸が締めつけられる。
無邪気にパフェを食べる少女は、心にどれだけ深い傷を負っているんだろう。
ふたりきりの車両で、引き続き彼女の話を聞かせてもらうことにした。
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