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第12章『深愛』
第61話
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氷雨君の後をついていくと、列車が少し揺れた拍子に転んだ人を見つけた。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
《ああ…はい。少しよろけただけだから…ありがとう》
その男性はデータにあったお客様だ。
「空いている席にどうぞ」
《ありがとう。…あの、車内サービスってあったりする?》
「は、はい。お飲み物はいかがですか?」
《抹茶オレってありますか?》
「すぐにお持ちいたします」
押していたワゴンの中からグラスを取り出しなみなみ注ぐ。
「おまたせしました」
《ありがとう。いただきます。…うん、美味しい》
男性はほっとしたように微笑む。
今のところ落ち着いているように見えるけど、自分が死んだことには気づいているのだろうか。
「あ、あの…。お客様は、この列車に乗った記憶がありますか?」
《そういえば俺、なんで列車に乗ってるんだろう…。すみません、次の駅で降りますね》
男性は苦笑しながらそう言ったけど、それができないことを知ったらどうなってしまうんだろう。
「お客様の話を聞かせていただけませんか?」
《俺の話…惚気でもいいですか?》
「どんな話でも構いません」
《…俺には妹がいるんです。海帆っていうんですけど、すごく可愛くて…。周りからもシスコンって言われるくらい兄ばかです》
屈託なく笑う男性は写真を見せてくれた。
「可愛らしい妹さんですね。学生さんですか?」
《高校に入学したばかりです。バイト先に迎えに行ったり、お弁当交換するくらいには仲良くて…》
私には家族と呼べる人がおばさんしかいないから分からないけど、男性がとても充実した日々をおくっていたことは分かる。
《あ…》
「こちらをどうぞ」
《ありがとうございます》
抹茶オレのおかわりを渡すと、笑顔のまま話が続けられる。
《妹が淹れてくれる紅茶が美味しくて、毎日頼んで朝か夜絶対作ってもらってたんです。
俺は料理担当で、ふたりでの生活はすごく楽しくて…。両親はふたりとも仕事で遠方にいるので、ふたり暮らしなんです》
「そう、なんですね」
妹さんは今悲しみの渦に覆われているかもしれない。
勿論今はまだそんなことを言えないから、笑顔で応対する。
《けど、最近彼氏ができたとかで帰りが遅いから心配なんです。
妹はよくスカウトから声をかけられていて、変な奴につきまとわれてたこともあります》
「モデルさんの、ですか?」
《はい。結構しつこくて、持ってたバケツの水をぶっかけてからは来ないけど心配で…。そうだ、今日のご飯何にしよっかな…》
お兄さんらしい気遣いの言葉が胸を締めつける。
彼の背中にある傷が、もう死んでしまっているのだとはっきり示してくるから。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
《ああ…はい。少しよろけただけだから…ありがとう》
その男性はデータにあったお客様だ。
「空いている席にどうぞ」
《ありがとう。…あの、車内サービスってあったりする?》
「は、はい。お飲み物はいかがですか?」
《抹茶オレってありますか?》
「すぐにお持ちいたします」
押していたワゴンの中からグラスを取り出しなみなみ注ぐ。
「おまたせしました」
《ありがとう。いただきます。…うん、美味しい》
男性はほっとしたように微笑む。
今のところ落ち着いているように見えるけど、自分が死んだことには気づいているのだろうか。
「あ、あの…。お客様は、この列車に乗った記憶がありますか?」
《そういえば俺、なんで列車に乗ってるんだろう…。すみません、次の駅で降りますね》
男性は苦笑しながらそう言ったけど、それができないことを知ったらどうなってしまうんだろう。
「お客様の話を聞かせていただけませんか?」
《俺の話…惚気でもいいですか?》
「どんな話でも構いません」
《…俺には妹がいるんです。海帆っていうんですけど、すごく可愛くて…。周りからもシスコンって言われるくらい兄ばかです》
屈託なく笑う男性は写真を見せてくれた。
「可愛らしい妹さんですね。学生さんですか?」
《高校に入学したばかりです。バイト先に迎えに行ったり、お弁当交換するくらいには仲良くて…》
私には家族と呼べる人がおばさんしかいないから分からないけど、男性がとても充実した日々をおくっていたことは分かる。
《あ…》
「こちらをどうぞ」
《ありがとうございます》
抹茶オレのおかわりを渡すと、笑顔のまま話が続けられる。
《妹が淹れてくれる紅茶が美味しくて、毎日頼んで朝か夜絶対作ってもらってたんです。
俺は料理担当で、ふたりでの生活はすごく楽しくて…。両親はふたりとも仕事で遠方にいるので、ふたり暮らしなんです》
「そう、なんですね」
妹さんは今悲しみの渦に覆われているかもしれない。
勿論今はまだそんなことを言えないから、笑顔で応対する。
《けど、最近彼氏ができたとかで帰りが遅いから心配なんです。
妹はよくスカウトから声をかけられていて、変な奴につきまとわれてたこともあります》
「モデルさんの、ですか?」
《はい。結構しつこくて、持ってたバケツの水をぶっかけてからは来ないけど心配で…。そうだ、今日のご飯何にしよっかな…》
お兄さんらしい気遣いの言葉が胸を締めつける。
彼の背中にある傷が、もう死んでしまっているのだとはっきり示してくるから。
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