皓皓、天翔ける

黒蝶

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第13章『来訪者』

第68話

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車椅子で顔に痣があるとなると、差別する人間もいるだろう。
悲しいけど、それが人間の本質だ。
《毎日嫌がらせに遭ったわ。駅で車椅子ごと放置されたり、痣を隠してやるとか言ってチョークの粉をかけられたり》
「酷い…」
《私にも、酷いって悲しんでくれる人がいるなんて不思議だわ。…けど、あの学校は違う》
少女は誰のことを責めるでもなく、自らの悲惨な経験を教えてくれた。
《本当は、普通の学校生活を送りたかった。エレベーターもあるし、優しい生徒たちがいるから問題ないって説明会のとき言ってたのに、嘘ばかりだった。
エレベーターを使えたことには感謝してるけど、それ以外が酷すぎて誰に何をされたのかいちいち覚えていられないくらいに…。痣のこともからかわれた》
相当苦労してきたことが今の話だけでもよく分かる。
少女は少しずつ話を続けた。
《町では会わないように気をつけたのに、夜いきなり背後から車椅子ごと突き飛ばされたの。
…そうだわ、城之内さんを待っていたら、速水に車椅子ごと突き飛ばされて転んで、起きあがろうとしたら車が……》
少女は顔を真っ青にして私を見つめる。
《私、死んだの?》
「……この列車は、最後の旅をお楽しみいただくための場所です」
《死んだのね。…これで城之内さんも自由になれるかしら》
伏せられた瞳には若干喜びがあるように思える。
《彼女にお礼を伝えたかったんだけど、もう会えないんでしょ?》
「…申し訳ありません」
《なら、あなたニナれば会えル?》
「え……?」
細い腕が私の首に巻きついてくる。
「どう、して」
《少しデいイノ。あなタニナりたい》
折角薄くなった痣を上書きしていくように、ゆっくり首を絞められる。
少し戸惑ったけど、抵抗する必要性を感じなかった。
《死んじゃうカモしレナイのに、怖クナいの?》
「……」
何も答えずにいると、はっとしたように少女が手を離す。
《ごめんなさい、私──》
「大丈夫です。お客様、お怪我はありませんか?」
《こんな状況なのに私の心配?…どうしてそんなに優しいの?》
「私が優しいかは分かりませんが、お客様の笑顔を護りたいんです」
噎せながら立ちあがり、少女をじっと見つめる。
「お世話になった方へ、手紙を書いてみませんか?この列車には色々な種類の便箋があるんです」
《…私なんかに書けるかしら?》
「お客様の手紙なら、きっと素敵なものになると思います」
《…ありがとう。書いてみるわ》
彼女は心優しい人だから、きっと素敵な手紙に仕上がるだろう。
少し息苦しさを感じたけど、そのまま仕事を続けた。
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