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第14章『協力者』
閑話『掃除のやり方』
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校内の迷子たちを矢田に引き渡し、ひと段落したところで
「まず、ここの小さいボタンを押すと箒に霊力がこもる。君は結構強めだから、コントロールの練習をしておいた方がいい」
「は、はい」
星影氷空は緊張しているのか、肩に力が入っている。
本当はこんなことをさせるつもりなんてなかった。
だが、室星や夜紅とも絡んで怪我をする何かがおこった以上そういうわけにはいかない。
「押してみて」
「えっと…こう?」
「そう。押したままふってみて」
彼女は首を傾げながら箒をふると、花びらのような形をした氷の粒が大量に降下していった。
「あ……」
「大丈夫、私が止めるから」
夜紅はそう言ってすぐ札を出し、そのまま炎を優雅に踊らせた。
「どれだけ強くても私が止めるから、心配せず練習するといい」
「あ、ありがとうございます」
なんとなく彼女と夜紅が打ち解けている気がして内心安堵する。
緊張している様子ではあるが、クラスの人間ともここまで楽しそうに話しているのを見たことがない。
「もう少し肩の力を抜いて。別に殺し合いをするわけじゃないから、やんわり相手に当てるくらいが理想」
「分かった。やってみる」
室星が笑っているのが目に入ったが、今は気のせいだと思うことにしよう。
……どれくらい時間が経っただろうか。
星影氷空は氷の花びらを自由に飛ばせるようになっていた。
「すごいな、その箒。氷空と相性がいいのかもな」
「でも私、初めて使ったので…氷雨君の方がすごいと思います」
照れくさそうに話す彼女は純粋だ。
「宵月は道具いらずで戦えるから、普段はそれを使ってないはずだ」
「え…?」
室星に余計なことを言わないように釘を差しておけばよかった。
俺のことなんて知らなくていい。話すつもりなんてないのに…。
「宵月は、」
「…それ以上余計なことを言ったら怒りますよ」
「そんなに隠すこともないだろ」
知りすぎれば戻れなくなる。
室星だってそれは分かっているはずなのに、何故彼女と話をさせようとするんだろう。
「あ、あの…」
「たしかに俺は普段から箒は使っていない。だからそれはもう君のものだ」
「いいの?」
「なくても戦える」
「ありがとう。…大切にする」
箒を大切そうに握るその手には少し傷が残っていて、見ているだけで痛々しい。
これ以上教えられることはないし、今は学校付近を見回るしかない…そう思っていたのに、星影氷空は言いづらそうにしながら話した。
「あ、あの…もしかしたら、噂?に近いものを見たかもしれません」
「どんな姿だった?」
「男の子だったんですけど、見た日は怖くて逃げてしまって…」
知らなかった。巻きこみたくないのに、どんどん怖い思いをさせてしまっている。
重くなりかけた空気を軽くするように、夜紅が笑ってはっきり言った。
「その子の特徴、思い出せるだけ教えてくれ。探してみたら案外早く見つかるかもしれない」
「まず、ここの小さいボタンを押すと箒に霊力がこもる。君は結構強めだから、コントロールの練習をしておいた方がいい」
「は、はい」
星影氷空は緊張しているのか、肩に力が入っている。
本当はこんなことをさせるつもりなんてなかった。
だが、室星や夜紅とも絡んで怪我をする何かがおこった以上そういうわけにはいかない。
「押してみて」
「えっと…こう?」
「そう。押したままふってみて」
彼女は首を傾げながら箒をふると、花びらのような形をした氷の粒が大量に降下していった。
「あ……」
「大丈夫、私が止めるから」
夜紅はそう言ってすぐ札を出し、そのまま炎を優雅に踊らせた。
「どれだけ強くても私が止めるから、心配せず練習するといい」
「あ、ありがとうございます」
なんとなく彼女と夜紅が打ち解けている気がして内心安堵する。
緊張している様子ではあるが、クラスの人間ともここまで楽しそうに話しているのを見たことがない。
「もう少し肩の力を抜いて。別に殺し合いをするわけじゃないから、やんわり相手に当てるくらいが理想」
「分かった。やってみる」
室星が笑っているのが目に入ったが、今は気のせいだと思うことにしよう。
……どれくらい時間が経っただろうか。
星影氷空は氷の花びらを自由に飛ばせるようになっていた。
「すごいな、その箒。氷空と相性がいいのかもな」
「でも私、初めて使ったので…氷雨君の方がすごいと思います」
照れくさそうに話す彼女は純粋だ。
「宵月は道具いらずで戦えるから、普段はそれを使ってないはずだ」
「え…?」
室星に余計なことを言わないように釘を差しておけばよかった。
俺のことなんて知らなくていい。話すつもりなんてないのに…。
「宵月は、」
「…それ以上余計なことを言ったら怒りますよ」
「そんなに隠すこともないだろ」
知りすぎれば戻れなくなる。
室星だってそれは分かっているはずなのに、何故彼女と話をさせようとするんだろう。
「あ、あの…」
「たしかに俺は普段から箒は使っていない。だからそれはもう君のものだ」
「いいの?」
「なくても戦える」
「ありがとう。…大切にする」
箒を大切そうに握るその手には少し傷が残っていて、見ているだけで痛々しい。
これ以上教えられることはないし、今は学校付近を見回るしかない…そう思っていたのに、星影氷空は言いづらそうにしながら話した。
「あ、あの…もしかしたら、噂?に近いものを見たかもしれません」
「どんな姿だった?」
「男の子だったんですけど、見た日は怖くて逃げてしまって…」
知らなかった。巻きこみたくないのに、どんどん怖い思いをさせてしまっている。
重くなりかけた空気を軽くするように、夜紅が笑ってはっきり言った。
「その子の特徴、思い出せるだけ教えてくれ。探してみたら案外早く見つかるかもしれない」
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